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憲法コラム

第114回(9月28日):照屋寛徳 議員

「ヘイトスピーチとレイシズム」そして普遍的人権

「ヘイトスピーチとレイシズム」そして普遍的人権

 恥を忍んで告白する。私は、横文字に弱い。「弱い」ってなもんではなく、からっきしダメだ。そんな私でも、ヘイトスピーチ(憎悪表現)とレイシズム(人種差別主義)は、しっかりと覚え、日常的に使用している。

 数年前から、東京都新宿区新大久保や大阪市生野区鶴橋などの、在日朝鮮・韓国人が多く住み、出店している地域で、「在日特権を許さない市民の会」(在特会)やネット右翼らによるヘイトスピーチ街頭デモが展開されるようになった。

 在特会や右翼らは、「従軍慰安婦は売春婦だった」「良い韓国人も、悪い韓国人も殺せ」「ゴキブリ」等と日の丸を掲げ、ヘイトスピーチし、人種差別に基づく侮辱的、脅迫的言動を繰り返している。強い怒りを覚えると同時に、自らの内面的不満を在日朝鮮・韓国人に向け、口汚くののしり、騒ぎ立てればいいという怪しい行動原理を情けなく思う。

 最近では、在特会や右翼らのヘイトスピーチに抗議する市民のデモも始まった。去る9月22日には、「差別撤廃 東京大行進」が東京・新宿で開かれ、すべてのレイシズムにNOを!すべてのヘイトスピーチにNOを!「差別をやめよう、仲良くしようぜ」と訴えるデモ行進がおこなわれている。

 「東京大行進」は、1963年8月、米国・ワシントンでキング牧師らが人種差別撤廃を訴えた「ワシントン大行進」をモデルにしたもので、「東京大行進」には約2000人が参加したようだ(9月23日付東京新聞)。

 ところで、レイシズムに基づくヘイトスピーチは、ウチナーンチュにも向けられている。去る1月27日、オスプレイの強行配備に反対し、即時撤去を求めて、沖縄の全市町村長、議会議長、超党派県会議員、県選出国会議員らが、日比谷公園で集会を開き、銀座へ向けてデモをした折に、日の丸を掲げた右翼や在特会の者が、「売国奴」「ゴキブリ」「スパイ」「日本から出て行け」等と罵声を浴びせ、平穏なデモを妨害した。集会やデモに参加した私を含む県民代表らは、不愉快さを超えて恐怖感すら抱いたのである。ヘイトスピーチは、憲法第21条が保障する表現の自由を超えて、犯罪行為の様相を帯びてきた、と考える。具体的には、刑法第222条「脅迫」、同234条「威力業務妨害」等である。

 私は、ヘイトスピーチに直ちに刑事罰を加えたり、新たな法規制を設けるべきだ、とまでは言わない。だが、ヘイトスピーチによる実害=被害は確実に発生している事も事実だ。

 2013年5月22日、国連の社会権規約委員会は日本政府に対し、ヘイトスピーチの防止や包括的差別禁止法の制定を求めた。日本も加盟している人種差別撤廃条約2条1項dは、「各締約国は、状況により必要とされるときは立法を含むすべての適当な方法により、いかなる個人や集団、組織による人種差別も禁止し、終了させる」と規定している。今起きている在日朝鮮・韓国人やウチナーンチュに対するヘイトスピーチは、明らかに「個人や組織による人種差別」である。従って、先ずは、政府が処罰や法規制の前に、人種差別問題に真剣に取り組み、人種差別禁止法を制定すべきだ。それすらやらないで、「平和の祭典」2020年オリンピック、パラリンピック東京開催と大騒ぎしても、国際社会の物笑いだ。

 2013年9月25日、在日コリアン三世で人材育成コンサルタントの辛淑玉さんらの呼びかけで、「ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク」(のりこえねっと)が結成された。実は、辛淑玉さんから「のりこえねっと」の結成計画を事前に聞いていた。結成記者会見で辛淑玉さんは、「差別はいけないんだと体を張って止めないと。ひとつひとつつぶしていかなくては」「差別する側、される側。私たちは同じ社会で生きているのに分断されている。その壁を乗り越えたい」「究極の目標は、差別する人と一緒にご飯を食べること。口論になってもいいから」と明るく言い放っている。(9月26日付東京新聞)

 さすが、『差別と日本人』(野中広務氏との共著)、『ケンカの作法――批判しなければ、日本は滅ぶ』(佐高信氏との共著)がある辛淑玉さんらしい発言だ。

 早速、「のりこえねっと」の設立宣言を入手し、熟読玩味した。格調高く、美文で心うつ設立宣言だ。設立宣言の一部を紹介しよう。

 「ヘイトスピーチは、良心を持つあらゆる人々を傷つけるのだ。国籍も、民族も、性別も、出自も関係なく、すべての人間には普遍的な尊厳と人権があると考える人々の信念、そして、なによりも平和に生きようとする人々の精神に対して、言葉と物理的な暴力で憎悪を投げつけ、侮辱し、傷を負わせる。国際社会がこれまで長い苦しみの歴史の中で築いてきた、世界人権宣言にも謳われる普遍的な人権概念を攻撃し、その価値をあざ笑い、踏みにじる。これが、ヘイトスピーチの本質なのだ。」

 「この暴力に対峙し、決然と対決することは、単なるマイノリティ集団の利益のための行動ではない。」「民族や国境の壁を超えて、人権の普遍的価値を擁護し、防衛する行動でもあるのだ。」

 よ〜し、「のりこえねっと」の設立呼びかけと宣言に応えて、「人権の普遍的価値を擁護」すべく、ヘイトスピーチとレイシズムに不屈に闘うぞ!

(2013年9月28日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


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