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阿部浩己・明治学院大教授が講演

カテゴリー:外交安保 投稿日:2019-12-24

阿部浩己・明治学院大教授が講演

徴用工問題の本質は植民地支配責任
国際人権法も個人の権利重視の方向

阿部浩己(こうき)明治学院大学教授の講演会「植民地支配責任に向き合うとき~徴用工判決と『国際法の常識』」が11月28日、東京・武蔵野市で行なわれ、約100人が参加した。主催は、憲法を学ぶ会。

昨年10~11月、韓国大法院(最高裁)は朝鮮植民地時代の徴用工問題(メモ参照)に関する訴訟で、被告日本企業に対し、元徴用工ら原告に慰謝料を支払うよう命じた。

これに対し日本政府は、1965年に締結された日韓請求権協定によって植民地時代の請求権は「完全かつ最終的に解決された」と主張し、「大法院判決は国際法違反」と反発した。

阿部教授は、日本側主張の根拠として、「協定」締結時に交わされた合意議事録の中で「解決された」ものとして「被徴用韓国人未収金及びその他の請求権の弁済」が含まれることが大きい、と解説した。

ならば、日本政府の主張に正当性があり、韓国側にはないのか?

阿部教授は「そう簡単に判断できる問題ではない」と言う。

日本政府はアジア太平洋戦争の敗戦国となり、連合国との間でサンフランシスコ講和条約を締結した。この中で、「賠償の請求権はお互いに放棄する」ことを取り決めた。だが日本政府は、自国民からの賠償請求を逃れる思惑もあり、「条約により放棄されたのは国家の権利だけであり、個人の(対象国への)請求権は残っている」旨を主張した。

そのため、日本政府は90年代初頭まで、韓国との間でも「個人の請求権は残っている」と言い続けてきた。

だが、この90年代に植民地支配や侵略を受けた国の人たちが、日本に対し次々と裁判を起こすようになった。

そこで、日本政府は、2000年代になると「個人の請求権は裁判で訴えられるが、救済されない」との主張に転換した。

阿部教授は、この日本政府の主張について「これでは訴える権利が無いに等しい」と批判した。

他方で、韓国政府は独立以来、「個人の請求権は無くなった」として国民の訴えに対し真摯(しんし)に向き合ってこなかった。だが、日本政府の転換と同じころ、「個人の請求権は無くなっていない」との主張に転換した。

阿部教授は、「日本政府は責任逃れのために使った理屈により、自らの首を絞めることになった。そして、日韓双方がゴールポストを動かした。一貫しているのは、元徴用工の人たちの訴えだ」と語った。

それでも日本政府は90年代以降、過去の植民地支配に対し、「痛切な反省と心からのお詫(わ)び」をくり返し表明してきた。だが、15年以降の安倍晋三政権下では、その姿勢さえ示さなくなった。

阿部教授は最後に、次のように語った。

「国際人権法の解釈では、かつては強国中心の論理が幅を利かせていたが、近年は『個人の権利をいかに実現するか』を重視する方向に変わりつつある。そして、植民地支配で被害を受けた人たちの声をくみ上げる方向で条約を解釈し直すべき、との声が高まっている。日韓とも、この大きな流れを踏まえ、一致点を探っていくべきではないか」

(社会新報2019年12月25日号より)