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「通常国会の論点③誰のための少年法改正か-厳罰化と実名報道解禁はなぜ-」

カテゴリー:社会新報 投稿日:2021-02-12

(社会新報2021年2月17日号2面より)

法務省法制審議会は、昨年10月に少年法改正要綱を答申した。18歳と19歳の少年を厳罰化する内容で、法務省はこれを受けて今国会で改正案を提出し、成立を目指す。しかし誰のための改正なのか。多くの法律家や市民らから懸念の声が上がっている。
主な問題点は、①原則として検察官送致決定(逆送)となる対象事件が拡大され厳罰化される②実名報道が解禁される  の2つだ。
少年法の目的は、少年(20歳未満)の健全な育成にあり、罰するよりも更正に力点を置く。少年の場合は、心身が未成熟であることで生育環境や交友関係の影響を強く受けるため、処分にあたって家庭裁判所の慎重な判断がなされる。家裁で少年院送致の保護処分決定が下されると、少年院で矯正教育を受けることになる。刑務所と異なり、少年院では当初から社会復帰を念頭にした個別プログラムを組み、社会復帰を目指す。
16歳以上の少年が故意の犯罪行為により被害者を死亡させた場合は、原則として逆送となり、成人と同じ刑事裁判を受ける。今回、この対象犯罪が拡大される予定で、18、19歳については強制性交や強盗などの1年以上の禁固、懲役に当たる犯罪に関し、原則逆送となる。原則逆送となれば、成人と同じ枠組みで判断されることになる。
厳罰化に賛成の意見は、民法では18歳以上は成人とされて責任が生じるのに、少年法で20歳未満は成人扱いされず、罪を犯しても保護されるのは不公平だ、被害者と遺族は厳罰化を望んでいる  というもの。
だが、そもそも民法改正の趣旨は、「成年(成人)年齢を18歳に引き下げることは、18歳、19歳の若者の自己決定権を尊重するものであり、その積極的な社会参加を促すことになる」(法務省の民法改正Q&A)と考えられている。そうだとすると、18歳と19歳の少年に求められることは、社会参加を通じて社会へ貢献することだ。成人と同じ刑事手続きで、社会から隔離して罰することは、社会貢献への道を遠ざけてしまう。
被害者と遺族の意見は一様ではない。しかし、少年の心からの謝罪と、更正した姿を望む人は多いだろう。そのためには、今の矯正教育をどう改善すべきかを議論すべきであって、法改正による手続きの変更だけでは不十分である。
一方、実名報道の解禁については、さらなる十分な議論が必要だ。凄惨(せいさん)な事件が起きると、その事件の概要や犯人について報道合戦が起きるが、少年の場合は、匿名報道が守られてきた。本人を特定するような事実は公表が禁止され、逮捕から処分決定、その後まで、氏名、年齢、職業、住居、容ぼうなどは非公開となる(少年法61条)。これも少年法の趣旨に基づき、健全な育成のために定められた規定である。
実名報道には、報道の自由との関係だけでなく、インターネット上の個人情報の扱いについても問題が生じる。これまで実名報道に踏み切った事件はあるが、公益を図る目的があるため報道すべきとしてマスコミが判断した一部の事件に限られた。実名報道による影響は、本人だけでなく家族・親族まで及ぶ。報道をきっかけに、本人や関係者の住む場所が特定され、通学する学校、利用する店などもネット上に書き込みがなされる可能性がある。ひとたびネット上で負の社会的烙印(らくいん)を押されると、書き込みは増殖し、容易に削除することは難しい。繰り返し批判され、差別されるならば、少年の更正とはほど遠い。