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【社会新報】アキタフーズ内部資料に菅首相の名前もー「裏帳簿」と「裏手帳」を読むー

カテゴリー:社会新報 農林水産 投稿日:2021-02-04

(社会新報2021年2月3日号1面より)

鶏卵汚職事件は、身柄の拘束もなく軽い事件として処理された。東京地検特捜部は1月15日、安倍内閣で農相を務めた吉川貴盛・前衆院議員が鶏卵生産大手アキタフーズから過去6年間で計1800万円を受け取った疑惑について、大臣在任中の500万円を賄賂と認定し、吉川氏を収賄罪で在宅起訴。アキタフーズの秋田善祺前代表も贈賄罪で在宅起訴した。
本紙は事件を解明する証拠である同社側作成の「裏帳簿」と「裏手帳」を入手した。資料には菅首相や衆院議長、大物農水族、現役の農水事務次官らの名前も登場し、疑惑の根深さを物語っている。

アキタフーズは、生卵ブランド「きよら」を販売する業界2位の鶏卵生産会社で、本社を広島県福山市に置く。1927年に創業し、資本金9300万円、18年度の売上高は約420億円。秋田氏は2代目の社長で、長く日本養鶏協会の副会長を務め、「養鶏業界の政治部長」との異名も取るほどの実力者。秋田氏は河井克行元法相夫妻の買収事件の関連で20年7月に家宅捜索を受け、翌8月にグループ代表を辞任した。

請託の内容は3項目

一方、立件された吉川元農相は、北海道議員を経て、1996年の衆院選で北海道2区で初当選。当選同期には、菅首相や河井氏がいた。第4次安倍内閣で農相(18年10月〜19年9月)に就任するにあたっては菅官房長官(当時)の推しがあったとされる。
秋田前会長が、現金の見返りとして吉川元農相に請託した内容は、㈰国際家畜基準「アニマルウェルフェア」の導入への農水相としての慎重姿勢㈪鶏卵価格差補填事業の補てん対象業者の拡充㈫政策金融公庫による鶏卵業者への融資の緩和  の3項目とされる。
捜査で重要な証拠となったのは、秋田前会長側が作成したとみられる「裏帳簿」と「裏手帳」だ。
本紙では、入手した両資料を照らし合わせながら裏金の流れを点検してみた。
「裏帳簿」はアキタフーズの社名が印刷されたA4判の用紙数枚で、裏金が出金された年日付と金額が手書きで記されている。18年分は2月14日から12月18日までの14回分で計2500万円。19年分は1月29日から4月18日までの4回分で計800万円。
一方、「裏手帳」はA4版用紙120枚で、17年12月から20年1月までの間に、秋田前会長が面談した政治家や官僚らの氏名と日時・時間・場所(店名)が手書きで記されている。

裏金支出直後に面談

「裏帳簿」と「裏手帳」を見比べると、ある特徴が浮かび上がる。それは裏金の支出日の2、3日以内に吉川元農相や西川公也前内閣参与(元農相)と面談していることだ。
いくつかの例を引用すると  。「裏帳簿」には18年11月20日に200万円と100万円の計300万円が支出したとあり、一方、「裏手帳」にはその翌21日に〈18:00 吉川大臣〉と明記されている。
また19年3月25日の「裏帳簿」には200万円支出とあり、翌26日の「裏手帳」には〈11:30 吉川大臣(大臣室)〉と書かれている。
菅内閣の前参与で元農相の西川公也氏の場合、「裏帳簿」の18年2月14日付で〈500、000 西川、野村?〉とあり、同日の「裏手帳」には〈18:30 西川・野村先生 会食(北京)〉と記されている。「野村」とは自民党農水族の野村哲郎参院議員。「北京」は帝国ホテルの高級中華料理店のことだ。
特捜部は、西川氏に関しては秋田前代表から7年間で計1500万円を受け取ったと判断したが、大臣在任中の職務権限は認定できないとして立件を見送った。
「裏手帳」には菅首相の名前も登場する。河井案里氏が出馬した参院選(7月21日投開票)を前にした2回の選挙応援日程だ。19年6月22日に、〈16:30 菅官房長(注:ママ)懇談会(Hメルパルク広島)〉。19年7月16日に、〈16:00 菅氏演説(駅前)17:00、(注:菅氏演説会(エストパルク)〉。
菅首相と秋田前会長の親密ぶりと、案里氏の選挙戦に深く肩入れした光景が目に浮かぶ。
その他、「裏手帳」には大島理森衆院議長(元農相)、亀井静香元金融相、宮腰光寛元農水副大臣らの名前も登場する。
農水官僚OBである本川一善元事務次官と大野高志元畜産部長の名前もある。
本川、大野両氏は西川元農相と共に、秋田氏が20億円で購入したクルーザーで接待を受けている。

現役農水官僚も接待

さらに「裏手帳」には現役の農水官僚の名前もズラリと並ぶ。18年10月4日、都内の料亭で現役の事務次官である枝元真徹氏、19年9月18日、帝国ホテル東京の「なだ万」で、現役の農水官僚5人(水田正和生産局局長、渡邊毅畜産部長、伏見啓二畜産企画課長、犬飼史郎畜産振興課長、望月健司食肉鶏卵課長)の名前がそれぞれ明記され、高価な手土産も受け取っている。野上浩太郎農相は今年1月19日の会見で、こうした幹部が会食に参加した事実を認めている。
通常国会では社民党など野党側は、鶏卵利権腐敗にみられる菅政権の「政治とカネ」問題を厳しく追及していかなければならない。
元旦に生活困窮者の相談にあたる福島党首(右)と宇都宮健児弁護士(中央)。手前が相談する外国人女性。
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