HOME特集>憲法コラム>128.照屋寛徳

特集

憲法コラム

第128回(11月6日):照屋寛徳 議員

違憲審査権に基づく最高裁決定を無視する自民党

(画像)2013年9月4日の最高裁決定・下記よりキャプチャー
http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20130904154932.pdf

吉川はじめ徳

 結婚していない男女の間に生まれた子(非嫡出子・婚外子)の遺産相続分を結婚している夫婦の子(嫡出子・婚内子)の半分とする民法第900条4号ただし書きの規定は、憲法14条が保障する法の下の平等に反する、との最高裁判所大法廷決定が下されたのが去る9月4日である。

 最高裁決定直後は、政府も与野党各党も早急な「民法改正の必要で一致」したかの感があった。私も、婚外子相続分差別は明白な憲法違反であり、国権の最高機関たる国会の重大な責務として一刻も早く民法改正すべき、と願ったものである。具体的には今臨時国会で民法改正が実現する事を強く望んだ。

 ところが、今臨時国会の会期末まであと1ヶ月と迫ったが、自民党内右派の議員達が民法改正に猛反対し、自民党内の調整が遅々として進まず、会期内の民法改正が危ぶまれている。

 危機感を抱いた民主党、みんなの党、社民党は、11月5日、婚外子相続分差別撤廃を含む民法改正法案を議員立法として参議院に提出し、参議院先議を求めたのである。

 自民党内右派の議員達は、何故に婚外子相続分差別撤廃の民法改正に猛反対するのか。私は、その背景に自民党「日本国憲法改正草案」に見られる特定の国家観、家族観があるのではないか、と疑っている。

 自民党「日本国憲法改正草案」前文第一段落では、「日本国は、国民統合の象徴である天皇を戴く国家である」とし、第三段落では、「日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する」と謳っている。

 全く余計なお節介だ。憲法は、国家権力を縛り、主権者たる国民の人権擁護を保障することを定めるものだ。憲法に、特定の歴史観、道徳観、家族観を挿入するのは間違っている。

 9月4日の婚外子相続分差別は憲法違反との判断を示した最高裁大法廷決定は、次のように論断する。

 「父母が婚姻関係になかったという、子自らが選択や修正する余地のない事柄を理由に不利益を及ぼすことは許されず、子を個人として尊重し、その権利を保障すべきであるという考えが確立されてきている」と判示し、国際社会では、多様な家族形態の選択可能性が進み、婚外子の相続分差別撤廃が進んでいる事を明らかにしている。

 この論旨明解な最高裁決定に対し、10月29日の自民党の法務部会では、民法改正によって「伝統的な家族制度を崩壊させる」として、次のような暴論が続出したと報道されている。

 「国権の最高機関が、司法判断が出たからといって、ハイハイと従うわけにはいかない」

 「自民党として最高裁の判断はおかしいというメッセージを発するべきではないか」

 「違憲審査権があるからといってオートマチックには受け入れられない」

 「最高裁決定によれば、安心して婚外子を産めるようになってしまう」――などと(10月31日、毎日新聞社説)。

 まあ、恐れ入ったね。国会議員個人がどんな考えを持とうが自由である。しかし、最高裁の違憲審査権を無視したり、多様な家族選択の自由を蔑視したり、性のモラルを強制したりする考えは止めてもらいたい。

 自民党右派の議員達は、憲法の規定による司法・立法・行政の三権分立による相互のチェック機能を否定するかのようであるが、立法府たる国会が違憲審査権に基づく最高裁判断を尊重するのは、当然である。

 10月30日の自民党参議院政策審議会では、西田昌司議員が「最高裁はわれわれの常識とは違うが、現行憲法と結びつけると今回の決定となる。現行憲法が間違っている」と言い切ったようだ(10月31日、東京新聞)。西田議員は、三重県の鈴木英敬知事らとの議論でも、「外で作った子供に同じように財産が与えられると、結果的に、正妻らの取り分が少なくなることが考えられる」「(家族とは)親がいて兄弟もいて、そういう形でみんな育ってきている。『何でもいいから産んでくれれば育てていく』というのは家族否定、人間否定だ」などと語っている(11月4日、産経新聞電子版)。

 一方、自民党の野田聖子総務会長は、11月1日の記者会見で、自身が婚外子だったことを公言し、「私も生まれたときは非嫡出子だ。一時期なぜそういうことになるのかと素朴な疑問を持った。ただ父と母はその後、法律婚をした。立法府は最高裁の判断を尊重しなければならない。婚姻は大人の世界の話だ。子供が責めを負う必要はない」と民法改正案の早期成立を求めている(11月2日、産経新聞電子版)。もっともな意見である。

 自民党右派の議員達は、最高裁大法廷の違憲決定を無視するが、そのようなことをすると、三権分立によるわが国の統治システムが崩壊する。婚外子相続分差別違憲決定に対し、「司法の暴走だ」、「現行憲法が間違っている」、「(最高裁決定は)家族否定、人間否定だ」などと批難攻撃するのは、驕り高ぶっている証拠だ。

 政府・自民党は、一日も早く党内の右派の議員達(人権感覚が欠落し、憲法の法の下の平等を否定する考えの持ち主)を諌め、説得し、今臨時国会中の民法改正実現を図るべきである。

 それにしても、巨大与党の自公は、憲法違反で「軍事国家」「秘密国家」を目指す「日本版NSC法案」「特定秘密保護法案」を成立させ、国民の「知る権利」を奪うのには熱心だが、最高裁から指弾された違憲の立法改正には消極的である。本気で、怒怒怒だ。

(2013年11月6日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


HOME特集>憲法コラム>128.照屋寛徳