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台風被害 遅すぎる国と県の対応

カテゴリー:3.11・災害・復興 投稿日:2019-10-02

南房総台風被害 館山市などをみる

南房総台風被害

台風15号は千葉県内に深刻な被害をもたらした。当初、64万世帯が停電。復旧作業は長期に及び、停電から20日経っても完全復旧には至っていない。なぜこれほどまでにインフラの復旧が遅れるのか、その原因を考える(7面関連記事)。

台風が千葉県内を通過したのは9月9日午前。千葉市では最大瞬間風速57・5㍍。市原市ではゴルフ練習場の鉄塔が倒れ、住宅に被害があったほか、けが人も出た。県内の農水産物被害は300億円を超える見込みだ。32市町村のうち22市町村が8~9日に災害対策本部を設置したが、千葉県が設置したのは10日。県が被災した自治体に情報を収集するために職員を派遣したのは3日後の12日。森田健作知事が被災地を初めて視察したのは5日後の14日だった。

職員足りずパニック

どこの市町村でも、被害の状況を把握するにも停電で連絡が取れない、人が足りないというパニック状態が続いた。インフラ復旧の中心を担うのは自治体だ。しかしそれを担う職員はどこの市町村でも減少。南房総市では3年間で20人減だ。

台風の後、停電で携帯電話が充電できない、テレビの情報も入らない、水が出ない、連絡もできない状況が続いた。しかも猛暑なのにクーラーが使えない。南房総市や市原市では熱中症による死者も出た。

しかし、政府は被害対応の遅れを認めていない。当初、今回の被害に対して予備費19億2000万円を計上したが、被害の大きさに驚いたのか、20日には激甚災害(ことば参照)に指定する方針を決め、24日には住宅の一部損壊被害の多くを占める屋根瓦の修理費を国費で特例的に支援することを決めた。

被害が最も深刻だった館山市や南房総市の被災者は怒り心頭だ。「何が内閣改造だ。こっちは電気も使えないのに。早く応援部隊を派遣してくれ」「クーラーが使えず暑くて寝られない。庭にテントを張って寝た」「いけすのアワビやイセエビが停電で死んだ」と電気の復旧の遅さを悔やんだ。その上に、多くの世帯で強風で屋根瓦が飛び、ブルーシートの確保や屋根を覆う作業は困難を要した。

南房総市では高齢化も進み(2015年は41・0%)、危険で屋根に上れない、後片付けができないなどの声を聞いた。空き家は壊れたままで放置されている。

蓄電池の促進が急務

なぜ停電復旧がこれほどまでに遅くなったのか。東電は「君津市内で10万軒に電力を供給する鉄塔2本が倒壊。各地で電柱や電線が損傷し、倒木で現場に行けない」として、復旧までに時間がかかると弁明した。

昭和発電OBで太陽光発電のパネルの普及を進めている時田孝二さんは、「東電による送電線を監視するグループが2011年以降なくなった。以前は樹木が電線に接触するなどした場合、伐採作業をする人がいたが、今はやっていない。空き家も多く道路わきの樹木も伸び放題。家主がいなくて伐採するにも許可が取れない。日常的に対策を講じていなかった「人災」だと指摘する。また、「東電幹部は2~3日で復旧できると思い込んでいた。職員は災害対策の訓練を受けていない。誰がどう集約し、対策を取るのかが大きな問題だ」とも話した。

今回、太陽光パネルを設置していた人からは「太陽光パネルに救われた」という声を多く聞いたという。時田さんは、太陽光パネルを設置している家に、停電時の操作方法について知らせ、利用者から「昼間は冷蔵庫、洗濯機、扇風機を動かすことができ、スマホも充電できて助かった」と感謝された。

時田さんは、「今後予想される大地震に備えて、公共施設や避難所などには太陽光パネルと蓄電池をセットで設置する必要がある。また、せっかくメガソーラー事業者が近くで太陽光発電を行なっているのに、集落で困っている人を助けられない。制度を変えてもらいたい。太陽光発電を中心とした電力網の構築が必要だ」と熱く語った。

 【激甚災害制度】地方財政の負担を緩和し、または被災者に対する特別の助成を行なうことが特に必要と認められる災害が発生した場合に、中央防災会議の意見を聞いた上で、当該災害を激甚災害として指定し、併せて当該災害に対して適用すべき災害復旧事業等に係る国庫補助の特別措置等を指定するもの。指定されると、地方公共団体の行なう災害復旧事業等への国庫補助のかさ上げや中小企業事業者への保証の特例など、特別の財政援助・助成措置が講じられる。

(社会新報2019年10月2日号より)