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「表現の不自由展」

カテゴリー:社会新報 投稿日:2019-08-23

表現の自由―憲法を活かす私たちの課題

特定の人々の思想信条や人権を社会から排除していこうという風潮が強まっている。そうした考え方や思想は守られなくてもよい、こういう人権は制限されてしかるべきという流れである。しかも問題は、思想信条や人権を守り啓発すべき立場の自治体や政府が、求められる役割と真逆な対応を行ない、この風潮に拍車をかけお墨付きを与えていることである。繰り返してはならない教訓を私たちは戦前の歴史から学んでいる。

自治体議員団の夏季研修会に伊藤塾の伊藤真塾長を招いた。伊藤さんはNHKが5年に1度行なっている「日本人の意識」調査を紹介し、今日の権利意識や人権意識の現状について警鐘を鳴らした。この意識調査には、これらが憲法上の権利だと思うかどうかを問う設問がある。それによると「表現の自由」を憲法上の権利だと答えた人の割合は、1973年の調査開始当時が49・4%であった。ところが以後減少を続け、2018年の直近の調査結果は権利だと答えた人の割合は29・8%へと減少している。この数字からは実に国民の3分の2以上が「表現の自由」を憲法に定められた権利と理解していないことになる。

「あいちトリエンナーレ2019」の企画展「表現の不自由展・その後」が自治体や政府によるさまざまな発言や介入、テロや脅迫予告によってわずか3日間で中止となった。政府の意に沿う内容にしか「表現の自由」は許されないという考え方、「国益」を損なう「表現の自由」は制限してもよいとする主張は、事実上の検閲を容認する明確な憲法違反だ。暴力で企画展を破壊するという脅迫に至っては論外である。企画展「表現の不自由展・その後」については、中止に至った事態を危惧し再開を求める声が高まっている。毅然(きぜん)とした姿勢を示し再開されることを求める。

同時に「表現の自由」を「権利」と認識する人が3割程度という現実を深刻な数字として受け止めなければならない。この中には、「権利ではあるが『国益』を損なう『表現の自由』は制限されるのはやむを得ない」という意識も含まれるだろう。残念ながら政権の暴走を「支える」意識でもある。私たちは「憲法を活(い)かす政治」を掲げている。この現実が提起する課題にしっかりと向き合い、文字通り「憲法を活かす」取り組みを強めていくべきだ。

(社会新報2019年8月28日号・主張より)