ニュース

障がい者の人権を保障する基本合意から10年

カテゴリー:社会保障・税 投稿日:2020-02-07

自立、自助の強調に危機感

2010年1月7日、当時の政権(民主、社民、国新)と障害者自立支援法違憲訴訟団との間で基本合意が成立した。障害者自立支援法の廃止などを約束する画期的な内容だった。それからちょうど10年となる今年1月7日、参院議員会館講堂で、訴訟団主催の集会が開かれた。400人の参加者が10年間を振り返り、今度の運動を展望した。

障害者自立支援法違憲訴訟団

集会の柱は3つ。1つ目は「基本合意」。合意には、障害者自立支援法の廃止や、障害者福祉の理念を崩す「応益負担」の廃止、さらに同法が障害者の尊厳を傷つけたことへの反省を踏まえて国が今後の施策を立案・実施すること  などが盛り込まれている。

2つ目は「骨格提言」。自立支援法に代わる新法(障害者総合福祉法)を目指して障害当事者らがまとめたものだ。保護の対象から権利の主体への転換、地域で自立した生活を営む権利などを理念に置き、障害者福祉の負担については原則無償、高額の収入がある者は収入に応じて負担するとしている。

3つ目は「障害者権利条約」の実施だ。

佐藤久夫さん(日本社会事業大学名誉教授)は、「12年に障害者総合支援法が成立したが、自立支援法の改正であって、新法はまだだ。自己責任、家族責任の『古い器』ではもたない。3つを踏まえた障害者福祉のモデルチェンジが今も大きな課題だ」と集会の意義を強調した。

「合意」の反転許すな

基本合意成立後、各地の訴訟は取り下げられた。しかし訴訟団(原告71人だが、うち7人が死去。弁護士173人)は、政府との定期協議を今も粘り強く行なっている。

藤岡毅弁護士は、「自公政権は定期協議で基本合意の尊重を明言している。安倍政権は自立・自助を過度に強調するが、それは基本合意の反転であり、許されない」と指摘する。

原告の家平悟さんは、「『我が事・丸ごと地域共生社会』や全世代型社会保障の提唱など、国の責任を個人や家族、地域住民に押しつける政策が、ますます強まっている」と危機感を強める。

介護保険優先原則やめよ

「判決に基本合意の意味が十分に盛り込まれたからこそ勝利できた」。呉裕麻弁護士の報告に参加者は勇気づけられた。
いま自治体の多くが、支援法の障害福祉サービス利用者に対し、65歳以降は介護保険の利用に切り替えることを強制している。利用料負担の発生や増加、サービスの縮減で高齢障害者の地域生活が脅かされている。

岡山市に住む重度障害者が訴えた裁判(浅田訴訟)では、地裁・高裁とも、介護保険を優先して障害福祉サービスを打ち切った岡山市の処分を違法とし、18年に原告は勝訴した。

市は、支援法の7条を「介護保険優先原則」だと主張したが、判決は7条を「併給調整規定」とし、支援法と介護保険の二重のサービスを避けるための規定であるとして、この主張を退けた。

呉弁護士は「介護保険優先原則は、福祉財源削減を狙う国、自治体の言い分。今後一切、この言葉はやめよう」と提案した。勝訴により、障害者の生存権こそ優先すべきであることが確認された。

「いま社会保障政策に暴風雨が吹き荒れている。3つは、それに対抗するための武器であり羅針盤。次の10年を展望して、障害分野の垣根を超えた各地の地道な運動をしていこう」。藤岡弁護士の呼びかけに、参加者は決意を新たにした。

(社会新報2020年2月12日号より)