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憲法コラム

第126回(11月2日):照屋寛徳 議員

日本は、「平和ぼけの国」か「戦争ぼけの国」か

【写真】「秘密保護法案と立憲主義否定の国づくりに反対する10・29集会」後の請願デモに応える=10月29日夜、衆議院・議員面会所

照屋寛徳

 もっか「衆議院国家安全保障特別委員会」で「国家安全保障会議設置法案」(日本版NSC)の審議がおこなわれている。巨大与党は、11月初旬にも衆院通過を図ろうと躍起になっている。

 NSCとは、米国の国家安全保障会議(National Security Council=ナショナル・セキュリティー・カウンシル)組織をモデルにしており、その由来で「日本版NSC」と呼ばれている。

 さて、去る10月28日、第1回目の「国家安全保障特別委員会」で自民党の小池百合子議員(元防衛大臣)が特定秘密保護法案との関連で、朝刊各紙で報じられる毎日の「首相の動静」について、次のように発言した事が問題になっている。

 小池百合子議員は、特定秘密保護法案とかかわって「知る権利」をぜひとも担保せよというのはもっともだ、と発言しつつもこのように言い切っている。

 「一方で、日本は、秘密であるとか機密に対する感覚をほぼ失っている平和ぼけの国でございます。毎日、新聞に、首相の動静とか、何時何分、誰が入って、何分に出てとか、必ず各紙に出ていますね。私は、あれは知る権利を超えているのではないだろうかと思いますし、……」――と(国家安全保障特別委員会議事速報)。

 小池百合子議員の特別委における質問の真意は不明である。政府に対して新聞各紙への首相動静の情報提供制限を求めたのか、新聞各紙へ掲載自粛を求めたのか、首相動静を「特定秘密」に指定せよ、との主張かは質問だけでは正直わかりにくい。ただ、首相動静の公表が国民の「知る権利」を超えている、との主張だけは明確だ。いやー、恐れ入った妄言ですな、小池議員よ。

 私は、最高権力者たる総理の動静を報道する事は当然にあって良い、と考える。首相動静を国民が知ることによって、首相の意思(政策)決定過程が国民に伝わってくる。しかも、毎日の首相の動静から都合の悪い事、秘密にしたい事は予め取捨選択のうえ官邸が発表していることは十分に推察される。

 小池百合子議員の特別委質疑に、官邸は即座に反応した。菅官房長官は、その日の記者会見で「各社が取材して公になっている首相の動向なので、特定秘密保護法案が規定する特定秘密の要件にはあたらない」と打ち消している。

 私は、小池議員が元防衛大臣であり、第一次安倍内閣の安全保障担当の首相補佐官の経歴に照らし、特定秘密保護法案における「特定秘密」の指定が「行政機関の長」らによって広範かつ恣意的になされる事を暗に示唆したものと考えている。

 一方、森雅子・特定秘密保護法担当大臣がTPP交渉に関する情報の「特定秘密」指定の扱いをめぐって、「指定される」「指定されない」と記者会見で右往左往している。私は、特定秘密保護法案が成立すると、TPP交渉情報や原発事故関連情報も「特定秘密」に間違いなく指定されると思う。

 それにしても、小池百合子議員は、「日本は、秘密であるとか機密に対する感覚をほぼ失っている平和ぼけの国でございます」とは、良くも言ってくれたな、と受け止めた。

 気になったので、手元の広辞苑(岩波書店)を見ると、「ぼける」(惚ける、呆ける)とは「頭の働きや感覚がにぶくなる。ぼんやりする。もうろくする。」とある。心意気は青年だが、日々「老いるショック」を感じている私からすると、憲法の三大原理を破壊し、日本を「情報統制国家」「戦争国家」にせんがために、「日本版NSC法案」や特定秘密保護法案の成立を急ぐ小池百合子議員や自民党こそが日本の「戦争ぼけ国家」を目指している、と批判せざるを得ない。

 去る、10月28日、憲法・メディア法研究者142名と刑事法研究者123名(いずれも10月25日現在)が、特定秘密保護法の制定に反対する声明を発表し、マスコミ各社が大きく報道したので、大反響を呼んでいる。

 すでに日弁連、多くのNPO、市民団体が反対声明を発表している。10月29日には、平和フォーラム主催の「秘密保護法案と立憲主義否定の国づくりに反対する10・29集会」と請願デモがあり、私も参加した。

 先の憲法・メディア法研究者の反対声明は、「憲法は、戦争の放棄と戦力の不保持、平和的生存権を定める平和主義を宣言している。これからすれば、軍事や防衛についての情報は国家の正当な秘密として必ずしも自明のものではなく、むしろこうした情報は憲法の平和主義原則の観点から厳しく吟味し、精査されなければならないはずである。」と指摘している。そのうえで、声明を「本法案は基本的人権の保障、国民主権、平和主義という憲法の基本原理をことごとく踏みにじり、傷つける危険性の高い提案に他ならないので、私たちは重ねてその制定に強く反対する。」と結んでいる。

 また、刑事法研究者の反対声明は、「法案は、一種の軍事立法であり、憲法『改正』の先取りでもあり、刑事法の人権保障をも侵害するおそれが大きいと言わざるを得ない」と指摘したうえで、「特定秘密保護法の罰則は、文言が曖昧であり、処罰範囲は広汎であって、憲法31条の適正手段・罪刑法定主義に反する。」として、「国会での徹底した審議を強く要望する」と結んでいる。

 日本を代表する憲法・メディア法研究者142名、刑事法研究者123名の特定秘密保護法案反対声明は重たい。「日本版NSC法案」と特定秘密保護法案は、一体の法案であり、両法案への反対と廃案を強く訴えるものである。

(2013年11月2日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


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