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第139回(12月26日):照屋寛徳 議員

「積極的平和主義」の名による「武器輸出三原則」の骨抜き

【写真】防衛省編集協力情報誌『MAMOR』(マモル)2014年2月号(2013年12月21日発売)より。

防衛省編集協力情報誌『MAMOR』

 去る12月17日の国家安全保障会議(日本版NSC)と閣議で決定された初の「国家安全保障戦略」には、安倍総理が信条とする「積極的平和主義」の名による平和国家日本の国是である武器輸出三原則の見直しと新原則の策定方針も明記されている。

 その武器輸出三原則の形骸化、骨抜きを銃弾のスピードで実行する事態が現実化した。

 政府は、12月23日の国家安全保障会議と持ち回り閣議で、アフリカ東部・南スーダンで国連平和維持活動(PKO)を実施中の陸上自衛隊が保有する小銃弾1万発を、同国でPKO活動中の韓国軍に国連を介して無償譲渡することを決定し、即時に実行された。

 武器輸出三原則と非核三原則は、平和主義の憲法9条を持つ平和国家日本の国是として、歴代内閣によって守られてきた。もちろん、制定当時からすると形骸化が少しずつ進行している。その経緯については、11月9日付の私の憲法コラム「武器輸出三原則の見直しは『死の商人』への道」で書いた通りである。

 今回の陸上自衛隊からの国連を介した韓国軍への小銃弾1万発の譲渡は、PKO活動中の日本から他国への初めての武器・弾薬の譲渡である。

 国連総会、国連安全保障理事会の決議にもとづく平和維持活動(PKO)や人道的な国際救護活動を行うことを目的にした「国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律」(PKO協力法)が公布・施行されたのは1992年6月である。

 「PKO協力法」第25条は、「政府は、国際連合平和維持活動、人道的な国際救援活動又は国際的な選挙監視活動に協力するため適当と認めるときは、物資協力を行うことができる。」と定めている。「PKO協力法」施行後の政府は「物資協力の品目」について、テントや毛布・医薬品といった支援物資に限定し、国連などから武器・弾薬の提供を求められても応じないとの立場を一貫してきた。

 橋下内閣当時の村岡兼造官房長官は、衆議院安全保障委員会で「武器・弾薬の供与を要請されることを想定していない」と言い切っている。このように政府が一貫して表明した「人の殺傷、物の破壊を目的とする武器・弾薬の供与を要請されることを想定していない」との方針を共有し、理解する中で国民の多くもわが国のPKO活動を支持したものと考える。

 今度の小銃弾1万発譲渡について、安倍総理は12月24日の自民党役員会で「積極的平和主義にのっとって行った。万が一断ったら国際社会から批判される」と正当性を主張。菅官房長官も記者会見で「人道性が極めて高く緊急事態であることから判断した」と強調している(12月25日付琉球新報)。

 ところが、今度の小銃弾提供は、武器輸出三原則に基づき「武器・弾薬は提供しない」との国会答弁を変更し、重要な政策変更をするにもかかわらず、国家安全保障会議と持ち回り閣議だけで決定してしまったのである。

 私は、すみやかに衆参両院の安全保障委員会などの閉会中審査を実施し、「緊急性」や「人道性」の有無、小銃弾譲渡要請のルートなどについて議論すべきだ、と考える。国会審議をやらないで、議事録作成の義務すらない国家安全保障会議や持ち回り閣議決定だけで重要な安全保障政策を一方的に変更することは許されない。政府は、国民と国会に対し、従来の解釈や国会答弁の変更について、整合性のある、納得のできる説明責任を果たすべきである。

 すでに、今度の小銃弾1万発譲渡をめぐり、日本政府は「緊急事態」、韓国政府は「予備のため」と主張し、双方間で微妙に言い分が食い違っている。

 PKO協力法では、日本がPKOに参加するにあたっての基本方針は定まっている。いわゆる「PKO参加5原則」とよばれており、その内容は次にとおりである。

1. 紛争当事者の間で停戦合意が成立していること。

2. 当該平和維持隊が活動する地域の属する国を含む紛争当事者が当該平和維持隊の活動及び当該平和維持隊への我が国の参加に同意していること。

3. 当該平和維持隊が特定の紛争当事者に偏ることなく、中立的立場を厳守すること。

4. 上記の基本方針のいずれかが満たされない状況が生じた場合には、我が国から参加した部隊は、撤収することが出来ること。

5. 武器の使用は、要員の生命等の防護のために必要な最小限のものに限られること。

 「PKO参加5原則」で明定するように、PKO要員の生命・身体を守るための武器使用は許されるが、相手が国や国に準ずる組織であってPKOの任務妨害を排除するための武器使用は憲法違反であり許されない。

 南スーダン共和国がスーダン共和国から独立したのは2011年7月である。「世界で最も新しい国」と言われるらしいが、石油資源は豊富で、人口は1千万人余。だが、宗教問題・クーデター未遂なども複雑にからみ、政府軍(大統領派)と反政府軍(反乱軍)の紛争は内戦状態にある。数万人が国内難民となり、4万5千人が国連に保護を求めていると言われている。

 私は、報道で知る南スーダンの情勢では、派遣された自衛隊が派遣目的の道路整備などの施設工作活動は無理で、「PKO参加5原則」を遵守することも不可能なほど現地情勢は内戦化しており、一日も早く撤退すべきだ、と考える。

 また、今度報道された1万発の小銃弾は、韓国隊員と避難民の生命・身体の保護だけに使われるのか、提供を受けた韓国軍が武力行使に使用しないか、国連の管理は徹底するか、など十分な担保は何にもない。

 安倍総理の掲げる「積極的平和主義」は、PKO活動の無原則な拡大、集団的自衛権の行使容認、改憲による憲法9条の平和主義破壊を見据えたもので、大変に危険で独善的な信条である。「積極的平和主義」の名による「武器輸出三原則」の骨抜き、「PKO活動5原則」の形骸化は、平和国家として取るべき態度ではない。非軍事、人道・民生支援の国際貢献に徹するべきだ。

 

(2013年12月26日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


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