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憲法コラム

第168回(8月1日):照屋寛徳 議員

米軍政と日本政府に対する沖縄の島ぐるみ闘争

【写真】「島ぐるみ会議」結成を報じる7月29日付琉球新報(右)と沖縄タイムス

「島ぐるみ会議」結成を報じる7月29日付琉球新報(右)と沖縄タイムス

 〇〇ぐるみと表現する場合の「ぐるみ」とは、ある語の下に添えて、「ひっくるめて」「残らず」などの意を表す、と手元の広辞苑は説明する。

 語感として「家族ぐるみ」「地域ぐるみ」などの表現には、温かいイメージを抱く。逆に、「組織ぐるみ」(犯罪)などの表現には、負のイメージがある。

 沖縄に生きて「島ぐるみ」という表現(言葉)に接すると、かつてはアメリカ(米軍)の圧政に対するウチナーンチュの批判と抵抗の強固な意思の表出として想起される。具体的には、1950年代に沖縄全域で起こった「島ぐるみ」闘争である。

 去る7月27日、「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」が、主催者の予想をはるかに超える2,075人の県民の参加を得て結成された。

 1950年代の「島ぐるみ」闘争は、絶対権力者たるアメリカ(米軍)による「軍用地問題」をめぐる土地闘争が、米軍政全般への大衆運動・抵抗闘争に発展したものであった。

 対する今日の「島ぐるみ会議」結成とこれからの闘いは、在日米軍基地に起因する犠牲と負担を沖縄だけに強要し、沖縄への構造的差別を続ける日本政府に対するウチナーンチュによる自己決定権の主張、尊厳回復の決起への烽火である。

 「沖縄『建白書』を実現し未来を拓く島ぐるみ会議」の結成大会では、次のようなアピール(宣言文)が満場一致で採択された。

 アピールは冒頭で、2013年1月28日、県内41市町村すべての首長、議会議長、県議会議長らが署名し、沖縄の総意としてオスプレイ配備撤回と米軍普天間基地の閉鎖、県内移設断念を求めて、極めて重要な歴史的意義をもつ「建白書」が安倍総理に手交された、と書き起こしている。

 そのうえで、アピールは次のように続く。引用が長くなるが、最後まで読んでいただきたい。

 「去る1月19日、米軍普天間基地の辺野古移設の可否を最大の争点とした名護市長選挙において、『移設ノー』を、名護市民は明確に示しました。にもかかわらず、日本政府は辺野古への建設を強行しようとしています。このことは名護市民と沖縄県民の民意と尊厳を踏みにじり、社会正義と民主主義の基本をも否定するものです」

 「沖縄の米軍基地は、米軍政下において沖縄の人々の人権を侵害し人道的な配慮を無視して建設されたものです。私たちは1950年代、基本的権利を守るため島ぐるみで米軍支配に対して闘いを始めました。今なお国土面積の0.6%の沖縄に、米軍施設の74%が集中する実態は、社会的正義にもとる軍事植民地状態の継続です。沖縄の人々が、人として生きることすら拒まれる基本的権利の侵害であり、経済的、社会的及び文化的発展の自由を否定する構造的差別です」

 「私たちには、私たちの土地、海、空を守り活かす権利があります。このような権利は、地球上のすべての人々が共有するものであり、人類が長年の努力から勝ち得てきた普遍的な権利です。国連の委員会では、沖縄のことについて沖縄の人々が決める権利があるとし、日本政府に対して、基地を集中させる沖縄への差別と権利侵害を解消していくよう求めています」

 「基地に支配され続ける沖縄の未来を、私たちは拒絶します。そのような未来を子どもたちに残してはなりません。私たちには、子どもたちに希望のある沖縄の未来を引き継いでいく責務があり、沖縄らしい優しい社会を自らの手で自由につくっていく権利があります。2013年沖縄『建白書』の実現を求め、辺野古強行を止めさせ、未来を私たちのものとするために、沖縄の心をひとつにし、島ぐるみの再結集を、全沖縄県民に呼びかけます」―。

 ここで1950年代のアメリカ圧制に対する「島ぐるみ」闘争を概観することにしよう。

 1954年3月、米国民政府(USCAR)が軍用地料の一括払い方式を発表した。

 これに対し同年4月30日、立法院(現沖縄県議会)は「軍用地処理に関する要請決議」を全会一致で採択し、一括払い方針に反対した。

 立法院は、次のような「軍用地4原則」(「土地を守る4原則」ともいう)を要請したのである。

1.アメリカ合衆国政府による土地の買上げ・永久使用・地料の一括払いは絶対におこなわないこと(一括払い反対)

2.現在使用中の土地については適正にして完全な補償がなされること、使用料の決定は、住民の合理的算定に基づく要求額に基づいてなされ、かつ評価および支払いは一年ごとになされなければならないこと(適正補償)

3.アメリカ合衆国軍隊が加えた一切の損害については、住民の要求する適正賠償額をすみやかに支払うこと(損害賠償)

4.現在アメリカ合衆国軍隊の占有する土地で不要の土地は、早急に開放し、かつ新たな土地の収用は絶対に避けること(新規接収反対)―と。

 この「軍用地4原則」に対し1956年6月、米国下院軍事委員会特別分科委員会(委員長メルヴィン・プライス)調査団による調査結果が、12項目の勧告(プライス勧告)として下院軍事委員会(委員長カール・ヴィンソン)に報告された。

 プライス勧告は、地料算定について若干の譲歩があったものの、一括払い反対、新規接収反対など「軍用地4原則」の沖縄側要求を拒否したのである。

 その結果、沖縄全域で「島ぐるみ」の闘いが燎原の火の如く燃え広がった。

 さて、今日の「島ぐるみ会議」がオスプレイ配備撤回、辺野古新基地建設反対のための「島ぐるみ」闘争の再結集と決起を呼びかける思想的基盤を憲法との関わりで考察してみる。

 結成大会アピールにあるように、その根底にあるのは憲法前文第二段落の「平和のうちに生存する権利」であり、憲法第11条の基本的人権、第13条の生命・自由及び幸福追求権などである。

 同時に、私の政治信念でもある「ウチナーの未来はウチナーンチュが決める」との自己決定権に基づく、日米両政府への正当な主張と抵抗だ。

 当面の「島ぐるみ」闘争は、辺野古新基地建設を強行する国家(政府)ぐるみの暴政に対する非暴力の抵抗だ。そして11月の県知事選挙は、金力・権力に屈してウチナーンチュの魂を売りとばした公約裏切り集団と、ウチナーンチュのアイデンティティーを大事にする人々との一大政治決戦となる。

(2014年8月1日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)

 

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