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憲法コラム

第148回(3月1日):照屋寛徳 議員

憲法の平和主義に反する武器輸出新原則

【写真】『平成25年版 防衛白書』より
http://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2013/pc/2013/html/n3344000.html

暴走する安倍総理(2月21日付朝日新聞=右)を痛烈に批判する阪田元内閣法制局長官(2月21日付東京新聞=左上)と野中元自民党幹事長(2月20日付東京新聞=左下)

 武器輸出三原則と非核三原則(核を持たず、作らず、持ち込ませず)は、憲法の理念である平和主義に基づく、平和国家日本の国是である。

 私は、先に本欄のリレーコラムで、「武器輸出三原則の見直しは『死の商人』への道」と題する一文を書いた(2013年11月9日)。

 憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認(解釈改憲)へと暴走する安倍内閣は、遂に武器や関連技術の海外提供を原則として禁じた武器輸出三原則に代わる武器輸出新原則の制定へと大きく踏み出した。名実ともに「死の商人」としての出発(いでたち)である。

 「死の商人」とは、営利目的で敵味方を問わず兵器を販売する人物・組織への蔑称である。安倍内閣が加わろうとする「死の商人」の商い高は、並みの商売による商い高ではない。

 ストックホルム国際平和研究所のレポートによると、2010年に軍需産業企業トップ100の世界販売額は32兆4,769億円(4,111億ドル)に達し、2002年比で60%増加している。大変に残念で悲しむべき現実だが、武器の売買が多国間で活発になり、この10年間で軍需産業は順調に成長した市場のひとつになっている。

 武器輸出三原則とは、1967年4月21日、衆議院決算委員会において佐藤栄作総理(当時)が、次のような地域・国への「武器」の輸出を認めない、と答弁したことを機に確立したと言われている。

1. 共産圏諸国向けの場合

2. 国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合

3. 国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合

 1976年2月27日、三木武夫総理(同時)は、「武器輸出に関する政府統一見解」を表明した(衆議院予算委員会答弁)。

 その見解において、次の項目などが武器輸出三原則に追加された。

「三原則対象地域以外の地域については、憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする。」

 このように、佐藤内閣で始まった武器輸出三原則は、三木内閣で一層内容的に深まり、国是としての位置づけも明確になった。

 一方で、その後の中曽根内閣、小泉内閣、野田内閣で武器輸出三原則は大きく緩和され、当初の理念からその内容は変容し、形骸化された。

 そして、この度、安倍内閣は武器や関連技術の海外提供を原則として禁じた武器輸出三原則に代わる新たな原則案をまとめた。武器輸出を原則的に禁止するとしたこれまでの政策を転換し、事実上、武器輸出を全面的に容認する。紛争当事国への武器提供も可能で、紛争を助長しかねない。憲法の平和主義の理念はさらに骨抜きにされようとしている(2月25日付東京新聞)。

 安倍内閣の武器輸出新原則案は、次のとおりである。

1. 国際的な平和や安全の維持を妨げることが明らかな場合は輸出しない

2. 輸出を認める場合を限定し、厳格審査する

3. 目的外使用や第三国移転について適正管理が確保される場合に限る

 歴代の内閣は、武器輸出や武器の他国との共同開発には慎重であったが、安倍内閣は非常に積極的だ。安倍内閣の武器輸出新原則によれば、政府が都合よく解釈すれば武器の輸出が際限なく拡大し、歯止めが利かなくなる恐れがある。

 安倍内閣は、自公間の協議を加速し、3月中にも武器輸出新原則を閣議決定する運びだ、と各マスコミは一斉に報道している。

 昨年12月、安倍内閣で初めて纏められた国家安全保障戦略でも、武器輸出と他国との武器共同開発に積極的に取り組む方針が決定された。経団連の防衛生産委員会も2月12日、「防衛装備品は国産品の輸出も認める」と自民党に提言している。「死の商人」としてのカネ儲けのため、政軍産複合体の結束したことを示している。憲法理念の平和主義に基づく重大な武器輸出三原則の転換を、十分な国会審議も尽くさず、短期間で閣議決定していいはずはない。いくら巨大与党の「一強多弱」の国会とはいえ、そのような暴走を許してはいけない。

 小野寺防衛大臣は、2月23日、岐阜市内で武器輸出新原則について講演し、「日本がミサイルなど色々な武器を死の商人のように売っていくわけではない」(朝日新聞デジタル)と強調したようだが、ミサイル以外の武器や戦闘機の部品の輸出の限度なら「死の商人」ではない、とでも言いたげだ。

 最近、安倍総理はしきりに積極的平和主義を言う。私は、再三再四安倍総理の積極的平和主義は、言葉によるまやかしだ、と批判してきた。先に言及した安倍内閣の国家安全保障戦略にも「積極的平和主義の観点から、防衛装備品の活用等による平和貢献・国際協力に一層積極的に関与し、防衛装備品等の共同開発・生産を推進する」と記されている。

 安倍内閣は、積極的平和主義の錦の御旗を掲げ、憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認(解釈改憲)によって「地球の裏側」まで自衛隊(自民党憲法改正草案では国防軍)を派遣しようとしている。

 その一方、武器輸出新原則で際限なく武器や装備品の輸出制限を緩和し、世界中の戦争・紛争の現場で、日本製エンジン搭載の戦闘機や銃弾・砲弾が飛び交う事態を作ろうとしているのだ。

 共同通信社が去る22日、23日の両日実施した全国電話世論調査によると、武器や関連技術の輸出を禁ずる武器輸出三原則の緩和に「反対」が66.8%、「賛成」25.7%である。多くの国民は、安倍内閣の武器輸出新原則を信任していない証拠だ。

 安倍内閣が進めようとする武器輸出新原則は、戦後、憲法の平和主義の理念の下で軍需産業による「死の商人」にならずに、経済発展を遂げてきたことに反する政策であり、断じて許せない。それとも、武器輸出新原則による利益追求、防衛・軍需産業の保護もアベノミクスなの?安倍総理。

(2014年3月1日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)

 

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