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憲法コラム

第134回(12月4日):照屋寛徳 議員

陸上自衛隊秘密情報部隊の暴走と文民統制

防衛白書

 ときに軍隊は、好き勝手に行動し、暴走する。かかる本質を持つ武力集団たる軍隊を政治が統制する仕組みを文民統制(シビリアン・コントロール)と呼んでいる。

 文民統制(シビリアン・コントロール)とは、文民の政治家が軍隊を統制するという政軍関係における基本方針であり、民主主義国家においては、政治が軍事に優先する、すなわち軍人は文民(政治家)に服従することを原則としているのだ。

 私は、米軍普天間飛行場の「県外移設」の可能性を探る為に九州を中心に在日米軍基地や自衛隊基地を数多く視察をした。その折、自衛隊基地の司令官らと話すと、異口同音に「自分達は(在沖米海兵隊の移駐と共同使用を)政治家が決めたら、それに従う」との返事だった。まさに、文民統制である。ところが、現実には政治家の思考停止と不作為で沖縄に米軍基地の負担と犠牲は強要され続けている。

 さて、わが国では先の大戦の反省から、戦後は文民の首相や防衛大臣が自衛隊を指揮する文民統制を敷いていることは論を待たない。

 ところが、2013年11月28日付共同通信の配信による新聞各紙の報道で、民主主義国家の根幹を脅かす陸上自衛隊の秘密情報部隊「陸上幕僚監部運用支援・情報部別班」(別班)の存在とその活動内容が報ぜられ、強い衝撃を受けた。

 新聞各紙の「別班」報道は、陸上自衛隊トップの陸上幕僚長経験者と防衛省で軍事情報の収集や分析を統括する情報本部長経験者らが「別班」の存在と海外における情報活動を共同通信記者に証言したもので、極めて信憑性の高い内容だと信じて疑わない。

 「別班」は、冷戦時代から首相や防衛大臣に知らせず、独断でロシア、中国、韓国、東欧などに拠点を設け、身分を偽装した自衛官に情報活動をさせていたようだ。

 自衛隊最高指揮官の首相や防衛大臣の指揮、監督を受けず、国会のチェックもなく武力組織である自衛隊が海外で活動するのは、文民統制(シビリアン・コントロール)を逸脱する(2013年11月28日付東京新聞夕刊)。まさにその通りだと思う。

 「別班」は、1961年に「陸幕第2部特別勤務班」として極秘裏に創設されたらしく、「DIT」(防衛情報チームの略)とも呼ばれ、数十人いるメンバー全員が陸上自衛隊小平学校の「心理戦防護課程」の修了者で編成されている。同課程は諜報、防諜活動を教育、訓練した旧陸軍中野学校の後継とされている。

 早速、防衛省の教育組織図を調べてみると、小平学校(小平市在)が確認できた。

 「別班」の本部は東京・市ヶ谷の防衛省地下に置かれており、民間のビルの一室を借りた“アジト”が東京都内に数ヵ所あり、組織を秘匿するため、渋谷、池袋、新宿…などを転々とするようだ。班員は数人ずつのグループで活動し、他のグループのメンバーとは本部でたまに会うだけで、本名さえ知らないらしい。別班員になると、外部との接触は禁止され、「身分証明書は自宅に保管せよ」「年賀状も出すな」と指示されるというから、秘密組織そのものだ。在日朝鮮人を買収し、スパイに仕立てて北朝鮮に送り込んだこともあるらしい(前記東京新聞記事)。

 11月28日の新聞報道を受けて、菅官房長官や小野寺防衛大臣は、「別班」の存在を否定している。「別班」の情報活動は、首相や防衛大臣にも知らされずに独断でなされていたようなので、政府がその存在を公式に認めることはあるまい。

 日本国憲法第66条2項は「内閣総理大臣その他の国務大臣は、文民でなければならない。」と定めている。「文民」の意味については諸説あるが、「過去に職業軍人の経歴をもつ者あるいは自衛官の職にある者以外の者」と解釈する見解が多数説である。

 ところで、自民党「日本国憲法改正草案」第9条の2第2項は「国防軍は、前項の規定による任務を遂行する際は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。」と「国防軍」創設に伴う文民統制を一応は規定している。だが、国会の承認以外に「その他の統制」を認めており、法律を作って首相単独で判断することを可能としたり、国会承認を事後とすることを可能としたりする等文民統制は不徹底であり、戦前の軍部暴走の悲劇を招きかねない改憲案になっている。

 私は文民統制の徹底は大事なことだと考える。同時に、最近戦争を知らない世代の政治家が増え、過度にナショナリズムを煽り、平和外交を忘れて近隣諸国に強硬姿勢一点張りで危機を煽り立てている現実を見るにつけ、文民統制されているから安心とは思えない。文民統制されない軍隊の暴走と同じ位、文民(政治家)の暴走も常に監視せねばならない。

 本題に戻ろう。「日本版NSC法」が成立し、特定秘密保護法案も巨大与党の国家運営ルールを無視する暴挙でもって成立すると、「別班」の存在と活動を明らかにした今回の共同通信の取材も不可能となるだろう。国民の「知る権利」と報道の自由は奪われ、わが国の民主主義は死に、秘密国家、情報統制国家となり、文民統制も形骸化するに違いない。

 インテリジェンス(情報活動)に詳しい元外務省主任分析官・作家の佐藤優氏は、「別班」報道を受けて次のように語っている。

 「独善的な国家観を持った分子が、別班の名の下に『私的インテリジェンス』を行って、国家権力を簒奪(さんだつ)しているにすぎない。このような事態は、文明的な民主主義国では考えられない。まさに日本のインテリジェンスの恥である。」

 「別班のような国家権力を簒奪した機関を野放しにしておくことは、民主主義の自殺行為だ。安倍晋三首相の政治主導で、徹底した真相究明、責任者の処罰を行ったうえで、再発防止措置を取る必要がある」――と(11月29日付琉球新報)。

 

(2013年12月4日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


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