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憲法コラム

第167回(7月29日):照屋寛徳 議員

「徴兵制みたいだ」「赤紙がきた」は単なる杞憂か

【写真】「沖縄県内の高3生に送付された自衛隊募集案内のリーフレット」

沖縄県内の高3生に送付された自衛隊募集案内のリーフレット

 去る7月1日、安倍内閣は憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認(解釈改憲)を閣議決定した。

 奇しくもその日は、来春高卒予定者への求人広報活動解禁日と重なった。自衛隊(防衛省)は、その日に合わせ「自衛官募集」の案内封書(ダイレクトメール・DM)を全国の高校3年生の自宅宛に送付したのである。

 自衛隊(防衛省)によると毎年、高卒予定者への求人広報活動解禁日から『自衛官募集』のDMを送っており、「ことしは、閣議決定と募集広報の解禁日がたまたま重なった。むしろ、いい宣伝になった」と説明しているようだ。(7月14日付沖縄タイムス)

 してやったり、とほくそ笑む自衛隊(防衛省)幹部らの顔が目に浮かぶ。

 ところが、インターネット上では全国各地の高校3年生から「徴兵制みたいだ」「なんだか怖い」「すごいタイミング・・・」「赤紙がきた」などと不安や戸惑いのコメントが書き込まれたようだ。(7月4日付東京新聞、同12日付琉球新報)

 前記・琉球新報は、沖縄本島南部の高校3年生の男子が「まさか自分にこんなものが届くとは思わなかった」と困惑の声を挙げ、DMを受け取った別の男子高校生は「僕は戦争には行きたくない。今から自分の夢に向かって頑張りたいのに、こんな文書が来ると将来が不安で、嫌な気分になる」と声を落とした―と報じている。

 早速、国会内にある防衛省政府控室(国会連絡室)を通して、沖縄県内の高校3年生宛に送付された「自衛官募集」のDMを入手し、読んでみた。

 DMには、写真やイラストを多用したカラフルな「自衛官等募集案内」と題する自衛隊沖縄地方協力本部作成のリーフレットが同封されていた。リーフレットには、次のようなフレーズが大きく刷り込まれている。

 「そこにしかない仕事が君を待っている」「あなたの特技・適性を活かす場所がココにある」―と。

 「自衛官等募集案内」リーフレットは、高校卒業(予定)の方にお勧めのコースとして、それぞれの謳い文句で次のように紹介する。

 ・防衛大学校学生「誇りある組織のリーダーになる!」・防衛医科大学校医学科学生「生命をつなぐ平和と医療の先駆者!」・防衛医科大学校看護科学生「誇りを持てる看護師に!」・一般曹候補生「部隊の中核となる自衛官を目指す!」・自衛官候補生「技術と体力を一心に磨く任期制自衛官!」・航空学生「大空で活躍する夢を最年少で実現できる!」―などと魅力ある「職業」「職場」としての自衛官、自衛隊であることを強調している。

 他に、中学卒業(予定)の方にお勧め、大学卒業(予定)の方にお勧め、社会人と学生の方にお勧め―の3コースの案内もリーフレットには記載されている。

 私は、職業としての「自衛官」、職場としての「自衛隊」を全否定するつもりは毛頭ない。職業選択の自由は、国民が保障された基本的人権であり、経済的自由権のひとつでもある。

 日本国憲法第22条1項は「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と定めている。

 憲法第22条1項は、職業を選択する自由と選択した職業を遂行する自由を謳っており、職業を遂行する自由は、営業の自由とも呼ばれている。

 さて、「自衛官等募集案内」のリーフレットが、魅力ある職業(自衛官)と職場(自衛隊)であることを前面に打ち出しているのに、DMを受け取った高校3年生が困惑し、不安を抱いたのは何故だろうか。

 おそらく、安倍内閣が閣議決定した憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認(解釈改憲)が大きく影響していることは間違いあるまい。

 きっと高校3年生の諸君も、専守防衛の自衛隊が変質し、「他国が攻撃された場合」も海外に出動すること、しかも「非戦闘地域」に限らず、「戦闘地域」でも武力行使=戦争をしなければならなくなったことを知ったのであろう。

 そのうえで、すでに自民党が「日本国憲法改正草案」で「国防軍」の創設と軍事法廷を準備していること、天皇を元首とする「戦争ができる普通の国」を目指していることを見抜いているのであろう。

 7月14日付沖縄タイムスに、與那覇里子記者の署名入りで、「軍隊化案じ自衛官辞職」「戦争で命落とすかもしれない」などの見出しを付した記事が掲載されている。

 記事は、県内在住の20代男性が、憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認の是非の議論が沸騰する中で、今年3月に自衛隊を辞職した理由を次のように語った、と報じている。

 20代の元自衛官は、18歳で入隊している。「衣食住を保証するという趣旨が書かれた自衛官募集のポスターを見かけた」ことがきっかけで、「経済的に苦しい家族を支えるため」に入隊したようだ。最近、昇任試験にも合格したばかりであったという。

 20代の元自衛官は「自衛官は、死ぬことは考えていない。自衛官も一生活者。先輩に定年まで国に面倒を見てもらえるよと言われたが、政権や世界情勢によって自衛隊の立ち位置は変わる。10年後、どうなっているのか分からない」と打ち明ける。

 辞めた理由については、「自衛官は人を殺すことを想定していなかった。だから仕事としてやれたが、今後は戦争で命を落とすかもしれない」と語っている。

 20代の元自衛官は、集団的自衛権の行使容認を「戦争への参加宣言」とみており、「今後は相手を撃つことになる。人殺しは嫌だ」と述べ、辞職を選択した思いを正直に告白している。

 安倍総理をはじめ、巨大与党や野党内自民党補完勢力の「戦争を知らない大人(政治家)」たち」には、集団的自衛権の行使によって自衛官が「人を殺し、殺される」というリアルな感覚がまるで欠如しているのだ。

 私は、政治家の最大にして最重要な使命は「二度と戦争をしない、させない」ことだと思っている。

「自衛官等募集案内」のリーフレットには、自衛官がいじめ自殺に追いやられていること、教育訓練中の自衛官が消防員の3倍、警察官の7倍もの割合で死んでいること、防衛大学校で今現在、上級生の悪質ないじめで退学に追いやられようとしている学生がいること、退職した自衛官に警務隊が根拠なき不当な嫌疑をかけ、人権侵害の捜査がなされていること―などは露ほども記載がない。嗚呼・・・。

(2014年7月29日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)

 

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