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年金改革関連法 受給開始年齢の選択肢拡大に隠された狙い

カテゴリー:社会新報 投稿日:2020-01-17

政府は昨年12月19日、全世代型社会保障検討会議の中間報告を発表した。会議には財界人をはじめ、これまで社会保障や労働法制の改悪を担ってきたメンバーが多く、「年齢ではなく負担能力に応じた負担という視点を徹底していく」としつつ、実際は全世代にわたる負担増と給付抑制という考え方に貫かれている。医療、介護、働き方の課題で今年夏に最終報告が発表される予定だが、年金などについては最終報告を待たずこの通常国会に関連法案が提出される。進め方も強引だと言わざるを得ない。

年金制度については、受給開始年齢の選択肢の拡大、在職老齢年金制度の見直し、パートなど厚生年金の適用範囲の拡大の3点が改正の大きな柱とされている。在職老齢年金(60〜64歳)の改善や厚生年金の適用範囲の拡大は一定評価できるが、受給開始年齢の選択肢の拡大については問題点が多い。

これは現在65歳から70歳までとなっている選択幅を最大75歳まで拡大するという内容だ。繰り下げるほど年金月額が増える仕組みで、75歳にした場合、65歳で受給を始めた時の約1・8倍になるという。しかし65歳からの受給と比べ、75歳受給の場合は平均寿命を超えなければ受給総額は少なくなる計算だ。長生きできなければ受給総額が少なくなるため、今でも繰り下げ受給は進んでいない。

数字だけ見れば選択幅は5年から10年となる。だからと言って「選択幅が拡大した」と歓迎する高齢者はいないだろう。年金受給を「いつからにしようか」と悩む高齢者に安心を与えることが今問われている課題ではない。そもそもそんな高齢者が何人いるのか疑問であり、問題のすり替えだ。あくまでも制度の充実が求められているのであり、暮らせる年金の実現こそ最大の課題である。

さらに、選択肢の拡大が受給開始年齢の引き上げに直結するのではという危惧が生じる。すでに財務省内では、「受給開始年齢が68歳」という資料が提出・検討されてきた経緯があり、「受給は70歳から」とされる可能性もある。選択肢の拡大とは、選択幅を後ろに引き伸ばしつつ、時期を見て受給開始年齢も後ろにスライドさせることを狙ったものであり、許すことはできない。「支え合う」仕組みの充実は急務である。社民党は、憲法25条「健康で文化的な最低限度の生活」を基盤とし、持続的な社会保障の改革を目指していく。

(社会新報2020年1月22日号・主張より)