HOME特集>憲法コラム>177.照屋寛徳

特集

憲法コラム

第177回(10月27日):照屋寛徳 議員

憲法と日米安保条約に反する自衛隊の「アメリカの戦争」支援
―日米ガイドライン再改訂中間報告―

【写真】10月17日衆議院安保委員会

照屋寛徳・10月17日衆議院安保委員会

 去る10月8日、日米両政府は外務・防衛局長級協議を防衛省で開き、自衛隊と米軍の役割分担を定めた「日米防衛協力のための指針」(ガイドライン)再改訂に向けた中間報告をまとめ、同日中に発表した。

 ガイドラインとは、一般的に「指標」「指針」などと訳されている。よって、「日米防衛協力のための指針」は「日米ガイドライン」とも呼ばれ、憲法や日米安保条約の枠内における自衛隊と米軍の役割分担を定めたものである。

 このようにガイドラインは本来、日米当局が取り決めた日米安保条約(日米安保体制)の運用指針であるはずなのだが、最初の取り決め段階から憲法と日米安保条約を逸脱する危険性を内包していた。

 ガイドラインの歴史は後述するが、今度のガイドライン中間報告を読む限り、もはや憲法や日米安保条約を逸脱するどころか、明確に違反するものと強く批判せざるを得ない。

 ここで「日米ガイドライン」の変遷をたどってみよう。

 米ソ冷戦時代の1978年に最初のガイドラインが取り決められた。(今では旧ガイドラインと呼ばれている)

 旧ガイドラインは、米ソ冷戦時代を背景に、日米安保条約体制下での自衛隊と米軍の軍事的役割分担、日米共同作戦計画を定めたものであった。

 軍事評論家によると、旧ガイドラインは、アメリカでは“ウォー・マニュアル(戦争計画)”と呼ばれたようだが、「日本有事」の際の自衛隊と米軍の軍事的役割分担に関する合意のみで、海外における日米共同作戦は全く想定されていなかった。

 1997年、北朝鮮の核兵器保有疑惑問題などに端を発し、朝鮮半島有事(周辺事態)を想定した内容に対象を拡大すべく、現行の「新ガイドライン」が取り決められた。それに伴い、周辺事態法や船舶検査法など国内法が整備されていった。

 それでも、現行ガイドライン体制下に移行した当初は、憲法9条の平和主義や集団的自衛権の行使を禁じた政府解釈、「武器輸出三原則」などの国是に従い、朝鮮半島有事における「アメリカの戦争」支援の歯止めはかろうじて保たれていた。

 ところが、2001年9月11日の米同時多発テロ以降、米国の「テロとの戦い」が始まると、様相は一変する。歴代自民党政権によって、テロ対策特措法(2001年)、武力攻撃事態法(2003年)、国民保護法(2004年)、ACSA(日米物品役務相互提供協定)改定(2004年)など、一連のガイドライン関連法が相次いで成立し、わが国が「平和国家」から「戦争国家」へと暴走する“軍事法制”化が進められてきたことはご承知のとおりである。

 長年の友人であり、適切で鋭い軍事評論を展開するジャーナリストの前田哲男氏は当時、現行ガイドラインと一連の関連法制について次のように分析し、警鐘を乱打していた。

 「周辺事態法は、アメリカの戦争に協力する『戦争協力法』としての性格がある。その『戦争協力法』としての性格を、内閣の一存で国会の承認なしに発効できるという、一種の『戦争権限法』という側面をもっている。一番強く指摘したいことは、周辺事態法はその第9条において、地域と職場を戦争協力のために動員する一種の『国家総動員法』としての性格をもっているという側面である」―と。

 以上、概観したように1997年に日米両政府によって取り決められた現行ガイドラインでは、朝鮮半島有事を想定し、日本周辺で自衛隊が米軍を後方支援する場面を(1)平時(2)周辺事態(3)日本が武力攻撃された有事―の三段階に区分していた。

 だが、今度の日米ガイドライン再改訂の中間報告では、武力攻撃に至らない「グレーゾーン事態」を含め「平時から緊急事態までのいかなる段階においても、切れ目のない形で、日本の安全が損なわれることを防ぐための措置をとる」として、「周辺事態」の区分を削除した。これによって、米軍支援のための自衛隊派遣(派兵)の地理的制約はなくなる。

 また、中間報告では、自衛隊の米軍支援について「日米同盟のグローバルな性質を反映するため協力の範囲を拡大する」との方針が示されると同時に、見直し後の指針(最終報告)で「宇宙及びサイバー空間における協力を記述する」との決意が示されるなど、「地球の裏側」どころか宇宙空間まで際限なく広がる内容となっている。

 日米安保条約第5条は「各締約国は、日本国の施設の下にある領域における、いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくするものであることを認め、自国の憲法上の規定及び手続に従って共通の危機に対処するように行動する」、同第6条は「日本国の安全に寄与し、並びに極東における国際の平和及び安全の維持に寄与するため、アメリカ合衆国は、その陸軍、空軍及び海軍が日本国において施設及び区域を使用することを許される」と定めている。

 日米安保条約第6条第1項は、いわゆる「極東条項」と呼ばれ、歴代政権は“極東”について「大体フィリピン以北、日本及びその周辺」との統一見解を示し続けてきた。

 このように、日米安保条約体制の下では「いずれか一方に対する武力攻撃が、自国の平和及び安全を危うくする」事態を想定しているのであって、その適用範囲にも地理的制約がある。にもかかわらず、「グローバルな平和と安全のための協力(日米共同対処)」を謳うガイドライン中間報告は、日米安保条約が規定する地理的枠組みをないがしろにし、政策指針がその根拠となる条約を超越したものとなっている。

 日米両政府は今度のガイドライン中間報告に基づく「最終報告」を年内に発出するという。(来年4月以降に見送り、との一部報道もある)

 わが国の安全保障の根幹部分にかかわる問題だというのに、国内法を整備するどころか、その大枠すら国権の最高機関たる国会に示さず、安倍政権はガイドライン中間報告を発表してしまった。その手法は、去る7月1日に閣議決定のみで集団的自衛権行使容認を決めたのと同じで、立憲主義と憲法9条の平和主義を冒涜し、破壊する暴挙である。

 私は10月12日、各党の外交・安全保障部門責任者出席のNHK「日曜討論」で、今度のガイドライン中間報告によって「自衛隊と米軍の一体化・融合化が一層進み、自衛隊は米軍の傭兵と化す」と厳しく批判した。その内容や決め方においても「対米合意を優先し、国会論戦もなく決めてしまうのは安倍内閣の驕り、民主主義の全否定だ」と指弾した。

 結論を急ぐと、ガイドライン中間報告は、憲法と日米安保条約に反する「アメリカの戦争」支援を自衛隊が約束したものである。

 かかる危険で許しがたいことが、安倍総理の「積極的平和主義」の下で、着々と進んでいる。断じて認められない。絶対に許してはならない。

(2014年10月27日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)

 

HOME特集>憲法コラム>176.照屋寛徳