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憲法コラム

第73回(6月10日):照屋寛徳 議員

「愛唱歌集」の出版禁止と憲法21条

照屋寛徳

 120万余の尊い命が奪われた悲惨な沖縄戦が終結したのは、1945年6月23日である(実際には、その後も旧日本軍による沖縄県民への虐殺行為が続いた)。

 米軍は、沖縄戦開始直後、すなわち沖縄本島上陸直後の1945年4月には、布告第8号「一般警察及び安全に関する規定」を発布した。その内容は、「米軍政府の許可なしに新聞や書籍などを発行・印刷あるいは輸出・輸入することを禁じ、ラジオ、無線機、伝書鳩を有する者を申告制とした」のである。

 アメリカの軍事支配下の沖縄、「無憲法」下の沖縄で1960年代に発生したのが、「愛唱歌集」出版・配布事件である。「愛唱歌集」=写真=は、当時の沖縄教職員会(現・日教組)が1960年12月24日に発行した。同会は、同年12月16日、琉球政府に「愛唱歌集」の出版許可申請をなし、許可が得られないまま、翌年1月、同会主催の教育研究中央集会中に参加会員を通じ各学校へ配布した。

 それに対し、米軍は布令144号(集成刑法)違反を理由に回収を命じたのである。この「愛唱歌集」事件を契機に、米軍政下の沖縄で<言論・出版の自由>を要求する闘いが拡がり、高まった(『沖縄百科辞典』沖縄タイムス)。

 日本国憲法第21条は「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない」と規定する。憲法21条でいう「集会」とは、多数の人が共同の目的をもって一定の場所に集まることを指す(屋内集会、屋外集会)。「結社」とは、一定の場所とは関係のない精神的結合である(政治結社、経済結社、学術結社)。そして、「言論、出版その他一切の表現の自由」とは、あらゆる手段の思想発表の自由をいう。思想を発表する手段は、新聞、雑誌、絵画、写真、映画、音楽、レコード、演劇、ラジオ、テレビ等、何であるかを問わない(宮澤俊義『全訂日本国憲法』)。

 さて、自民党「日本国憲法改正草案」は、現行憲法第21条に第2項を追加し、「前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」とする。要するに、自民党の「21条改憲案」が実現すると、政府方針であるオスプレイの強行配備や辺野古新基地建設反対、米軍ヘリパッド工事建設反対の集会やデモ、毎週金曜日夕方の総理官邸前の脱原発行動等も<公益及び公の秩序を害する目的・行動>として、禁止されるだろう。

 日本国憲法では、法の下の平等や思想・良心の自由が広く認められている。国民の自由や権利が制約されるのは「公共の福祉」に反する場合に限られる。自民党など改憲勢力の「憲法21条改悪」を断じて許してはいけない。

 「憲法番外地」の沖縄、「無憲法」下の沖縄では、「愛唱歌集」の出版すら禁じられた。「愛唱歌集」の序文には、「心に太陽をもて、唇に歌を!歌は私たちの心の糧であり、清新の気を養う活力源だと言われています」と記されている。

 自民党「日本国憲法改正草案」の憲法第21条改悪が実現すると、「もの言えば唇寒し」の暗黒時代が到来する。

(2013年6月10日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


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