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第121回(10月17日):照屋寛徳 議員

宮澤・レーン事件と特定秘密保護法案

宮澤・レーン事件と特定秘密保護法案

 突然ですが、あなたは「宮澤・レーン事件」を知っていましたか?――私は、不勉強で迂闊にも知りませんでした。私が「宮澤・レーン事件」を最初に知ったのは、2013年10月4日付東京新聞「こちら特報部」の報道記事だった。東京新聞の記事は、「スパイぬれぎぬ 宮澤・レーン事件」「軍機保護法 秘密保護法と酷似」「第三者検証の仕組みなく」の見出しで、「宮澤・レーン事件」の当事者である宮澤弘幸さんの妹の証言や事件を調査した藤原真由美弁護士の証言等で構成されていた。

 私は特定秘密保護法案との関連で「宮澤・レーン事件」に興味を持ち、勉強を始めた。そして、臨時国会召集日の去る10月15日、私も呼びかけ人になっている「秘密保護法を考える超党派の議員と市民の勉強会」で講師の米倉外昭氏(新聞労連副委員長・琉球新報記者)が「圧殺される報道と市民運動」と題する講演の中で、「宮澤・レーン事件」に言及し、故上田誠吉弁護士の著書や報告書について話されるのを聞いた。

 「宮澤・レーン事件」は、正式には「宮澤弘幸・レーン夫婦軍機保護法違反冤罪事件」と呼ばれているようだ。「宮澤・レーン事件」は、太平洋戦争が開戦した1941年12月8日に発生した。当時、北海道帝国大学2年生の宮澤弘幸さんが軍機保護法違反で逮捕され、懲役15年の実刑判決を宣告されたのだ。宮澤さんは、取調べ中の拷問と過酷な服役生活で結核になり、敗戦後、釈放されたが、27歳の若さで亡くなった。

 一方のレーン夫婦は、米国人で北海道帝国大学の英語教師と講師だった。夫のハロルド・レーン氏は懲役15年、妻のボーリン・レーンさんは懲役12年の実刑判決を受け、米国に送還され、敗戦後の1951年に北海道大学へ復職したが、後に札幌市で死去した。

 さて、宮澤弘幸さんが逮捕された主な容疑は「樺太に旅したときに偶然見かけた根室の海軍飛行場を、友人のレーン夫婦に話した」ことだった。軍機保護法は、1899年7月に公布され、1937年には改正軍機保護法が成立している。軍機保護法は、軍事上の秘密を保護することを目的としており、その立法目的等に照らし、安倍内閣が今臨時国会での成立を狙っている特定秘密保護法案と同じ内容と法構造である。

 軍機保護法は、1937年に大幅改正され、立法目的である軍事上の秘密の探知、収集、漏洩の範囲が拡大され、「戦局の緊迫化とともに、『観光でたまたま写した風景に軍事施設が写っていた』というような軽微な理由で、次々と一般市民が逮捕される事態になったのである(10月14日付東京新聞)。

 「宮澤・レーン事件」のように、裁判で重罰に処しながら、容疑事実の「秘密」は法廷で一切明らかにされず、裁判も非公開、判決文も破棄されるか、伏せ字だらけであったようだ。まさに、暗黒裁判だ。現在安倍内閣が成立を急ぐ特定秘密保護法案も「特定秘密」を指定するのは国の行政機関の勝手、何が「秘密」か、それを問うこと自体が「秘密」なのだ。事件自体が「秘密」とされてしまう。そのような悪法の成立を力を合わせて阻止しなければならない。

 過日、私の国会事務所に沖縄在住の主婦の方から「特定秘密保護法に反対して下さい」との電話があったようだ。応対した秘書の話では、自宅近くの本屋で私の姿を何度も見かけたらしい。

 もちろん、私も社民党も特定秘密保護法案、それと密接に関連する国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案には、断固として反対だ。その事は、10月13日の各党国対委員長出演のNHK日曜討論で、私から明言した。大事なのは、国会議員だけでなく、多くの市民、弁護士、メディアの方々が特定秘密保護法案反対の声を挙げ、緊急行動に立ち上がることだ。

 さて、巨大与党の自公は、衆参に特定秘密保護法案と国家安全保障会議(日本版NSC)設置法案審議のための特別委員会を設置し、一気呵成に法案を成立させようとしている。10月17日の衆院本会議では、社民党、共産党、生活の党が反対したにも関わらず、「国家安全保障に関する特別委員会」の設置が決まった。

 巨大与党は、特別委員会であれば、毎日のように委員会が開催できるので、重大法案である両法案を、国会審議を形骸化し、短期間に成立を図っているのだ。かかる巨大与党の横暴を絶対に許してはならない。

 安倍内閣は、来週にも正式に特定秘密保護法案を衆議院に提出するだろう(国家安全保障会議設置法案は前国会より継続審議となっている)。特定秘密保護法案の持つ問題点、「知る権利」や「取材の自由」「表現の自由」との関連については、次の機会に書きたいと思う。

 私は、特定秘密保護法は、安倍内閣が進めている憲法解釈の変更による集団的自衛権行使容認や日米軍事一体化・融合化と軌を一にするものだと考える。安倍内閣や巨大与党が特定秘密保護法の制定を急ぐのは、アメリカからの強い要求によるものである。軍事秘密の厳罰化法制は、まちがいなく新たな戦争の始まりだ。日本を再び暗い戦争の時代にしてはならない。「情報は、民主主義の通貨であり、血液である」という言葉がある。情報は市民・国民のものだ。

 私は、特定秘密保護法は違憲であり、その制定は、実質的な立法改憲である、と断言する。

(2013年10月17日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


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