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憲法コラム

第98回(8月8日):照屋寛徳 議員

集団的自衛権行使容認と「法の番人」交代

【写真】野党5党国対委員長が「麻生副総理発言非難声明」を首相官邸に持参したところ「門前払い」
=8月7日、官邸正門前で職員と押し問答

米軍遺棄のドラム缶発見現場を視察=6月22日、沖縄市

 明文改憲、解釈改憲という言い方がある。明文改憲とは、現行憲法の正文を明確に改正(悪)する事であり、敢えて「明文改憲」の言葉を使わなくても、ずばり改憲そのものを表している。

 解釈改憲とは、憲法の解釈を通して、憲法の正文を改正(悪)したのと同じ効果が生ずることがある、という考え方を表す言葉と理解する。特に、解釈改憲という言葉が使われる場合、憲法第9条との関連で、明文改憲によらずとも、憲法第9条の正文を改正(悪)した事態が生じている、又は、生ずることを批判的文脈で指摘するために、使用される言葉だと理解する。

 さて、去る7月の参議院選挙で圧勝した安倍総理は、選挙後急速に、「法の番人」交代による集団的自衛権行使容認への憲法解釈を変更し、結果として解釈改憲の実現を図ろうと躍起になっている。

 先ず、論を進めるうえで、今一度集団的自衛権について、考えてみよう。

 集団的自衛権とは、「自国が攻撃されていなくても、自国と密接な関係にある国に対する武力攻撃を、共同して実力で阻止できる権利」のことである。国連憲章51条は、個別的自衛権と並んで国家の「固有の権利」としているが、しかし、集団的自衛権という観念は国連憲章ではじめて用いられたものであり、「固有」の権利というのには無理がある、と指摘する憲法学者は多い。

 集団的自衛権について歴代内閣は、「憲法9条で許される自衛権行使は、わが国を防衛するための必要最小限度の範囲にとどまるべきだ。集団的自衛権の行使は、その範囲を超え、憲法上許されない」との見解を継承してきた。

 ところが、第1次安倍内閣の私的懇談会である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は、2008年の報告書で集団的自衛権行使容認の事例として次の4つのケースを提言した。

@公海上での自衛隊による米軍艦船の防護、
A米国を狙った弾道ミサイルの迎撃、
B国連平和維持活動(PKO)などでの武器使用、
C多国籍軍などへの後方支援
――である。

 第2次安倍内閣の前記有識者懇談会の座長である柳井俊二・元外務事務次官は、8月4日のNHK番組で「国際法に従った(憲法)解釈変更をして日米の同盟関係をしっかり運用できるようにすることが必要だ」と述べ、国連憲章に沿って集団的自衛権の行使を幅広く認める方向で議論する考えを示す発言をした。柳井氏は「今までの政府見解は狭すぎて、憲法が禁止してないことまで自制している」と指摘、行使容認を認めなかった歴代内閣法制局判断をも批判している。

 その内閣法制局とは、「閣議に附される法律案、政令及び条約案を審査し、これに意見を附し、及び所要の修正を加えて、内閣に上申すること」等を所掌事務として内閣に置かれた機関である。内閣法制局は、官房長官と並ぶ内閣直属の補佐機関とはいえ、憲法や法令解釈について、時の権力に左右されることなく、条文等から帰結される解釈の客観性を担う「法の番人」である。

 安倍総理は、その「法の番人」たる内閣法制局長官に、従来の政府解釈を堅持する立場の山本庸幸氏を退任させ、集団的自衛権行使容認を持論にする小松一郎・駐仏大使を8月8日に政治任用する閣議決定をした。驚き、恐れ入る人事だ。まるで、「お友達内閣」の復活人事だ。

 安倍総理は、「法の番人」たる内閣法制局長官を交代させることによって、集団的自衛権行使容認の憲法解釈変更を加速させ、実質的に憲法第9条改憲を成し遂げる「解釈改憲」実現に向け、着々と布石をうった。これぞ、まさしく「ナチスの手口」(麻生副総理発言)による憲法改悪だ!

(2013年8月8日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


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