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憲法コラム

第138回(12月20日):照屋寛徳 議員

安倍内閣の憲法改悪の「三本の矢」

【写真】上=12月12日付東京新聞「こちら特報部」、下=12月17日付朝日新聞(左)・東京新聞(右)夕刊1面

個人より国家優先、国民軽視と国家重視の国家観を斬る

 師走の「東京都知事狂想曲」があっけなく終わった。「東京都知事狂想曲」は、東京都知事が大臣に匹敵する、いや大臣以上の権力を持っているが故に、「政界狂想曲」でもある。

 12月19日、突如猪瀬東京都知事が辞職を表明した。例の医療法人徳洲会からの5,000万円受け取り問題での引責辞職である。同問題が発覚して以来の猪瀬都知事の都議会や記者会見における弁明には、一貫性がなく二転三転し、見苦しく、聞き苦しい自己弁解に終始しており、到底都民や国民が納得し得るものではなかった。

 私は、猪瀬都知事の5,000万円受領問題発覚直後から、一刻も早く責任を取り、潔く辞職すべきだ、とブログで発信してきた。従って、辞職は遅きに失したとはいえ、当然だと思っている。猪瀬都知事は、辞職表明記者会見で、「生活の不安から(5,000万円)借りた。借りるべきではなかった。政治家としてアマチュアだった」と述べている。全くお笑いで弁明になってない。詭弁そのものだ。猪瀬都知事の「個人的借入れだった」との弁解そのものが疑わしいのだ。作家から副知事を経て知事に転じた者が「政治家としてアマチュアだった」と言い逃れるのもの見苦しい。医療法人徳洲会からの5,000万円受け取りは、プロの政治家でも許されない所業なのだ、と思い知るべきだ。

 本件は、辞職でもって一件落着、幕引きにしてはいけない。すでに市民団体が東京地検特捜部に公職選挙法、政治資金規正法違反容疑等で告発しているようだが、贈収賄の疑いもあり、東京地検特捜部で徹底的に捜査を尽くすべきである。

 さて、「東京都知事狂想曲」が奏でられている最中に安倍内閣の憲法改悪「三本の矢」の一本が放たれた。安倍内閣の経済政策であるアベノミクスの「三本の矢」については、今更ながら詳細な説明はいるまい。@大胆な金融政策、A機動的な財政政策、B民間投資を喚起する成長戦略が相互の補強し合う関係にあると喧伝される「三本の矢」のことである。

 安倍内閣には、アベノミクスの「三本の矢」と同様に、憲法改悪の「三本の矢」もあると考えている。改憲のための「三本の毒矢」というべきかも知れない。

 安倍内閣の憲法改悪の「三本の矢」のうちの一本目が国家安全保障会議創設法(日本版NSC法)と特定秘密保護法である。「日本版NSC法」は、外交・防衛の政策樹立に関する官邸機能強化を立法目的にしているが、実質的な「戦争準備司令塔法」である。一方の秘密保護法は、日本国憲法の三大原理(国民主権、平和主義、基本的人権尊重主義)を破壊し、日米軍事一体化に基づき、「地球の裏側」まで自衛隊(改憲後は国防軍)を派遣し、アメリカと一緒に戦争をするための「戦争準備法」である。特定秘密保護法は、戦前の軍機保護法、治安維持法と本質を同じくする軍事法制である。しかも、同法は民主主義の根幹である国民の「知る権利」と報道の自由を厳罰でもって規制し、憲法の三権分立を形骸化せしめる立法改憲の「毒矢」である。

 去る12月17日、国家安全保障会議(日本版NSC)と閣議で、国家安全保障戦略(NSS)と新たな防衛計画の大綱(防衛大綱)と中期防衛力整備計画(中期防)が決定された。

 安倍内閣によって初めて策定された国家安全保障戦略(NSS)、防衛大綱、中期防は、日米軍事一体化の一層の促進と自衛隊の増強をはかる「軍事力重視」の内容となっている。

 安倍内閣の国家安全保障戦略(NSS)は、憲法9条に反する「国際協調主義に基づく積極的平和主義」というまやかしの理念に基づき集団的自衛権行使容認を目指している。そればかりか、今回の国家安全保障戦略(NSS)には、「我が国と郷土を愛する心を養う」ことが国家目標として盛り込まれた。愛国心の押しつけと教育の国家統制を進め、戦前・戦中のように国家主義的発想で国民の自由と権利を奪っていく目論見だ。同戦略により、国是である武器輸出三原則も緩和されることになる。

 安倍内閣は、2014年の通常国会で憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認を表明せんとしている。その布石としての内閣法制局長官の容認派への交代も済んでいる。

 これら一連の政治的動きが、安倍内閣の憲法改悪「三本の矢」の二本目であり、解釈改憲の「毒矢」である。

 安倍内閣の憲法改悪の「三本の矢」の三本目も既に発射準備されている。第二次安倍内閣は、政権発足直後に「96条先行改憲」を打ち上げたが、失敗した。改憲派の憲法学者からも総すかんを食らった。だが、安倍総理は祖父伝来の自主憲法制定(実質は、大日本国憲法=明治憲法への回帰)の夢を諦めてはいない。立法改憲と解釈改憲を繰り返しながら、明文改憲という三本目の「毒矢」を用意周到に放つつもりなのだ。

 2014年の通常国会には、「国家安全保障基本法」の制定、共謀罪の拡大立法も予想される。安倍内閣には「改憲工程表」があり、憲法改悪の「三本の矢」も「改憲工程表」に沿って発射される。もっとも、立法改憲や解釈改憲の「毒矢」が「改憲工程表」通りに発射され、その効能を発揮すると三本目の明文改憲という「毒矢」の発射を待つまでもなく、日本国憲法は死に絶え、自民党「日本国憲法改正草案」に生まれ変わるのかもしれない。

 その瞬間、日本国憲法の理念と原理による平和国家から戦争国家へとこの国のかたちが変わってしまうことになる。改憲ならぬ“壊憲”の実現する日だ。そのような日を迎えたくない。それだけに安倍内閣の憲法改悪「三本の矢」を発射させない対抗策を緊急かつ多様に創り出していきたいものだ。

 

(2013年12月20日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


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