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大甘な「経済前提」でも30年後に2割減の衝撃

カテゴリー:社会保障・税 投稿日:2019-11-06

年金財政検証の結論をみる

2019年の年金財政検証が参院選後の8月末にようやく公表された。

前回の5年前は6月、前々回は2月に出た。今回数ヵ月も遅れたのは、老後2000万円問題と同じで、選挙での争点隠しだ。

年金制度の定期健診に例えられる財政検証は、04年の年金改革で義務付けられ、今回は3回目。向こう100年の年金財政の安定のため、マクロ経済スライド(ことば参照)による年金水準の引き下げをいつまで続け、その時の所得代替率が何%になるかを点検する。政府は50%以上を維持すると約束している。

30年後の年金水準は2割減。19年検証の結論だ。

今回の検証は、将来の賃金や物価などが異なる6つの経済シナリオに基づいた想定(ケースⅠ~Ⅵ)で行なった。中間ケース(同Ⅲ)を見ると、年金水準の引き下げは47年度に終了し、現在61・7%の所得代替率が50・8%にまで下がるという。

政府は、物価上昇率を割り引いた年金額で見ると、現在22万円のモデル世帯の年金額が30年後には24万円(同Ⅲ)だとして、年金は将来も「横ばい」と説明する。また政府は、前回と比べ経済前提を「控えめ」に設定し、厳しく検証したと強調する。

100年安心どころか

しかし、基礎年金を見れば、現在36・4%の所得代替率は悪化ケース(同Ⅴ)で58年度に21・9%と、約4割もカットとなる。基礎年金は今でさえ不十分なのに、これでは老後の最低保障機能をとても果たせない。また、経済前提はそもそも非現実的で、GDPがマイナスでも賃金と物価が共に上昇する、という不思議な設定(同Ⅵ)となっている。TFP上昇率は過去30年を上回る寛大な設定(同Ⅰ~Ⅵ)だ。

年金財政検証

大甘な前提で計算された年金でもこれほど減らされるのでは、とても100年安心とはならない。

16年の年金カット法で導入されたキャリーオーバー制は、マクロ経済スライドの過去の未実施分を上乗せして年金額を下げる制度で、18年に施行、19年度に初適用された。また賃金指標がマイナスになった場合も年金額を引き下げる賃金マイナススライドも同時に導入され、21年に施行される。

年金を受給し始める65歳の時は、政府の説明通りなら、将来も所得代替率50%は保証されるかもしれない。しかし受給後もスライド調整でカットされ続け、85歳時点では38・4%にまで下がると試算(同Ⅴ)している。基礎年金の不足分は結局、生活保護で対応するしかなく、年金財政の失敗を生活保護制度に押しつけた格好だ。

これ以上の年金額の目減りを止めるため、社民党は、16年法を即刻中止するとともに、基礎年金部分へのマクロ経済スライドは廃止すべき、と主張してきた。

制度改悪の方向性示す

オプションAとして提示したのは、非正規労働者への適用拡大案。無年金、低年金対策にもつながる。社民党もその必要性は繰り返し指摘してきた。

12年の年金機能強化法では、それまで週30時間(フルタイムの4分の3)以上が厚生年金の対象だったが、従業員501人以上の企業で働く週20時間以上の方にまで広げた。12年法は当初、月収7・8万円以上(対象45万人拡大)としてきたが、拡大に消極的だった自公両党との修正で、同8・8万円以上(同25万人)となった経緯がある。

今回は、①企業規模要件の廃止(同125万人)②賃金、企業規模要件の廃止(同325万人)③月収5・8万円以上のすべての被用者へ拡大(同1050万人)  の3案が示された。また、オプションBでは、①基礎年金の加入期間を40年から45年(20~65歳)に延長②厚生年金の加入上限を70歳から75歳に引き上げ③繰り下げ受給を70歳から75歳に拡大④65歳以上の在職老齢年金47万円基準の廃止・緩和  が提案された。

在職老齢年金の緩和案では、恩恵が高所得者に限られ、国民の理解は到底得られまい。また、繰り下げ受給の75歳拡大案は、支給開始年齢引き上げへの布石とも言え、今後とも注意が必要だ。さらに、加入年齢の引上げ案に合わせる形で、厚労省は私的年金について企業型や個人型の確定拠出年金を見直す案も示している。

最低保障年金の創設を

こうした小手先の弥縫(びぼう)策を繰り返しても、安心の年金制度を構築することはできない。社民党は、最低保障部分を全額税財源にした最低保障年金の創設を求めてきた。

抜本的な年金改革には数十年という時間がかかる。スウェーデンなどにならい、すべての政党が共通のテーブルに着き、選挙を越えた持続的な改革論議を行なう場。これが日本でも必要だ。

 【マクロ経済スライド】現役世代の減少や平均余命の伸びに合わせて、自動的に年金水準を引き下げる仕組み。04年の年金改革で導入された。初適用された15年度は、本来は2・3%改定のところ、スライド調整で0・9%と特例水準の解消で0・5%がカットされ、改定率は0・9%に。2度目の19年度は、スライド調整0・2%と18年分の繰越0・3%をカットし、本来0・6%改定が0・1%のみに。

(社会新報2019年11月6日号より)