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憲法コラム

第130回(11月15日):照屋寛徳 議員

三権分立と国会権能否定の特定秘密保護法案

【写真】「秘密保護法に異議あり!超党派の議員のリレートーク」=11月13日夕、有楽町マリオン前

照屋寛徳

 憲法の三大原理(国民主権、平和主義、基本的人権尊重主義)を否定する悪法の最たるものというべき特定秘密保護法案は、目下「衆議院国家安全保障特別委員会」で審議の真っ最中である。同法案には多岐に及ぶ問題点があり、拙速にならず、慎重かつ丁寧な審議が尽くされるべきである。熟議の国会だ。

 ところが、自民党、公明党の与党は、来週中の衆議院における可決・通過を目論見、すでに水面下で日本維新の会など野党の一部政党間との修正協議を開始している。密室での修正協議ではなく、公開の「特別委員会」で堂々と審議すべきだ。

 特定秘密保護法案については、既に憲法法学者、日弁連、ジャーナリストなど各界から反対声明が発出され、マスコミの各種世論調査でも国民の多くが反対している。マスコミで特定秘密保護法案の持つ危険性、問題点が詳細に報道されるようになって、広範な国民の反対運動も急速に高まっている。しかも、「特別委員会」審議の過程で、森雅子担当大臣が法案の欠陥を認め、答弁も二転三転、右往左往している。

 私は、特定秘密保護法案は、修正でもダメ、きっぱりと廃案にすべきと考える。

 今回は、特定秘密保護法案と国会・国会議員の関わりを中心に考察してみた。

 ご承知のとおり、日本国憲法は三権分立を定めている。近代国家の憲法は、権利宣言と統治機構の二つの部分から構成されていることは公知の事実だろう。

 私の知るところでは、三権分立はフランスの啓蒙思想家であるシャルル・ド・モンテスキューが『法の精神』と題する本で「権力を分割しない統治では、政治の自由が保障されない。」として、「司法権、立法権、行政権を独立させなければならない」と述べた事に始まるようだ。中学・高校生時代の社会科の授業でそのように教わった記憶がある。

 三権分立について、芦部信喜著、高橋和之補訂の『憲法』(第五版)は、次のように記述している。

 「統治機構の基本原理は国民主権と権力分立である。権力分立は、国家権力が単一の国家機関に集中すると、権力が乱用され、国民の権利・自由が侵されるおそれがあるので、国家の諸作用を性質に応じて立法・司法・行政というように『区別』し、それを異なる機関に担当させるよう『分離』し、相互に『抑制と均衡』を保たせる制度であり、そのねらいは、国民の権利・自由を守ることにある。権力分立がすぐれて『自由主義的な政治組織の原理である』と言われるのは、そのためである」。

 日本国憲法では、国会が立法権を持ち、内閣が行政権を持ち、裁判所が司法権を持って、三つの独立した機関が相互に抑制し合い、バランスを保つことにより、権力の濫用を防ぎ、国民の権利と自由を保障する「三権分立」の原則を定めているのである。

 日本国憲法の統治機構の三権分立の原則に照らし、特定秘密保護法案が成立すると、国会の権能と国会議員の役割は、どうなるのか。

 私は、恐らく国会は戦前の翼賛議会となり果て、国会審議は形骸化し、国会の権能は弱体化するのではないか、と危惧している。

 国会は、憲法上、@国民の代表機関、A国権の最高機関、B唯一の立法機関、という三つの地位を有している。具体的に見よう。

 憲法第41条は「国会は、国権の最高機関であつて、国の唯一の立法機関である。」

 憲法第43条は「両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。」――とある。

 また、憲法第50条では、議員の不逮捕特権、同51条では、議員の発言・表決の無責任を定めている。同時に、憲法第62条は、議院の国政調査権について、「両議院は、各々国政に関する調査を行ひ、これに関して、証人の出頭及び証言並びに記録の提出を要求することができる。」と規定している。

 特定秘密保護法案では、国会議員が「特定秘密」情報を知る条件は、著しく制限される。特定秘密保護法案第10条は、憲法や国会法に規定する秘密会に、「特定秘密」を提供することができる、としているが、@当該秘密会のメンバーである議員に限られること、A当該業務以外に当該特定秘密を利用しないこと、B行政機関の長が「我が国の安全保障に著しい支障を及ぼすおそれがないと認めたときに限り」提供される事となっている。

 「支障を及ぼすおそれ」を判断するのは国会でなく、「特定秘密」を指定した行政機関の長なのである。

 国会には、唯一の立法機関の使命と同時に、三権分立の仕組みの中で、行政を監視しチェックする役割を担っている。行政機関が保有する全ての情報は原則として国民のものであり、国会議員が国政調査権を使って情報を入手し、国民主権と国民の「知る権利」に資することは、国会議員の重要な職責である。

 特定秘密保護法案の第10条では、「特定秘密」の提供先として限定された者以外に、「特定秘密」を提供すれば、国会議員も漏えい罪として懲役5年以下の処罰を受けることになる。刑法は原則的に過失を処罰しないが、秘密会メンバーの国会議員が、ついうっかり他の国会議員や自分の政策秘書、党の政策審議会職員に知らせても漏えい罪となり、未遂でも処罰される。

 安全保障(人間の安全保障を含む)は、国民と我が国の平和と安全にとりきわめて重要な問題であることは論を待たない。それであるが故に国会と国会議員が安全保障問題に深く関与すべきなのだ。ところが、特定秘密保護法案が成立すると、国政調査権は有名無実化し、官僚や行政機関の長の恣意的な情報コントロール下に国会と国会議員が置かれることになるだろう。

 その結末は、戦前の暗黒社会が到来し、国会は戦争遂行の翼賛議会になることだろう。やっぱり、特定秘密保護法案は廃案にする以外にない。

 

(2013年11月15日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


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