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憲法コラム

第152回(4月10日):照屋寛徳 議員

「政局的平和主義」に基づく武器輸出拡大

【写真】『平成25年版 防衛白書』より

「政局的平和主義」に基づく武器輸出拡大

 安倍内閣は、去る4月1日、武器輸出三原則に代わる「防衛装備移転三原則」を閣議決定した。

 武器輸出三原則が策定されたのは、佐藤内閣時代の1967年である。従って、47年ぶりに武器や関連技術の海外提供(輸出)を「原則禁止」してきた武器輸出三原則が撤廃され、防衛装備移転三原則では一定の条件を満たせば武器輸出が「原則解禁」(容認)へと転換されたのである。嗚呼、愕然とす。

 4月1日の閣議決定では、武器輸出三原則から防衛装備移転三原則への転換の理由として次のように敷衍して述べている。

 「我が国は、今後の安全保障環境の下で、平和国家としての歩みを引き続き堅持し、また、国際政治経済の主要プレーヤーとして、国際協調主義に基づく積極的平和主義の立場から、我が国の安全及びアジア太平洋地域の平和と安定を実現しつつ、国際社会の平和と安定及び繁栄の確保にこれまで以上に積極的に寄与していくこととしている」――と。

 今回の憲法コラムは、安倍総理の口癖になっている「積極的平和主義」と歯止めなき武器輸出拡大政策を批判する目的で書き出した。

 書き始めた時に、定期購読している雑誌『世界』の5月号が郵送されてきた。5月号の特集は「集団的自衛権を問う」である。

 特集の中で法学博士の水島朝穂氏(早稲田大学法学学術院教授)が「安保法制懇の『政局的平和主義』」──政府解釈への『反逆』」という題の論文を発表している。

 私は、以前から水島教授を、信頼し、尊敬している一人だと自認してきた。著書も多く読んだし、講演も聞いた。著書・論文の中で「寸鉄人を刺す」見事な造語にも感心してきた。例えば、歴代政府の沖縄政策との関連で法治主義を放置主義または法恥主義と批判する造語などである。

 雑誌『世界』5月号の論文でも、安倍総理のインチキ「積極的平和主義」を「政局的平和主義」と一刀両断している。

 「政局的平和主義」とは、言い得て妙だ。水島教授の「寸鉄人を刺す」造語精神は健在と見た。

 水島教授は、前記論文の中で「『積極的平和主義』をおおらかに語りながら、この国の安全保障の枠組みを、時の政権の道具のように軽やかに改変していく安倍式『政局的平和主義』に対峙するためには、還暦を迎えた政府解釈との関係での内在的検討が求められる」として、歴代内閣法制局長官の国会答弁引用によって、集団的自衛権行使が憲法上認められない理由や砂川事件最高裁判決のいう「固有の自衛権」などについて鋭い分析と検証をしている。ぜひ、一読をすすめたい。

 さて、本題の「防衛装備移転三原則」と歯止めなき武器輸出拡大=「死の商人」への道に話を戻すことにする。

 ここで武器輸出三原則について、概観する。

 武器輸出三原則とは、次の三つの場合には武器輸出を認めないという政策である。

(1) 共産圏向けの場合

(2) 国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合

(3) 国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合

 1967年、佐藤内閣で策定された武器輸出三原則は、1976年の三木内閣で「三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、『武器』の輸出を慎むものとする」とされ、「非核三原則」と並んで、平和憲法を持つ平和国家日本の国是になった(社民党ホームページ掲載の私のコラム「武器輸出三原則の見直しは『死の商人』への道」をご覧下さい)。

 防衛装備移転三原則を定めた4月1日の閣議決定で、その政策決定目的について「(武器輸出三原則は)我が国が平和国家としての道を歩む中で一定の役割を果たしてきたが、一方で、共産圏諸国向けの場合は武器の輸出は認めないとするなど時代にそぐわないものとなっていた。また、武器輸出三原則の対象地域以外の地域についても武器の輸出を慎むものとした結果、実質的には全ての地域に対して輸出を認めないこととなったため、政府は、これまで個別の必要性に応じて例外化措置を重ねてきた」などと述べている。

 防衛装備移転三原則は、武器輸出の「原則禁止」から「原則解禁」への転換であり、平和国家の理念の大転換である。しかも、かくも重大な国家方針(理念)の転換が国会における十分な議論を尽くさず、国民への説明も不十分なまま閣議のみで決定されてしまったのだ。

 防衛装備移転三原則は、新たな三原則を次のように定める。

(1) 国連安全保障理事会の決議に違反する国や、紛争当事国には輸出しない

(2) 輸出を決める場合を限定し、厳格審査する

(3) 輸出は目的外使用や第三国移転について適正管理が確保される場合に限る――と(4月16日付夕刊各紙)。

 武器輸出三原則で禁輸先としていた「共産圏」や紛争の「おそれのある国」は消えてしまった。

 これでは、全世界的規模で際限なく日本製の武器や関連技術が輸出されることになる。文字どおり「死の商人」への堂々たる出発(いでたち)だ。どうやら、安倍総理は日本製の武器を世界中に売り込むつもりのようだ。

 防衛装備移転三原則による輸出の基準は「平和貢献や国際協力の積極的な推進に資する場合」と「わが国の安全保障に資する場合」である。閣議決定は「我が国の安全保障上及ぼす懸念の程度を厳格に審査」するとするが、いずれの要件も都合よく解釈できる抽象的な表現で、歯止めにはなり得ない。拡大解釈の恐れがある。

 ましてや、安倍総理は「国際協調主義に基づく積極的平和主義」の旗を掲げ、憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認(解釈改憲)でもって、アメリカと一緒に「地球の裏側」まで自衛隊(改憲後は国防軍)を送り、戦争ができる「普通の国」にせんと躍起になっているから要注意である。

 私は、平和主義の理念を放棄し、「死の商人」と化す防衛装備移転三原則には反対だ。許せない。

 安倍流「政局的平和主義」に騙されてはいけない。

(2014年4月10日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)

 

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