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憲法コラム

第195回(3月10日):照屋寛徳 議員

遠い 遠い はるかに遠い
―国と沖縄の「真の和解」―

【写真】 3月8日、衆議院安全保障委員会

照屋寛徳

 去る3月4日のウチナーにおける「さんしんの日」、国(原告)が沖縄県(被告)を訴えた代執行訴訟で、電撃的な「裁判上の和解」が成立した。

 私は、そのビッグニュースを米軍キャンプ・シュワブゲート前の座り込み闘争現場で耳にした。

 私が、国と沖縄県が「裁判上の和解」に合意した、とのニュースに接した経緯は、同日付の私のブログに記してある。

 翌3月5日、地元二紙の詳報、福岡高裁那覇支部の和解勧告文(全文)、成立した和解書本文(条項)などを通して、和解の全容やそこに至る経緯・背景を知った。

 私の約44年に及ぶ弁護士的感覚からすると、国が辺野古新基地工事中断を受け入れた点で、今回は被告沖縄県の「勝訴的和解」である。すなわち、実質的な沖縄県の勝訴だ。

 3月5日付の地元二紙は、電撃的な和解成立を県幹部が「暫定勝訴」と表現する一方で、防衛省幹部が「不戦敗」と吐き捨てた、と報じている。いずれの言い分も理解できる。(だが、表現としては、業界用語でいう沖縄県の「勝訴的和解」がピッタシだ)

 さて、和解成立の翌日に地元紙に掲載された福岡高裁那覇支部の和解勧告文を精査すると、国(安倍政権)が和解に応じたのは、間違いなく敗訴のリスクを回避せんがための決断であった、と読める。

 裁判所が国と沖縄県双方に提示した和解勧告文は、@行政不服審査法に基づく国による代執行訴訟提起は、国・県が対等・協力関係にあることを示した平成11年改正地方自治法の精神に反する、と痛烈に批判した上で、A今後埋め立て承認の撤回がされたり、設計変更に伴う変更承認が必要となった場合、特に後者においては知事の広範な裁量権限に照らし、国が敗訴するリスクが高い、と明言している。B本来、辺野古問題はオールジャパンで最善の解決策を考え、米国に協力を求めるべきである、とも言及している。

 いずれも、誠に持って正論だ。司法に幻想を抱くものではないが、裁判所にこれだけ具体的かつ批判的に指摘されると、国側代理人も「敗訴」が脳裏によぎったに違いない。それ故、工事強行に躍起な防衛省を外し、官邸主導での電撃和解に至ったのだろう。

 和解成立から土日を挟んでわずか3日目の去る3月7日、国は和解条項第3項に基づき、沖縄県に対して地方自治法第245条の7に定める是正の指示を発出した。

 是正の指示が和解条項に明確に違反するとは言い切れないが、和解条項第8項の「原告(国)及び利害関係人(沖縄防衛局)と被告(沖縄県)は(中略)普天間飛行場の返還及び本件埋立事業に関する円満解決に向けた協議を行う」との主旨に違反するのは明らかだ。

 そもそも、和解成立後に「円満解決に向けた協議」は1度も開かれていないばかりか、その日程はおろか、「協議」の枠組みすら全く決まっていない。

 そのような状況下で、国は是正の指示に踏み切ったのだ。当然、沖縄県は不服とし、和解条項第3項の定めに従って1週間以内に国地方係争処理委員会に審査を申し出ることになる。その場合、同委員会の導く結論がどうであれ、国は辺野古新基地を諦めないし、沖縄県(翁長知事)の新基地阻止の姿勢も全く揺るがないだろう。したがって、審査申し出は、事実上の国と沖縄県との「新たな裁判闘争」の始まりとなる。

 安倍総理は、和解受諾を表明した記者会見の場で「辺野古が唯一の選択肢」と相も変わらず、寝ぼけたことを言っている。不誠実にも程がある。

 ただ、翁長知事も負けていない。3月8日の県議会本会議の場で、是正指示に踏み切った国を批判しつつ、3月4日の和解に拘束されるのは「埋め立て承認取り消しに伴う2訴訟」だと明言し、「オールジャパンで提言をした場合に米国も見る可能性があるとの話(和解条項)は『辺野古が唯一』ではないと読める」と応酬した。発言から翁長知事の断固たる信念と決意が感じ取れよう。

 だいたい、抑止力や地政学的理由を挙げては、ウチナーだけに日米安保や米軍基地の負担と犠牲を強要して恥じない、思考停止の安倍政権である。「辺野古が唯一」とのたまうのも、沖縄差別の基地押しつけしか頭にないからだ。

 私は、一昨日(3月8日)の安全保障委員会における中谷防衛大臣との和解に関する質疑応答(不誠実な答弁)を踏まえ、「裁判上の和解」による埋め立て「工事中断」にとどまらず、国をして埋め立て「工事断念」に追い込むまで、不屈の闘いを持続的・創造的に展開していかねばならない、との思いを強くした。

 安倍政権がアメリカに隷従し、沖縄を軍事植民地的に扱う姿勢を改め、沖縄差別を止めない限り、国と沖縄に「真の和解」はやってこない、と断言する。

 安倍総理よ、自民公明の巨大与党よ、「ウチナーンチュ ウセーテ ナイビランドー」(沖縄の人を蔑ろにしてはいけませんよ)

 嗚呼、国とウチナーの「真の和解」は遠い、遠い、はるかに遠い―。

 一昨日の晩は、寝床に入ってからダークダックスが歌う「銀色の道」の一節を思い出した。ダークダックスの「銀色の道」に準えれば、今現在、国と沖縄が歩んでいるのは「灰色の道」いや「泥沼の道」だ。

 悶々として、なかなか寝付けない中、辺野古新基地建設反対の闘いに勝利するまで、諦めずに闘う決意をさらに固めた。

(2016年3月10日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)

 

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