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IRカジノ誘致に批判噴出

カテゴリー:内閣法務 地方自治 投稿日:2020-01-16

神奈川県弁護士会シンポに170人

IRカジノ誘致に批判噴出

神奈川県横浜市の林文子市長は昨年8月22日、カジノを含む統合型リゾート(IR。メモ参照)を中区の山下ふ頭に誘致する方針を発表した。これに対し、市民から「だまし討ちだ」などと批判の声が噴出し、市長リコールや住民投票条例を求める運動が市内各所で繰り広げられている。

こうした中、神奈川県弁護士会主催のシンポジウム「横浜市のIR誘致を考える」が昨年12月21日、中区で行なわれ、約170人が参加した。

まず、静岡大学の鳥畑与一教授が「IRカジノの経済的効果について」と題して講演を行なった。

投資家の利益最優先

鳥畑教授は、カジノ事業者や投資家が日本市場を狙う理由として、「世界的にカジノの利益率は低下しており、米国などがもうからない市場になっている」ことを挙げた。このため、「日本のカジノに海外客が来ることはあまり期待できない」とし、「8〜9割は日本人の懐(ふところ)狙いになる」と語った。

事業者側にとって、富裕層の厚い横浜市は、願ってもない市場だという。

鳥畑教授はまた「IR・カジノの経営事情は厳しい」として、「IR全体の収益のうちカジノで8〜9割の収益を上げないと、投資家側の目標が達成できない」と述べた。このため、非カジノのIR施設がカジノのための「客寄せ施設」になりかねないという。

これらのことから、「カジノはギャンブル依存症の人を増やさないと栄えない産業であり、焼畑農業と同じだ」と語った。

本来使われるべきカネが市民から吸い上げられ、地域が徐々に衰退していく一方で、海外投資家の懐は潤っていく。鳥畑教授はこの構造を「共食い(カニバリゼーション)」と呼んだ。

そして、カジノ事業者がもうからない、または自治体側の事情でカジノが閉鎖される場合、「契約に従い、自治体側が(巨額の)補償をすることになる」と警鐘を鳴らした。事業者側がもうかっても、そうでなくても、市民に犠牲が及ぶのだ。
依存症を増やす構造

次に、ことぶき共同診療所に勤務する精神科の越智祥太医師が「横浜ドヤ街・寿町のギャンブル依存症から見える横浜カジノの問題」と題して講演を行なった。

越智医師は、中区寿町での診療経験から、「若年層に自己肯定感の乏しい人が増え、マシーンとの一体感を求めてパチンコやスロットなどにのめり込み、ギャンブル依存症になるケースが多い」と指摘。その上で、カジノ誘致の動きについて、次のように語った。

「日本はギャンブル依存症の人の割合が世界で一番多く、症状が潜在化している人も多い。そうした中で、カジノ施設を造ろうとしている。依存症対策もやるというが、まさにマッチポンプではないか」

 

【統合型リゾート(IR)】ギャンブル施設のカジノをはじめ、国際会議場やホテル、その他の商業施設が一体となった複合施設。
日本では、2016年12月にIR推進法(通称「カジノ解禁法」)が公布・施行され、18年7月にはIR実施法が公布された。当面、国内に最大3ヵ所設置される予定。
海外の事業者が活発に営業活動を繰り広げ、贈収賄容疑で前内閣府副大臣を含め多くの逮捕者も出ている。

(社会新報2020年1月15日号より)