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憲法コラム

第89回(7月1日):照屋寛徳 議員

「先行改憲」か、それとも「潜行改憲」か?

照屋寛徳

 今日から文月(ふみづき)である。7月4日には参議院選挙が公示され、7月21日投開票日の日程が閣議決定された。

 150日間の第183回通常国会も去る6月26日に閉会した。通常国会の閉会をもって参議院選挙の事実上のスタートになったが、いよいよ「夏の一大政治決戦」到来だ。

 今日は、参議院選挙の争点や意義との関連で「先行改憲」と「潜行改憲」について考えてみた。そもそも、「先行改憲」という言葉は、自民党や安倍総理が、憲法第96条の憲法改正発議要件を「各議院の総議員の3分の2以上の賛成」から「両議院のそれぞれの総議員の過半数の賛成」に緩和せんとする自民党「日本国憲法改正草案」に基づく憲法96条「先行改憲」論で周知される事になった。一方の「潜行改憲」は、私が知る限り水島朝穂氏(早稲田大学法学学術院教授)の造語であろう。「潜行改憲」とは、言い得て妙だ。現下の自民党や安倍総理の改憲策動に対する、的確にして絶妙な形容だと考える。

 私は、これまでに水島教授の憲法に関する数冊の著書を読んだ事がある。講演も何度か聞いた。

 去る6月20日、「立憲フォーラム」第6回公開勉強会で、久しぶりに水島教授の講演を聞く機会があった。その日の演題は「国防軍創設のための憲法改正?――憲法改正の限界にも触れて――」であった。私は、平素から水島教授が著書・論文、講演の中で、「皮肉と痛烈な批判」を込めて発する造語(語り口)に強く惹かれていた。例えば、日本国憲法の理念に照らし、歴代政権の沖縄政策は「法治主義」ではなく「法恥主義」と断じ、憲法法体系と異なる安保法体系への「放置主義」だ、と嘆いていた。まさに、「寸鉄人を刺す」だ。

 水島教授は、「立憲フォーラム」の公開勉強会で、安倍総理は政権発足直後から憲法96条「先行改憲」を主張していたが、最近は改憲派憲法学者の小林節教授(慶応大)などからも「立憲主義の破壊だ」と批判され、各種世論調査でも憲法96条「先行改憲」反対が多数を占めるに至って、「潜行改憲」へと方針変更した、と言うのだ。なるほど、なるほどと妙に納得。ひとり心の中で拍手喝采した。

 水島教授が指摘するように、自民党と安倍総理は、間近に迫った参議院選挙で、憲法96条「先行改憲」を争点化する事は断念したやに思う。だが、そうだからと言って「改憲」を諦めたわけではない。自民党参議院選挙公約は、自民党「日本国憲法改正草案」に基づく憲法改正発議要件の緩和を掲げ、「自民党は、広く国民の理解を得つつ、『憲法改正原案』の国会提出を目指し、憲法改正に積極的に取り組んでいきます」と憲法改悪の野望を鮮明にしている。何の事はない、「先行改憲」が「潜行改憲」に方針転換しただけだ。巧妙に潜った分、たちが悪い。明らかな争点隠しだ。国民を騙して参議院選挙で勝って、参議院選挙後に、日本維新の会、公明党、民主党の一部改憲勢力を糾合して、丸ごと憲法改憲(改悪)を実現しよう、との魂胆なのだ(ちなみに、日本維新の会は、参議院選挙の公約に「先行改憲」を掲げている)。

 さて、自称「護憲政党」のわが社民党、最近では、「存在意義は高いが、存在感は低い」等と揶揄されているが、安倍流「先行改憲」と「潜行改憲」を許さない為に、広範な国民と連帯し、多くの国民の心に響く声を発して参議院選挙を闘い抜きたいものだ。その連帯の要を果たすのは社民党だ、と信ずる。

  ここまで書き綴っていると、肌に心地よいウチナーのカーチーベー(夏至南風)が吹いてきた。

(2013年7月1日 社民党国対委員長 照屋寛徳)


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