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憲法コラム

第131回(11月21日):照屋寛徳 議員

官僚と大臣らの手前勝手な「特定秘密」の指定

【写真】『日米地位協定の考え方』と、政府答弁書を報じる2004年1月30日付「琉球新報」(上)、「沖縄タイムス」(下)

照屋寛徳

 日本国憲法は、平和主義を一つの原理としており、平和憲法と呼ばれている。

 平和憲法の前文二段において「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。」と謳っている。平和的生存権と称され、自国民だけでなく、全世界の国民が平和的生存権を有し、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」と高らかに宣言している。

 さらに、憲法第9条1項は、「国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」とし、同条2項は「陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。」と規定している。

 私は、平和憲法を持つわが国に厳罰をもって守らなければならない軍事秘密は本来的に存在せず、存在してはならないと考える。仮に、外交・防衛上の秘密が認められるとしても、その要件は厳しく限定され厳格に運用されねばならない、と考えるものである。

 ところが、安倍内閣が今臨時国会での成立を目論む特定秘密保護法案は、「行政機関の長」らが恣意的に「特定秘密」を指定し、指定の適否をチェックするシステムもなく、指定期間も5年更新で、永遠に続く。国に都合の悪い情報は、その漏洩や情報へのアクセスを厳罰をもって取り締まる悪法の最たるものである。

 特定秘密保護法案が成立すると、憲法の三大原理(平和主義、国民主権主義、基本的人権尊重主義)はぶち壊され、民主主義の根幹である国民の「知る権利」と報道・取材の自由は失われてしまう。わが国は、情報統制国家、秘密国家となり、戦前の暗黒社会に逆戻りする事になるだろう。決して、大袈裟に言ってるのではない。

 特定秘密保護法案第3条は、次のように定めている。

 「行政機関の長は、当該行政機関の所掌事務に係る別表に掲げる事項に関する情報であって、公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるものを特定秘密として指定するものとする。」

 同条の別表には、23項目の事項が掲げられ、23項目全てが抽象的で曖昧な定義であり、しかも、4つの各ジャンルに「その他重要な情報」という規定になっている。これでは、行政機関たる官僚機構とその長らによって、どんな情報でも恣意的に「特定秘密」に指定されてしまう。

 特定秘密保護法案第3条は、「公になっていないもの」との要件を定めるが、現在でも「公になっているもの」「公開されているもの」すら「秘密」だとして、その存在を否定し、公開しないのが、歴代政権の態度である。私が関与した二例を挙げ、検証してみよう。

 1.「日米地位協定の考え方」問題

 琉球新報社は、日米地位協定に関する政府の基本解釈となる機密文書「日米地位協定の考え方」を入手し、2004年1月1日付朝刊で詳細に報道した。同文書はその存在が国会で指摘され、追及されていたが、外務省は文書の存在そのものを否定し続けていた。

 琉球新報は、2004年1月5日付朝刊で「検証 地位協定 不平等の源流」の連載を開始した。不平等・不公平な日米地位協定によって、人間としての尊厳を奪われた日常を強いられている県民にとって、その内容は衝撃的なものばかりであった。

 この琉球新報の大スクープ報道に対し、外務省は「国家機密の開示は、米国との信頼関係に重大な影響を与え、外交上大きな障害になる」との非公式の抗議と「情報漏洩者」と疑われた者への調査・恫喝をくり返した。

 琉球新報は、連載報道の過程で元外務省高官の証言から「日米地位協定の考え方 増補版」の存在を突きとめ、「増補版」を入手し、2004年12月8日、『検証 地位協定・日米不平等の源流』『外務省機密文書 日米地位協定の考え方 増補版』を出版した(琉球新報社編・高文研発行)。

 私は、2004年1月20日、「『秘 無期限』と記された『日米地位協定の考え方』と題する政府文書の存在と公開に関する質問主意書」を提出した。私の質問主意書に対する答弁書で、政府は「日米地位協定の考え方 増補版」の保有は認め、「日米地位協定の考え方」の保有を否定し、政府の文書かどうかについても確認できないとする迷答弁をしたのである。

 私に対する政府答弁書は、当時地元二紙やテレビで大々的に報道され、それを契機にして県や市町村から関係文書の公開要求と日米地位協定改正論議が沸騰した。だが、同年2月12日の予算委員会で、私が「増補版」の公表を求めたのに対し、川口外務大臣(当時)は拒否をしたのである。

2.法務省の閲覧禁止要求

 2008年5月、法務省が1972年3月に作成した「合衆国軍隊構成員等に対する刑事裁判関係実務資料」と題する白表紙本が国会図書館に所蔵されていることを知り、すぐに秘書を同行し、閲覧謄写に行った。同文書は、日米地位協定上公務外の米軍人・軍属の裁判権の取り扱いに関する検察官用の参考書である。当時、古書店にも出回っており、国会図書館も古書店から入手したという。私が、閲覧した数日後に法務省は、「非公開文書で、公共の安全と秩序維持や米国との信頼関係に支障を及ぼす恐れがある」と主張し、国会図書館に閲覧禁止要請をやり、国会図書館はすぐに閲覧禁止と蔵書目録からの削除を決めた。

 これら二例からわかるように、特定秘密保護法案第3条における「公になっていないもの」どころか、今現在「公になっているもの」すら秘密とする官僚・「行政機関の長」に権力濫用を許す特定秘密保護法案は小手先の修正でなく廃案にすべきだ。

 

(2013年11月21日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


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