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「通常国会の論点④」 鳥インフルエンザ問題-背景に養鶏過密飼育の常態化 国際基準ゆがめる自民農水族-

カテゴリー:地方自治 社会新報 農林水産 投稿日:2021-02-19

(社会新報2021年2月24日号2面より)

新型コロナウイルスが収まらない一方で、この冬、自然界では高病原性の鳥インフルエンザが猛威を振るっている。
昨年11月に香川県で発生が確認されて以後、まずは西日本各地に広がり、次いで東日本にも伝播。千葉県では100万羽以上の殺処分がすでに3回を数え(2月8日現在)、県内の採卵鶏の3割が失われるなど、今冬の鳥インフル被害は発生件数、殺処分数ともに過去最多を大きく更新している。
検出されているウイルスは、感染してからニワトリが死ぬまでの期間がこれまでよりも長く、感染に気づきにくいという特徴が指摘されているが、感染拡大の背景には過密飼育が常態化している日本の養鶏業の現実がある。

EUの1・5倍の過密

卵を生で食べる習慣のある日本では、養鶏場の管理は海外に比べても厳しいことで知られているが、その一方で高生産性の追求が進み、密閉型の大規模鶏舎での飼育が顕著だ。一つの鶏舎に数万羽単位でニワトリを収容している例も珍しくなく、ブロイラーの場合、1平方㍍当たり平均16羽前後。欧州連合(EU)の1・5倍近い過密ぶりだ。
そのため、ひとたび鳥インフルエンザウイルスの侵入を許せば大量の殺処分を余儀なくされる。こうした日本の飼育方法は、「アニマル・ウェルフェア(AW=動物福祉)」の観点から長年、国際的な批判を受けてきた。東京五輪をめぐっても、米国の9人の五輪経験者が、高密度で飼育された日本の鶏卵を五輪選手村で提供することを見直すよう求めた嘆願書を都と大会組織委員会に提出する事態になっている。
AWは、身動きの取れない狭い場所での飼育を避けるなど、家畜に与える痛みやストレスを最小限に抑える環境を目指す考え方で、欧米各国では消費者にも広く知られている。日本も加盟する国際機関・国際獣疫事務局(OIE)は、AWを反映させた飼育環境の基準策定を進めており、2018年9月にはニワトリの習性に配慮し巣箱や止まり木の設置を義務付ける基準案を加盟国に提示した。
この動きに危機感を強めたのが日本養鶏協会だ。基準案に対応すれば大規模な施設改修を強いられコスト増が避けられないとして、吉川貴盛・農林水産相(当時)に反対するよう求めて養鶏生産・販売大手「アキタフーズ」の秋田善祺・前代表から多額の現金が渡っていた事実が発覚。大臣在任中の500万円について、東京地検特捜部は贈収賄罪で両者を在宅起訴。

AW基準に業界反発

日本政府は19年1月、巣箱や止まり木の設置について、「卵のひびや汚れが増えニワトリの死亡率も上がる」として反対する意見書をOIEに提出。その後の修正案では設置義務が見送られた。吉川被告は農相就任直後の18年11月、国会でAWについて「生産者の理解を得ながら推進したい」と答弁し、その日に現金の一部を受領したとされる。業界団体からの賄賂で日本の政策決定がゆがめられ、国際機関の決定にも影を落としたとすれば、看過できない大問題だ。
吉川被告は衆院北海道2区選出で、安倍前政権が進めたTPPに危惧を示した道内農業界を抑え込む中で農林族として台頭。秋田被告はAW問題に加え、政府系の日本政策金融公庫の融資
条件緩和などを吉川被告に働きかけていたとされ、現金提供額は大臣在任前後を含め計1800万円に上る疑いがある。
さらにほぼ同時期に、西川公也元農水相にも現金数百万円が渡った疑いが浮上。西川氏は当時、内閣官房参与として農業政策全般に影響を与え得る立場であり、癒着が農政に及ぼした影響の検証が欠かせない。
吉川被告は昨年末、衆院議員を辞職。西川氏も参与を辞任したが、説明責任は全く果たされていない。関係者の国会招致を含む徹底的な真相究明は当然だが、同時に鳥インフルで打撃を受けた農家の救済や、国際的に立ち遅れたAW推進の議論も今国会で進めなければならない。