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憲法コラム

第155回(5月8日):照屋寛徳 議員

自治体による集会の後援拒否と憲法を考える息苦しさ

【画像】憲法記念日に合わせ各紙も「後援拒否」を大きく取り上げた。5月4日付毎日新聞=左、5月3日付東京新聞=右

憲法記念日に合わせ各紙も「後援拒否」を大きく取り上げた。5月4日付毎日新聞=左、5月3日付東京新聞=右

 日本国憲法施行から67年目、沖縄への適用から42年目の憲法記念日が終わった。今年の憲法記念日は、「改憲記念日」に変わるのも近い、との強い危機感を抱いて迎えたのは、私一人ではあるまい。

 毎日新聞が憲法記念日前の4月19、20日の両日に実施したRDS法電話世論調査によると、憲法9条を「改正すべきだと思わない」との回答は51%と半数を超え、「思う」の36%を15ポイント上回った。昨年4月は同じ質問に「思う」46%、「思わない」37%だった。安倍首相が憲法解釈変更で集団的自衛権行使を認めようとしていることも影響したとみられる(5月3日付毎日新聞)。

 同世論調査では、「政府は武器輸出を原則禁止した武器輸出三原則に代えて、一定の条件のもとで武器輸出を認める新しい三原則を策定しました。あなたはこの見直しに賛成ですか、反対ですか。」との問いに対し、「賛成」27%、「反対」が62%と圧倒的多数である。

 琉球新報社が憲法記念日に合わせて4月26、27日の両日に実施した電話世論調査の詳報もある。

 憲法9条については、「憲法9条を変えずに堅持すべきだ」が60.9%、「戦争放棄の1項は維持して、戦力不保持の2項は変えるべきだ」が27.5%、「憲法9条を変えて軍事力を持つべきだ」が7.0%、「分からない・無回答」が4.6%である。

 憲法9条を変えずに堅持すべき、との意見は全国に比べ、悲惨な沖縄戦を体験し、今なお米軍基地の犠牲に苦しむ沖縄の方がはるかに大きいようだ。

 「集団的自衛権の行使を可能とするため、憲法解釈を変更すべきだと思いますか」との問いに対して、「思う」30.8%、「思わない」59.5%、「その他」0.4%、「分からない・無回答」が9.3%である(5月3日付琉球新報)。

 安倍政権は、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認(解釈改憲)を閣議決定で行ない、実質的な9条改憲を実現せんと躍起になっている。だが、安倍総理の改憲への暴走と国民世論との間には大きな乖離があるように思う。両紙の世論調査の結果からも、改憲による戦争ができる普通の国づくりへの危機感の高まりを窺い知ることができる。だからこそ、立憲主義と法治主義に反し、憲法の三大原理(国民主権、平和主義、基本的人権尊重主義)を破壊せんとする安倍流改憲策動には、断固として反対し闘わねばならない。

 一方で最近全国的に顕著になってきたのが、安倍政権の意向を忖度(そんたく)した自治体等による、護憲や憲法改正是非を問う講演集会への後援拒否や会場貸し出し拒否等である。

 例えば、神戸市の市民団体「神戸憲法集会実行委員会」は、約50年にわたって憲法記念日に集会を主催してきた。実行委は1988年、2003年にも神戸市に集会の後援を依頼し、何の問題もなく許可が下りていた。

 ところが、今年の神戸女学院大名誉教授内田樹氏の「憲法施行67周年、今あらためて憲法を考える」との講演集会に対しては、「市の後援名義使用は不承諾」「憲法自体が政治的な要素」「政治的中立性を損なう可能性がある」などとの理由で後援を拒否した(サンデー毎日、5月11・18日合併号)。

 千葉県白井市は、護憲団体の講演会を後援したところ、保守系市議から批判され、後援や共催を認めない対象を「政治的・宗教的目的を有する行事」から「政治的・宗教的色彩を有する行事」へと規定を改めた。「目的」が「色彩」に変わることによって、自由裁量的解釈による後援拒否、会場貸し出し拒否が拡大するであろう。政治的中立と自主規制による、憲法を考えること自体の息苦しさ到来ではないか。

 長野県千曲市も、護憲団体が3月に集会を開いた際、「政治的意見の分かれる話題で、行政の中立性が保てない恐れがある」として昨年まで続けた後援を拒否したようだ。

 最近、全国各地で「憲法」「原発」「特定秘密保護法」など国民の議論の分かれる問題を取り上げたイベントなどに対し、宮城県、岡山県、福岡市など14自治体が後援を拒否。東京都や京都市など5自治体は主催者に内容の変更を迫った。奈良市は昨年7月、「自民党の憲法改正案を斬る」と題されたイベントへの会場貸し出しを拒否している(前記サンデー毎日)。

 高知市の土佐電鉄では、「高知県平和運動センター」が市民からのカンパ70万〜80万円を集め、「守ろう9条・25条を!!」などと掲げた「憲法9条号」を走らせていたが、インターネット上の「反日極左電車」と非難する書き込みや電話・メールでの抗議を受け、“出発進行”が中止に追い込まれたとのことである。全く驚き、呆れる。

 前記神戸市の集会で講演予定だった内田樹氏は一連の自治体などの動きについて、前記サンデー毎日の取材に対し、次のように語っている。

 「憲法順守義務があるはずの地方公務員が、改憲を目指す安倍首相の気分を忖度している。ファナチックなまでに右翼的な思想を持つ団体は昔からいたが、目立つ存在ではなかった。しかし、第2次安倍政権の発足以降、ヘイトスピーチを叫ぶデモなど一般の人々の目に見える形での活動が盛んになり、力を増してきている。こうした動きを神戸市は無視できなくなり、彼らの意に沿わない我々の集会の後援について、“自主規制”したのだろう。この息苦しさは、神戸市だけの問題ではないでしょうね」――と。

 日本国憲法99条は「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負う」

 憲法21条は「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する」と規定する。

 憲法尊重擁護義務を負う公務員、自治体が時の権力者の意向を忖度し、民主主義の根本原理たる憲法21条の精神に反する、政治的中立を装った自主規制という形で憲法を考えること自体の息苦しさを国民に強制することは、断じて許せない。

(2014年5月8日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)

 

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