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憲法コラム

第132回(11月27日):照屋寛徳 議員

「一票の格差」と憲法の投票価値の平等

照屋寛徳

 2013年(平成25)11月20日最高裁判所大法廷は、2012年(平成24)12月16日施行の衆議院総選挙(以下、本件選挙という)で、選挙人数が最も少ない高知県第3区と選挙人数が最も多い千葉県第4区の「一票の格差」が最大2.425倍生じていたことに憲法違反と選挙の無効が争われていた裁判で、「違憲状態」と選挙有効の判決を言い渡した。

 本件選挙当時、高知県第3区と比べて一票の格差が2倍以上となっている選挙区は全国で72選挙区にのぼっていた。

 このように「一票の格差」が著しい選挙区割りの下で施行された本件選挙に対しては、本件区割規定が憲法に違反するとして各選挙区における選挙を無効とすることを求める選挙無効裁判が8高等裁判所、6高等裁判所支部に提起され、平成25年3月6日から同年4月11日までの間に、16件の判決が言い渡された。そのうち、「違憲状態」2件、「違憲・有効」12件、「違憲・無効」2件の高等裁判所判決が言い渡されていたのである。

 11月20日の最高裁判決言渡し当日、私は一人の衆議院議員として、また、一人の弁護士としての感覚で、最低でも「違憲・有効」判決、場合によっては「違憲・無効」の判決さえ出るものと信じて疑わなかった。結果は、「違憲状態・有効」の判決だった。

 11月20日の「違憲状態・有効」判決は、一票の格差是正について、国会の立法裁量を幅広く認める判決だ、と言わざるを得ない。正直、国会議員の多くは違憲判決が回避されたことにホッとしている向きがあるが極めて論外だ。むしろ、2009年(平成21)の衆議院選挙と連続して「違憲状態」とされたことを重く真摯に受け止めるべきである。

 早速、11月20日の最高裁大法廷判決文を入手して、私なりに眼光紙背に徹して読んでみた。最高裁判決は、一票の格差是正にあたり、「0増5減」の法改正など、「本件選挙前の時点における是正の実現に向けた一定の前進と評価し得る法改正の成立に至っていたものということができる」と判示し、国会の立法裁量権を幅広く認めている。一方で、平成21年施行の総選挙に関し、平成23年3月23日最高裁大法廷判決で示した憲法の投票価値の平等の要請に鑑み、できるだけ速やかに廃止すべきとした1人別枠方式について、「1人別枠方式の構造的な問題が最終的に解決されているとはいえない」としている。

 結論として最高裁判決は、「本件選挙時において、本件区割規定の定める本件区割りは、前回の平成21年選挙時と同様に憲法の投票価値の平等の要求に反する状態にあったものではあるが、憲法上要求される合理的期間内における是正がされなかったははいえず、本件区割規定が憲法14条1項等の憲法の規定に違反するものということはできない。」と言い渡したのである。尚、三人の裁判官は「違憲」とする少数意見を書いている。

 日本国憲法は投票価値の平等を求めており、投票価値の平等は、最も重要な国民の基本的人権である。具体的に憲法の条文で検証してみよう。

 憲法前文前段は「日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し」とある。最高裁から「違憲状態」とされた選挙制度で選ばれた「違憲状態」の国会議員では、「正当に選挙された国会における代表者」だ、と胸を張ることはできまい。前記前文以外にも、憲法第13条、同14条、同15条、同43条2項、同44条但し書き等の条文が投票価値の平等を求める根拠だと考える。よって、一票の価値の不平等は明らかに憲法に違反するのである。

 さて、言われている「一票の格差」と投票価値の不平等を生んでいる元凶は、現行の小選挙区比例代表並立制である。現行選挙制度導入後の各総選挙で判明しているのは、各党の獲得票と議席占有率の著しい乖離であり、選挙結果は死票が増え、国会と民意のねじれを生み、国民の多様な価値観を切り捨てていることである。

 従って、「一票の格差」の是正と選挙制度は一体として改革し、憲法が求める投票価値の平等実現の為に国会は最大の努力を尽くすべきである。最高裁の「違憲状態」判決に安堵することがあってはならない。これ以上「一票の格差」を放置すると法の支配の根幹が揺らぐことになる。唯一の立法府たる国会の怠慢と不作為は、もうこれ以上許されないと覚悟すべきである。

 尚、「一票の格差」是正と選挙制度改革との関連で、来年の消費税導入も絡んで、国会議員も「身を切る覚悟」をすべきだ、との論調から国会議員の定数削減の議論が噴出している。私は、定数削減をすれば問題が解決するとは思わない。私や社民党は「国会議員の定数については、立法機能の在り方や国会が果たすべき行政監視の役割、民主主義を保障する有権者の代表などの観点から、適正な議席数を確保すべきであり、財政事情、ましてや増税と絡めて議論すべき性格のものではない。よって、定数削減、特に民意を議席数に反映しやすい比例代表の削減には強く反対する。」との立場である。先進主要国の中で日本の国会議員数は決して多くない。例えば、日本は人口約17万7,000人に1人、英国は約4万4,000人、イタリア約6万4,000人、フランス約6万8,000人、ドイツ約11万8,000人、ロシア約23万2,000人、アメリカ約57万8,000人に1人の国会議員である(衆議院調査局「選挙制度関係資料集 平成25年版」)。

 真摯に検証されなければいけないのは、かつての中選挙区制を廃止して現行制度を導入した中心人物の誰しもが、「小選挙区導入によって国会議員が劣化した」と厳しく指摘し、後悔していることである。そのうえ、「違憲状態」の選挙で圧勝し、衆参ねじれを解消した安倍政権が暴走し、「違憲の疑い」の強い悪法の最たるものである特定秘密保護法案を強行採決し、憲法改悪を目論む政治の動きに主権者たる多くの国民は、構造的懐疑と怒りを持っていることだろう。嗚呼ー。

(2013年11月27日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


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