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マクロ経済スライド 基礎年金の役割が果たせなくなる

カテゴリー:社会新報 投稿日:2019-07-03

6月19日の党首討論でマクロ経済スライドを批判されたのに対し、安倍首相は「やめてしまう考え方はばかげた案」と一蹴した。なぜ首相はマクロ経済スライドにこだわるのか。

マクロ経済スライドは04年年金改革で導入された現在・将来の年金受給額を実質減額する仕組み。調整率は平均余命伸び率0・3%(固定)に被保険者総数の変動率を加えたもの(この変動率は減少が前提とされたため、厚生年金加入者の増加は年金抑制効果を薄れさせるという政府にとって皮肉な結果をもたらす)。

マクロ経済スライド発動に先立ち、12年の法改正で、00~02年度にかけてマイナスの物価スライドを行なわずに据え置かれていた年金額(政府はこれを「特例水準」と呼んだ)を13年度からの3年間で引き下げることとされた。政府が過剰に給付されたと推計する額は約7兆円で、党首討論で首相がマクロ経済スライドの廃止で「7兆円の財源が必要」と述べたのはこれを念頭に置いたものとも思われるが、「将来給付を削らないことで必要となる財源はそちらで考えろ」とは悪質な開き直りでしかない。

マクロ経済スライドは適用すると名目額が下がる場合は行なわれないが、16年の「年金カット法」により、未実施分は翌年度以降に持ち越すこととされた(キャリーオーバー)。また21年度以降、名目賃金の下落率が物価下落を下回る場合、賃金の方に合わせて年金引き下げを行なうとされた。

19年度の年金額「0・1%引き上げ」をマクロ経済スライドの成果だとする与党幹部がいる。しかしこれは、物価、賃金共にプラスで物価上昇率の方が高い場合には、賃金上昇率の方が適用され、それでも0・6%の引き上げとなるべきところ、同年度のスライド調整分とキャリーオーバー分が差し引かれて0・1%になったのであり、年金引き上げどころか、目減り効果が発揮されただけなのだ。

マクロ経済スライドの最大の問題は、基礎年金部分にも適用されることで、最低生活保障の機能を全く失わさせることだ。政府も前回14年財政検証で、成長率1・2%想定下で基礎年金の所得代替率の30年間で3割ダウンを認めており、これは金融庁や財政審の文書の原案が認めていた(だが削除で隠した)ことでもある。消費増税分を財源とする月5000円の低年金者給付金はアリバイづくりであり、本格的な最低保障年金の制度設計こそが必要だ。

(社会新報2019年7月3日号・主張より)