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憲法コラム

第176回(10月14日):照屋寛徳 議員

惜しくもノーベル平和賞受賞ならず―「憲法9条を保持する日本国民」

【写真】会見で「憲法9条を保持している日本国民」ノミネートの意義を語る照屋議員

何度も沖縄を訪れてくれた、土井さんとのスナップ写真

【写真】マララさん、サティヤルティさんのノーベル平和賞受賞と憲法9条の健闘を報じる10月10日付各紙

何度も沖縄を訪れてくれた、土井さんとのスナップ写真

 ノルウェーのノーベル賞委員会は10月10日、2014年のノーベル平和賞をパキスタン人の女子学生マララ・ユスフザイさん(17歳・英国在住)とインド人のカイラシュ・サティヤルティさん(60歳)の二人に授与すると発表した。

 お二人の栄誉ある受賞を讃え、心から敬意と祝意を申し上げるものである。

 正直なところ、受賞決定時までサティヤルティさんの名前も活動内容も知らなかった。一方、マララさんについては2012年10月9日、スクールバスで帰宅中にイスラム過激派武装勢力のタリバンに頭部を銃撃されたこと、移送先の英中部バーミンガム市の病院で治療を受けて、奇跡的に一命を取りとめ、回復したことを知っていた。

 事件当時、マララさんがパキスタンで女性や子どもの教育を受ける権利を繰り返し主張したことが、女子教育を敵視するタリバンによる銃撃の原因だと知って、大きなショックを受けたことを覚えている。

 マララさんは、タリバンの銃撃に屈することなく、女性や子どもへの教育を敵視する暴力に言葉の力で立ち向かい、闘い続けた。その不屈の勇気は国際社会で高く賞賛され、昨年もノーベル賞候補にノミネートされていた。

 そのマララさんは「すべての子どもが教育を受けられる姿を見るのが私の夢」と、しばしば語っていたようだ。

 だが、国連によると、戦争や貧困、児童労働などが理由で初等教育を受けられない子どもは、2011年現在で5,700万人、そのうち少女は3,200万人に上るようだ。(10月11日付朝日新聞)

 サティヤルティさんも、1980年から児童労働問題の活動に身を投じ、子どもたちを過酷な労働や搾取から救出する活動を続けてこられた。これまでに労働現場や人身売買などから救出した子どもの数は、実に8万人を超えているらしい。

 10月11日付の朝刊各紙で、サティヤルティさんが自身の活動の原点について、小学校に通い始めた6歳の頃、教室から外を見ると、同じ年恰好なのに靴磨きをして働く子を目撃。「先生になぜと尋ねると、貧しいからだと。子供から子供時代を奪う残酷さをそのとき感じた」―と語ったことを知って胸が痛んだ。

 思い起こせば、沖縄がアメリカ軍支配下にあった時代、わが友人の中にも学校には通っているが、放課後に米兵相手の靴磨きをしている者が複数名いた。9人兄弟のヒンスーハルサー(貧農)の家庭に育った私も、靴磨きのアルバイトこそしなかったものの、家畜の世話や農作業の手伝いなどが日課で、「児童労働」に近い状態の毎日だった。

 とはいえ、当時はそれが当たり前だったのだが・・・。それでも、悲惨な沖縄戦で灰塵に帰したオキナワは、多くの者が貧困に苦しみ、子どもの教育環境は劣悪だった―と記憶している。

 国際労働機関(ILO)の調査によると、2012年時点で国際基準に満たない児童労働に関わる5〜17歳の子どもは約1億6,800万人に上る。その約4割をアジアが占め、多くが縫製産業での労働や、家事労働などを強制されているようだ。(10月11日付東京新聞)

 さて、今日の憲法コラムの表題に話題を移そう。

 10月10日の夕刻、私は2014年度ノーベル平和賞の発表を、固唾を呑んで注目していた。

 その理由は、市民運動の「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会が40万人以上の署名を集め、ノーベル平和賞委員会に「憲法9条を保持している日本国民」を推薦し、ノミネート(推薦受理)されていたからである。しかも、国際平和研究所(オスロ)のハルプビケン所長らが、「憲法9条―」を受賞候補の最右翼として予測している、との直前報道にも接していたので、一層期待は高まっていた。

 各マスコミが報じているように、「憲法9条にノーベル平和賞を」との署名サイトを立ち上げ、活動を始めたのは神奈川県座間市在住の2児の母親、鷹巣直美さんである。

 実は、私たち国会議員にも推薦賛同の呼びかけがあり、私も推薦人に名を連ねることを快諾していた。さらに、「憲法9条を保持している日本国民」がノーベル平和賞にノミネートされたことを受け、去る5月17日には衆参60人の国会議員有志でノーベル平和賞委員会宛に同賞授与の陳情書を提出していたのである。

 そのような経緯もあり、当日は陳情有志の国会議員で院内に集い、発表の瞬間を共にした。

 受賞発表を待つ会場に行く直前、秘書からその日の朝の閣議前に安倍総理や石破地方創生担当大臣が憲法9条の受賞を話題にした、とのネット記事を見せられた。

 記事は「10日朝の閣議前、石破地方創生担当大臣が隣席の安倍総理に『9条が受賞したら誰がもらうのか』と語りかけ、総理も『結構、政治的なんだよね』と応じた」―との内容だった。

 秘書が手渡した記事を一読して、なんてケツの穴が小さい総理と大臣だろうと思った。戦争放棄、戦力の不保持、交戦権の否認とともに、恒久的な非武装平和主義を謳った憲法9条は、世界に誇れるわが国の宝であり、国際社会の規範となるべきものである。それなのに・・・。(呆れて絶句)

 それとも、安倍総理と石破大臣の閣議前の会話は、憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認の閣議決定と日米ガイドラインの再改定で、米軍と自衛隊の一体化・融合化による世界規模での米軍支援を拡大し、憲法9条破壊の「壊憲」を目論む安倍内閣にとって、「憲法9条ノーベル平和賞受賞」が邪魔になるとでも考えたうえでの本音の発露なのだろうか。いや、きっとそうであるに違いない。

 発表の結果、「憲法9条を保持している日本国民」のノーベル平和賞受賞はかなわなかった。残念だ。

 だが、今回国際社会に向けて憲法9条の存在とその理念が発信され、大きく注目されたことは有意義であった。「憲法9条にノーベル平和賞を」実行委員会や発案者の鷹巣直美さんも受賞発表後、「来年以降もノミネートされ、受賞するまで草の根運動を続ける」と語っている。大変心強く思う。

 私自身も「憲法9条にノーベル平和賞を」と訴える市民らの草の根運動を、これからも一政治家として応援していきたい。

 同時に今、安倍政権が「壊憲」によって立憲主義と平和主義をかなぐり捨て、憲法9条を放棄し、わが国を平和国家から戦争国家へと転換させんと暴走し続けていることに政治生命を賭けて異議を唱え、多くの国民と連帯して闘っていく決意を新たにした。そのために、国会内における闘いの基盤構築が強く求められているものと自覚する。

 マララさんの不屈の勇気と武力に立ち向かう言葉の力、サティヤルティさんの児童労働や人身売買から子どもたちを守る運動に学び、日本国憲法の三大原理を実現することこそが政治家の果たすべき使命だと深く感じ入り、実践することを心に固く誓った。

 共に世界の恒久平和を祈り、子どもの尊厳確立を願いつつ―。

 

(2014年10月14日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)

 

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