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元海将補がイージス・アショア調達を批判

カテゴリー:外交安保 投稿日:2019-11-20

なぜ未完成レーダーを選定

イージスアショア試験施設

防衛省は2020年度予算の概算要求で過去最大の5兆3223億円を計上した。12年に発足した第2次安倍内閣以来、防衛予算は8年連続の増加となる見通しだ。防衛予算額を押し上げた要因の一つが、超高価な米国製兵器“爆買い”の象徴である、陸上配備型ミサイル迎撃システム「イージス・アショア」だ。

配備候補地の陸上自衛隊の新屋演習場(秋田市)とむつみ演習場(山口県萩市、阿武町)の周辺住民から電磁波問題で懸念の声が噴出し、候補地問題は事実上の白紙状態になっている。

そのイージス・アショアの構成品であるレーダーの調達方法に重大な疑義があるとして、イージス艦の概算要求実務に携わった坂上芳洋元海将補が本紙に驚くべき事実を指摘した。

ロ社製はまだ構想レベル

坂上元海将補の指摘を概観する。

まず、疑問の核心部分を「契約されたロッキード・マーチン社(以下、ロ社)製のレーダーLMSSRが、いまだ構想レベルのレーダーであり、全く実績がないことだ」と直言する。

防衛省は今年10月31日、地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」に搭載するロ社製のレーダーLMSSRの取得契約を輸入代理店の三菱商事と締結したと公表した。契約金額は2基で計349億5500万円。

三菱商事が輸入代理店となり、アンテナ本体、冷却装置、電源装置を納品する。入札に応札したのは同社のみだった。三菱商事の宇宙・航空部門出身者でつくる防衛コンサル会社「グローバルインサイト」が事前にLMSSRの売り込みで周到な根回しを行なった。

イージス・アショアの構成品選定作業は実に不可解だった。昨年7月17日、防衛省の防衛事務次官室でイージス・アショアに装備するレーダーの種類をレイセオン社製のSPY―6とロ社製のLMSSRのいずれかを採用するかの構成品選定諮問会議が開かれた。会議の結果、「弾道ミサイルの探知性能等、基本性能で高い評価を得た」との理由でロ社製レーダーが選定された。これに対して、坂上氏は「レイセオン社製SPY―6は米海軍が正式に採用を決め、ミサイル駆逐艦用に製造されている。一方、LMSSRはまだ構想段階だ。LRDR(長距離識別レーダー)の技術を根拠としているが、『基本性能で高い評価を得た』という根拠が分からない。国民の血税をつぎ込む以上、選定根拠を公表すべきだ」と批判する。

米国防総省ミサイル防衛局(MDA)とロ社側の提案書はLMSSRが開発中であるため2万数千頁に及んだ。調達方法はFMS(対外有償軍事援助)ではなくDCS(一般輸入)となった。

AESAはスペイン製?

調達方法がDSCとなったことの背景を坂上氏はこう読む。「ロ社はLRDRの技術に基づくと言明するが、LRDRはBMD用の米国製のAESA(アクティブ電子走査式のアンテナ)技術によるレーダーであり、DCSでは輸出はできないと米国防総省は規制している。米国のポリシーでは、BMD AESAレーダー、特にガリュウムナイトライド(GaN)アンテナ/レーダーテクノロジーのDCS販売を禁止している。DCSでの導入は、おそらくLMSSRのAESA GaN技術が米国で製造されていないことを意味しており、 スペイン製である可能性が非常に高い。AESAレーダーはすでに三菱電機によってF―2のため量産中であり、また、富士通のGaNはスペインのGaN製品よりも優れていると考えられる。残念ながら、日本政府は日本国内の技術に劣るスペインのAESAアンテナを購入する可能性がある」と語った。

国産品不使用が後で判明

さらに坂上氏はこう続けた。「米政府から防衛装備品を購入するFMSの増加で受注が減り、苦境に陥る日本の防衛産業を底上げするため、LMSSRには富士通のガリウムナイトライド(GaN)半導体素子が使用される予定だった。ところが、防衛省はロ社の通知により早々に断念。国内企業へのメリットはなくなってしまった」。つまり、選定会議ではロ社のレーダーには日本企業の製品が使用されるという触れ込みだったが、選定会議で決定後にその話がなくなるという。“後出しジャンケン”なのだ。

さらに、LMSSRは、未完成品であるため、迎撃の試験などが必要で、その諸々の試験費用が約5億㌦(600億円)程度必要となることが後から明らかになった。その上に米ミサイル防衛庁(MDA)は日本の防衛省に対してLMSSRの性能を確認するために日本の負担でハワイにテスト試験場の建設まで求めるという厚かましさだ。これまた“後出しジャンケン”なのだ。イージス・アショアの費用(ことば参照)は今後、兆円台に膨らむ可能性がある。

坂上氏は「構想段階のレーダーを、極めて重要な防衛システムに搭載する事自体、全くの論外。構成品選定作業はやり直すべきだ」と一蹴(いっしゅう)した。

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 【イージス・アショアの費用】本体価格は2基で2404億円(うちLMSSRは約350億円)。教育訓練費31億円、維持・運用経費1954億円、VLSが2基分で103億円。これに配備ミサイルSM3ブロックⅡAを48発(1発37・5億円)と想定すると1800億円。合計で6292億円となる。さらに垂直発射装置や施設整備費、燃料費、さらにハワイでのLMSSRレーダー試験費用600億円などを加えると、7000億円台に達する。FMS(対外有償軍事援助)という米国の「言い値」で価格が決まるため、今後、1兆円台に水膨れする。

(社会新報2019年11月20日号より)