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年金財政検証 納得・信頼の年金へ国民的議論を

カテゴリー:社会新報 投稿日:2019-08-30

厚生労働省は8月27日、公的年金の長期見通しを試算する財政検証結果を公表した。5年前の前回は6月初めに公表されていたが、「老後2000万円」問題を受け、参院選で年金問題が争点とならないよう先送りされていた。

今回の検証結果でも、将来にわたり所得代替率50%以上を維持できそうだとの結果となっているが、「見せかけの安心」との不安が拭えない。50%以上というのも65歳での受け取り開始時点に限ったものであり、受け取った後は目減りして最終的に40%程度に下がる。また、若い世代はより低い水準からスタートすることになる。しかも試算は経済成長が続くことが前提で、想定を下回れば水準はさらに低下することになる。

年金の伸びを物価や賃金の伸びよりも抑える「マクロ経済スライド」が導入され、その後、2016年に強行された「年金カット法」によって、「キャリーオーバー制度」や「賃金マイナススライド」などが導入されている。今後30年近く給付抑制を続けないと制度を持続できないとされている。しかも「参考資料」として、こうした抑制策がフル発動した試算も示されている。しかし、年金から天引きされる後期高齢者医療保険や介護保険の負担増も止まらず、老後の暮らしは苦しくなるばかりであり、生活実態を無視した年金額の目減りは低年金者ほど影響が大きくなる。基礎年金のマクロスライドを廃止すべきだ。

現在20歳の人が今年65歳で引退する世代と同じ水準の年金をもらうには、68歳を超えて働き、年金をもらい始める年齢も同様に遅らせる必要があるとされる。しかし、高齢者の就職状況は非常に厳しく、賃金水準も低い。健康状態は個人差が大きい。「人生100年時代」を強調する安倍政権がもくろむ年金支給年齢の引き上げは認められない。

財政検証は、平均的な男子賃金で40年間厚生年金加入の終身雇用の夫と40年間専業主婦の夫婦をモデル世帯としている。しかし、家族形態やライフスタイルの多様化、就労環境の変化などで、モデル世帯は現実と乖離(かいり)した虚構である。基礎年金しか頼れない貧困高齢者の安心は得られないし、今や生活保護受給世帯の半数が高齢者世帯である。納得・信頼の公的年金制度に向けた国民的な議論を行ない、老後の経済的基盤たり得る最低保障年金の創設に取り組んでいく必要がある。

(社会新報2019年9月4日号・主張より)