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憲法コラム

第117回(10月7日):照屋寛徳 議員

宮崎駿監督の改憲反対論

(キャプチャー) 「風立ちぬ」公式サイト(http://kazetachinu.jp/)より

宮崎駿監督の改憲反対論 「戦闘機が大好きで戦争が大嫌い」という、内なる矛盾を抱えながら生きてきた巨匠映画監督・宮崎駿の「監督」論や作品の映画批評を目的にこの論稿を書いているつもりではない。第一、「寛徳」が「監督」を論ずるなんて、洒落にもならず、不遜だと批難轟轟だろう。それに、私は宮崎駿監督の長編アニメ映画作品である「となりのトトロ」「千と千尋の神隠し」「ハウルの動く城」「崖の上のポニョ」「もののけ姫」など多数のうち、わずかしか観てないのだ。

 映画は嫌いではない、むしろ大好きだ。だが、幼少年期のわが家は貧乏で映画が観れる環境ではなかった。青壮年期も仕事に追われる日々、「基地沖縄」の現実に向き合い、苦悩する中で、映画を楽しむ余裕などなかった。もちろん、全く観なかったわけではない。「名作」との前評判の高い映画などは観たし、国会議員になってからは宿舎で古い映画をDVDで鑑賞している。

 過日、宮崎駿監督の「遺言」とも言われる最後の長編アニメ映画の「風立ちぬ」を老妻と二人で観た。「愛妻」ではなく、「老妻」と書いてしまったが、二人は同じ歳(1945年生)であり、ともに脳卒中の後遺症と格闘しながらも、“老いるショック”を日々感じつつ暮らしているからである。ゴメンナサイね。

 「風立ちぬ」は、観客が810万人を超え、今なお記録更新中だろう。「風立ちぬ」は、実在の人物堀越二郎をモデルに、その半生を描いた作品であるが、堀辰雄の小説「風立ちぬ」からの着想も盛り込まれている、との評論もある。

 宮崎駿監督は、「風立ちぬ」の映画完成後、公開中に「僕のアニメーションの時代ははっきり終ったんだ」と言い、2013年9月6日引退を表明した。私と老妻が「風立ちぬ」を観たのは、その二日後である。

 引退表明記者会見で、宮崎駿監督は「基本的に子どもたちに、この世は生きるに値するんだということを伝えるのが自分たちの仕事の根幹になければいけないというふうに思ってきました」と述べている。私は、この一言が「風立ちぬ」に込めた宮崎駿監督のメッセージだろうと思うし、映画を観ての感想でもある。

 さて、本題の宮崎駿監督の改憲反対論に移ろう。

 小冊子「熱風」の憲法改正問題特集(スタジオジブリ発行・2013年7月号)がマスコミで評判になった。早速購入しようと、秘書に手配を頼んだが、取扱い書店で品切れ。やむなくPDF配信でダウンロードして一読した。

 宮崎駿監督は、1941年生まれだ。私より4つ歳上である。「熱風」の前記特集号で「憲法を変えるなどもってのほか」と題して語った(同論文は談話形式で纏められている)宮崎駿監督は、「子どもの頃は『本当に愚かな戦争をした』という実感がありました。」と述べている。同時に、「もうちょっと早く生まれていたら、絶対、熱烈な軍国少年になっていたはずでした。」とも語っている。

 「憲法改正」について、宮崎駿監督は、「憲法を変えることについては、反対に決まっています。」と明言したうえで、「96条先行改憲」について、次のように箴言・忠言する。

 「法的には96条の条項を変えて、その後にどうこうするというのでも成り立つのかもしれないけれど、それは詐欺です。やってはいけないことです。国の将来を決定していくことですから、できるだけ多数の人間たちの意見を反映したものにしなきゃいけない。多数であれば正しいなんてことは全然思ってないけれど、変えるためにはちゃんとした論議をしなければいけない。」

 「政府のトップや政党のトップたちの歴史感覚のなさや定見のなさには、呆れるばかりです。考えの足りない人間が憲法なんかいじらないほうがいい。」

 宮崎駿監督は、立憲主義という言葉を使わないが、「96条先行改憲」の本質を見抜き、鋭く批判しているのである。疎開先での空襲体験や占領軍の振舞を記憶する宮崎駿監督は、戦争体験もない、沖縄のような「無憲法」下の米軍占領も知らない政治家達が「憲法なんかいじるな」と喝破するのである。

 憲法第9条と自衛隊について、宮崎駿監督は「もちろん、憲法9条と照らし合わせると、自衛隊はおかしい」おかしいけれど、そのほうがいい。国防軍にしないほうがいい。」と語っている。自民党「日本国憲法改正草案」9条の2において「国防軍」を創設すると謳っている事をきちんと批判している。

 「憲法改正問題」以外でも、「慰安婦の問題も、それぞれの民族の誇りの問題だから、きちんと謝罪してちゃんと賠償すべきです。」「(日本は)こんな原発だらけの国で戦争なんてできっこないじゃないですか。」などとも語り、最後に「今流行っていることはやるな」と結んでいる。

 「今流行っていることはやるな」との宮崎駿監督の言葉は意味深だが、宮崎作品は一貫して「国のために色々やった人を描くのではない」との信念で作られたようなので、「個人より国家」「基本的人権より国益と公の秩序」を優先する自民党ら改憲派の改憲策動に同調するな、との意味だろう、と私は理解した。

(2013年10月7日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


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