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憲法コラム

第186回(6月10日):照屋寛徳 議員

「安保法制」(戦争法案)は「違憲法制」だ

照屋寛徳

 周章狼狽という言葉がある。手元の広辞苑によると「大いにあわてふためくこと」とある。

 去る6月4日、衆議院の憲法審査会で与野党推薦3人の参考人(いずれも憲法学者)全員が、衆議院特別委員会で審議中の安保関連法案(いわゆる戦争法案)を「違憲」だと断じた。

 その論理展開と結論は、誠にもって論旨明快で、憲法学者としての良識と良心に根差した意見だ。私は、3人の参考人の意見陳述をこの上なく痛快な気分で聞いた。

 片や、政権与党は周章狼狽し、「安保法制」(戦争法案)を「違憲法制」と指摘された影響の“火消し”に躍起になっている。

 衆議院憲法審査会で証言した参考人は次の方々である。いずれも日本の憲法学者の重鎮だ。

  ▼長谷部恭男氏(早稲田大学法学学術院教授・自民、公明、次世代推薦=後に自民単独推薦と訂正発表)▼小林節氏(慶應大学名誉教授・弁護士・民主党推薦)▼笹田栄司氏(早稲田大学政治経済学術院教授・維新推薦)

 国会の各委員会における参考人選任は、与野党が各々の立場から指名するのが慣例である。

 自民党は、党推薦の長谷部参考人にまで安保関連法案を「違憲」と断じられたことに周章狼狽しているのだろう。安倍総理も然りだ。

 6月4日の衆議員憲法審査会速記録(議事速報)を取り寄せて精読した。その日の会議は「立憲主義、改正の限界及び制定経緯」並びに「違憲立法審査の在り方」についての調査が主目的で、3参考人の出席を得ての意見聴取となった。

 冒頭3人の参考人から各20分の意見陳述があり、委員からの質疑応答に移っている。

 参考人3人による安保関連法案「違憲」表明は、民主党の中川正春委員が「先生方は、今の安保法制、憲法違反だと思われますか」「先生方が裁判官となるんだったら、どのように判断されますか」等と質したのに答えたものである。

 3参考人の「違憲」表明(意見陳述)全文を紹介したいが、紙幅が限られている。ここでは6月5日付沖縄タイムス掲載の「参考人発言要旨」を引用することにする。(おそらく、共同通信の配信記事と思われる)

 ▼長谷部恭男参考人「集団的自衛権の行使が許されるとした点は憲法違反だ。従来の政府見解の基本的な論理の枠内では説明がつかない。法的な安定性を大きく揺るがす。どこまで武力行使が許されるのか不明確だ。他国軍への後方支援活動は戦闘地域と非戦闘地域の区別をなくし、現場の指揮官に判断が委ねられる。その結果(憲法が禁じる)外国の武力行使と一体化する恐れが極めて強い。国連平和維持活動(PKO)に参加する自衛隊の武器使用の範囲拡大は、必ずしも直ちに憲法に反するとは言えない」

 ▼小林節参考人「違憲だ。憲法9条は、海外で軍事活動する法的資格を与えていない。集団的自衛権は、仲間の国を助けるために海外へ戦争に行くことだ。後方支援は日本の特殊概念で、戦場に後ろから参戦するだけの話だ。兵たんなしに戦闘はできない。米国の部隊が最前線でドンパチやり、武器は日本が引き受ける、露骨な『戦争参加法案』だ。国会が多数決で法案を承認したら、国会が憲法を軽視し、立憲主義に反することになる」

 ▼笹田栄司参考人「内閣法制局は自民党(の歴代)政権と共に安保法制をずっとつくってきて、「ガラス細工」とは言わないが、ぎりぎりのところで(合憲性)を保っていると考えていた。今回は踏み越えてしまっており、違憲だ。政府が昨年に閣議決定した文章は、読めば読むほど、どうなるのだろうかとすっきり理解できなかった。国民の理解が高まるとは思えない。後方支援については小林名誉教授と同じく、大きな疑問を感じている」

 どうだろう。「参考人発言要旨」を熟読玩味すると、「安保法制」(戦争法案)が「違憲法制」であることが、よくよく理解できたのではないか。

 私は去る5月31日、安保法制についての10党責任者によるNHK「日曜討論」で「憲法9条はいかなる意味においても集団的自衛権を認めていない。『国際平和支援法案』と『平和安全法制整備法案』からなるいわゆる安保関連法案(戦争法案)は憲法違反であり、廃案にすべきだ」と主張した。

 ところで、6月4日の衆議院憲法審査会における3参考人の「違憲」指弾を受けた自民党の反応が信じられない。非常識かつ独裁的発想に基づく発言のオンパレードだ。

 菅官房長官は、6月4日の記者会見で「憲法解釈として法的安定性は確保されている」「違憲という指定は全くあたらない」などと反論し、法案審議に影響はないと強調した。

 船田元・自民党憲法審査会筆頭理事は「ちょっと予想を超えた。参考人の発言は一理あるが、現実政治はそれだけでは済まない」と釈明した。全く持って意味不明だ!

 二階俊博(自民党総務会長)は「(あくまで)参考意見で、大ごとに取り上げる必要はない」と開き直り、参考人の価値を下げようと必死だ。

 対する野党は、衆議院憲法審査会で、3参考人が他国を武力で守る集団的自衛権の行使容認は「違憲」と断じたことで、「法案の根幹が揺らいでいる」として廃案をめざして徹底追及する構えを示している。

 かかる「安保法制」(戦争法案)の「違憲」論が沸騰する政治状況の中、ドイツで開催された先進7か国首脳会議(G7サミット)に出席した安倍総理が、記者会見で悪意の誤認に基づき次のように語った。

 「安保関連法案における集団的自衛権の行使容認は、憲法の基本的論理は全く変わっていない」―と。

 安倍総理は、安保関連法案を合憲とする根拠について1959年の最高裁砂川判決を挙げている。聞いて呆れる三百代言だ。

 政府も6月9日、安保関連法案を「合憲」とする政府見解を発表した。政府見解は、砂川判決を恣意的に拡大解釈して「合憲」の根拠としている。砂川判決の曲解、わい曲だ。顔を洗って判決文を読み直せ、と叫びたい。

 私は、2014年5月14日付の憲法コラム「砂川事件最高裁判決と集団的自衛権」で「砂川事件最高裁判決は個別的自衛権を認めたもので、集団的自衛権は認めていない」と批判した。その考えは今でも変わらない。私だけではない、変人奇人の学者や政治家を除き、ほとんどの憲法学者が同意見である。

 安倍総理よ、自民党よ、往生際が悪いぞ。「安保法制」(戦争法案)は「違憲」だと素直に認めて、今すぐ撤回もしくは廃案にせよ!

 だいたいが、積極的平和主義という欺瞞に象徴されるように、やたら「平和」で修飾して誤魔化そうとする発想自体が姑息なのだ。「平和」の裏に隠された「戦争」に、国民はとっくに気づいていると知るべきだ。

(2015年6月10日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)

 

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