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憲法コラム

第124回(10月25日):照屋寛徳 議員

日米軍事一体化・融合化と特定秘密保護法

照屋寛徳

【写真】筆者も呼びかけ人となっている「秘密保護法を考える超党派の議員と市民の勉強会」(第2回・10月16日)

 安倍内閣は、10月25日、特定秘密保護法案を閣議決定した。今臨時国会へ提出し、会期中に成立させる事を目論んでいる。

 衆議院では、去る10月18日に「国家安全保障に関する特別委員会」が多数決で設置され、同特別委で「国家安全保障会議設置法案」(日本版NSC)の審議を先行させ、特定秘密保護法案と併せて、短期間の国会審議でもって可決成立させようとしている。両法案は、その立法目的や背景において密接に関連しており、いわば一体の法案である。

 特定秘密保護法案は、余りにも多くの問題点を孕んでおり、一口に法案の本質、論点、その立法目的を表現するのは難しい。安倍内閣が早期成立を企んでいるだけに、如何にして多くの国民に法案の危険性を伝えるか、気が焦る。一刻も早く「日本版NSC法案」と特定秘密保護法案を廃案に追い込むには、一強多弱の国会論戦だけでは無理だ。正直、無理どころか不可能だ。第一、野党の中にも両法案に賛成する政党がある。いわゆる野党内自民党補完勢力である。両法案の早期成立を図るための特別委員会設置に反対したのも社民党、共産党、生活の党3党だけである。

 今、緊急に求められているのは、国会の外における広範な国民の反対運動の組織化である、と私は考える。もちろん、国会論戦は必要だし、大事である。だが、巨大与党は、多数決の美名に隠れて、数の横暴で国会審議を形骸化させ、議論を封殺するにちがいない。幸いにして、日弁連などの法律家集団、学者、多様なメディアの方々、NPO団体、市民団体などが反対の声を上げている。かつて、「デートもできない警職法」の合言葉で大きな反対運動をつくり出し、警察官職務執行法改正案を廃案に追い込んだように、国会議員と広範な国民の共同行動を早期に創り出すよう全力を尽くす決意を固めている。

 さて、私は「日本版NSC法案」と特定秘密保護法案は、一体の法案だと書いた。「日本版NSC法案」は、外交・安全保障の司令塔としての国家安全保障会議の設置とその機能強化が目的である。特定秘密保護法案も「我が国の安全保障に関する情報のうち特に秘匿することが必要であるものについて、これを的確に保護する体制の確立」等を目的にしている。特定秘密保護法案では、かかる目的で、@防衛に関する事項、A外交に関する事項、B特定有害活動に関する事項、Cテロリズムの防止に関する事項、に関する情報であって、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるものを「特定秘密」として「行政機関の長」が指定することになっている。

 「特定秘密」の4項目は、その範囲が広範かつ不明確で、政府権力にとって不都合な情報を恣意的に指定できる。しかも、どんな情報が「特定秘密」に指定されたのか、その妥当性をチェックし検証する仕組みはない。一度指定されると5年毎に更新され、永久に続く。そのうえ、「特定秘密」を取り扱う公務員や民間の契約業者らが故意又は過失で漏らすと、最高10年の懲役刑だ。国会議員らの漏えいも最高5年の懲役刑である。人を欺くこと、暴行、脅迫、窃取、不正アクセスなどによる特定秘密の取得は最高10年の懲役刑だ。そして、それらの未遂、共謀、教唆、扇動も処罰の対象となり、外交・防衛の秘密情報を入手せんとする研究者、メディア、反基地、反原発の活動家らも犯罪容疑者としてターゲットにされる。

 現行の国家公務員法、自衛隊法にも情報漏えいへの処罰規定はある。特定秘密保護案は、現行法をはるかに上回る重罰化でもって、「特定秘密」を取り扱う公務員らを威嚇し、委縮効果を狙っている。

 特定秘密保護法案の問題点の一つに、「特定秘密」を扱うことになる公務員が情報を漏らす恐れはないか見極めるために実施される適正評価がある。同法案第12条によると調査事項は@スパイ・テロ活動との関係、A犯罪、懲戒、B情報の取り扱い歴、C薬物乱用や影響、D精神疾患、E飲酒の節度、F借金などの経済状況、などで個人のプライバシーを侵害し丸裸にするものだ。そのうえ、当該公務員の親、配偶者、子、兄弟姉妹やその他の同居人の住所、生年月日、国籍までも調査される。「よくもそこまで調査するな」と呆れるばかりだ。憲法が保障する個人の尊厳の全否定ではないか。

 情報の公開、国民の知る権利、報道の自由や取材の自由は、民主主義の基本であり、憲法が定める国民主権の根本である。特定秘密保護法はそれらに反する悪法の最たるものだ。戦前の軍機保護法の再来であり、「秘密国家」、「情報統制国家」づくりの反民主主義的で違憲の法律だと強く指弾せざるを得ない。

 何故、安倍内閣はかかる悪法の制定を急ぐのか? 私は、現下日米軍事一体化・融合化が急激に進行している事態の反映だと考える。2000年10月の「アーミテージ・レポート」、2005年10月、「部隊戦術レベルから国家戦略レベルに至るまで情報共有及び情報協力の向上」を謳いあげた「日米同盟:未来のための変革と再編」、2007年8月に日米間で締結された軍事情報の漏出防止を目的とした軍事情報包括保護協定(GSOMIA)等が間違いなく背景にある。要するに、日米軍産複合体の利益擁護法案だ。

 また、特定秘密保護法案は、自民党「日本国憲法改正草案」が国防軍を創設し、「機密の保持に関する事項は、法律で定める」としている事、安倍総理が憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認により、「地球の裏側」でもアメリカと一緒に戦争ができるようにしようと野望を抱く憲法9条改憲などとも符合する。

 特定秘密保護法案の与党内修正協議の中で、国民の「知る権利」や「報道・取材の自由」に配慮する訓示規定が挿入されたが、単なる努力規定にすぎず屁の突っ張りにもならない。日本が平和国家から戦争国家へと暴走する為の特定秘密保護法案は、廃案いがいにない。

(2013年10月25日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


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