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憲法コラム

第129回(11月9日):照屋寛徳 議員

武器輸出三原則の見直しは「死の商人」への道

照屋寛徳

 11月7日の衆議院本会議で日本版「国家安全保障会議(NSC)」創設関連法案が、巨大与党と民主党などの賛成多数で可決され、参議院へ送付された。「日本版NSC法案」の衆議院における審議時間はわずか21時間。まさに“一丁上がり”式のやり方だ。

 同日の衆議院本会議では、特定秘密保護法案も審議入りをし、安倍内閣は両法案を一体のものとして、今国会中の成立を急いでいる。

 「日本版NSC法案」は、外交・安全保障に関する総理官邸の司令塔機能の強化を立法目的にしているが、私は11月3日の「NHK日曜討論」番組で憲法の平和主義を破壊する戦争司令塔の機能強化である、と批判し、反対を表明のうえ、廃案を強く求めた。

 安倍総理は、今臨時国会冒頭の所信表明演説で、「成長戦略実行国会」と位置づけ、「意志の力」「決める政治」「積極的平和主義」を強調したが、どうやら、本音は日米軍事一体化と改憲を見据え、「日本版NSC法案」と特定秘密保護法案を早期成立させたうえ、12月にも国家安全保障戦略を閣議決定し、従来武器輸出を原則的に禁じてきた「武器輸出三原則」を抜本的に見直そうと虎視眈々とねらい定めているようだ。「決めてはならない政治」にご熱心のようだ。

 武器輸出三原則は、非核三原則(核を持たず、作らず、持ち込ませず)と並んで、平和憲法をもつ平和国家日本の国是である。

 武器輸出三原則は、日本国憲法前文の平和的生存権、第9条の平和主義、戦力の不保持、交戦権の否認ともつながる政府の武器輸出規制及び運用面の原則である。

 武器輸出三原則と形骸化の経緯について、フリー百科事典『ウィキペディア』の記述を参考にして時系列にまとめてみた。

 1967年4月21日、衆議院決算委員会において佐藤栄作総理(当時)は、次のような国・地域への「武器」の輸出を認めない、と答弁した。

1. 共産圏諸国向けの場合

2. 国連決議により武器等の輸出が禁止されている国向けの場合

3. 国際紛争の当事国又はそのおそれのある国向けの場合

 この輸出貿易管理令における事実上の「武器輸出禁止規定」が武器輸出三原則と呼ばれるようになった。従って、武器輸出三原則は、直接法律で規定されてはおらず、政令運用基準にとどまっている。

 1976年2月27日、衆議院予算委員会における答弁で三木武夫総理(当時)は、1967年の武器輸出三原則に次の項目を追加する「武器輸出に関する政府統一見解」を表明した。

1. 三原則対象地域については「武器」の輸出を認めない。

2. 三原則対象地域以外の地域については憲法及び外国為替及び外国貿易管理法の精神にのっとり、「武器」の輸出を慎むものとする。

3. 武器製造関連設備の輸出については、「武器」に準じて取り扱うものとする。

 なお、武器輸出三原則における「武器」は次のように定義された。

1. 軍隊が使用するものであって直接戦闘の用に供されるもの。

2. 本来的に、火器等を搭載し、そのもの自体が直接人の殺傷又は武力闘争の手段として物の破壊を目的として行動する護衛艦、戦闘機、戦車のようなもの。

 1983年1月14日、中曽根内閣の後藤田正春官房長官が、日米安保条約の観点から米軍向けの武器技術供与を緩和することを武器輸出三原則の例外とする談話を発表した。

 2005年、小泉内閣は、アメリカとの弾道ミサイル防衛システムの共同開発・生産は武器輸出三原則の対象外にすると発表した。

 2011年12月27日、野田内閣の藤村修官房長官は、武器輸出三原則緩和の次のような談話を発表した。

1. 平和貢献・国際協力に伴う案件は、防衛装備品の海外移転を可能とする。

2. 目的外使用、第三国移転がないことを担保されるなど厳格な管理を前提とする(目的外使用、第三国移転を行う場合には、日本への事前同意を義務付ける)。

3. わが国と安全保障面での協力関係があり、その国との共同開発・生産がわが国の安全保障に資する場合に実施する。

以上概観したように、武器輸出三原則は、当初の理念からその内容は大きく変容し、形骸化へと変遷している。

 さて、安倍総理の私的諮問機関である「安全保障と防衛力に関する懇談会」(座長・北岡伸一国際大学長)は、10月21日、外交と安全保障の包括的な指針となる「国家安全保障戦略」の概要を発表し、「武器輸出三原則」の抜本的見直しを盛り込んだ。政府と調整のうえ、近々最終案をつくり、12月に新防衛大綱とともに閣議決定される見込みである。

 たしかに武器輸出三原則は、かなり形骸化が進んでいる。だが、抜本的見直しによってわが国が「武器輸出国」となり、軍産複合体制が強化されると、平和憲法の下で営々として築いてきた平和国家日本は崩壊し、国際社会からの信用は一瞬にして失われるであろう。

 「死の商人」という言葉がある。「軍需品を製造・販売して距離を得る大資本をさしていう」意味である。営利目的で敵味方を問わず兵器を販売する人物・組織への蔑称でもある。

 武器輸出三原則の抜本的見直しは、原発輸出と同じ構造で、防衛産業の強い要請によるものだろう。武器輸出が歯止めなく拡大されると、世界中で日本製の武器が紛争を助長し、戦争に使われることになる。安倍総理の言う「積極的平和主義」に基づく武器輸出三原則の抜本的見直しは、憲法9条の「積極的非武装平和主義」に反する、「死の商人」への道である。

 

(2013年11月9日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


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