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憲法コラム

第97回(8月3日):照屋寛徳 議員

環境権の「加憲」と沖縄における環境破壊

米軍遺棄のドラム缶発見現場を視察=6月22日、沖縄市

《写真》米軍遺棄のドラム缶発見現場を視察=6月22日、沖縄市

 公害や環境権の厳密な定義は難しい。日常的に使用される言葉としての「公害」を「人の生命・健康や生活・自然の環境に被害が発生する人為災害」の事と定義づけると、戦争こそが最大の公害である。

 同時に、戦争を効率的に遂行する目的で存在する軍事基地(特に、米軍基地)は、最大の公害発生源であり、環境破壊の元凶だ、というのが私の持論である。

 そこで、在沖米軍基地、環境破壊、憲法改正のうえ環境権の条文追加で「加憲」、との考え方について論究することにした。

 米軍基地返還跡地である沖縄市営サッカー場改修工事現場で、米軍が遺棄したドラム缶26本のうち22本から国の環境基準値をはるかに超える枯れ葉剤由来のダイオキシン類が検出され、沖縄中が騒然となっている。

 沖縄市が独自で研究機関に調査依頼した結果が、7月31日に公表された。それによると、米軍遺棄のドラム缶周辺液体や付着物の一部から水質基準値の280倍、土壌基準値の8.4倍のダイオキシン類と枯れ葉剤の主要成分の一部が検出されたのである。私もドラム缶発見現場を視察したが、発見されたドラム缶にはベトナム戦争当時の最大手枯れ葉剤製造会社「ダウ・ケミカル」の名が記されていた。ドラム缶は、猛毒枯れ葉剤容器であった可能性が高い。

 7月28日付の英字紙『ジャパン・タイムス』は、1969年の秋に沖縄本島東海岸沖に毒ガス兵器が投棄された、と報じている。まさに、猛毒攻めのOKINAWAだ。

 1967年5月には、嘉手納基地からジェット燃料が流出し、地下水脈を汚染し、「燃える井戸」が出現する事故が発生した。米軍基地は、化学薬剤、オイル、洗浄剤等による水質・土壌汚染、演習による山火事・赤土流出等の自然破壊、「殺人的爆音」公害等まさに「公害のデパート」であり、環境破壊の元凶である。

 しかも、米軍基地は返還後も環境破壊の汚染源であり続ける。それは、現行日米地位協定上、米軍には基地返還にあたっての原状回復・補償義務が免除されているからである。

 さて、憲法改正と環境権について論を進める。憲法を改正して自衛隊の存在の明記、環境権やプライバシー権などの新たな理念を条文に加えるべし、というのが公明党などが主張する「加憲」の立場だ。

 私は、環境権を「加憲」する為に改憲すべき、との主張には反対だ。その一方で、環境権の権利性は認める立場だ。「環境権」とは「大気、水質、日照、静穏、景観などの環境を、人間の健康で快適な生活にとり良好な状態で享受する権利」である(『憲法辞典』三省堂)。

 たしかに、憲法に環境権の条文はない。だが、学説上環境権の憲法上の根拠として憲法第13条の幸福追求権、憲法第25条の生存権、あるいはその両者とする説がある。私法上の人格権として、「環境権」の権利性を認める判例は増えている。

 私は、憲法改正で環境権、プライバシー権、自衛隊の存在の明記などを求める「加憲」ではなく、憲法法体系よりも優位にある安保法体系による環境破壊を許さない政治的努力こそが、今一番に求められていると考えるが、どうだろうか。「基地の島」沖縄で暮らしていると、痛切にそう思う。

 猛毒攻めの沖縄から、「加憲」による環境権や新しい権利の憲法への追加という「改憲」について考えてみた。

(2013年8月3日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


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