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第112回(9月20日):照屋寛徳 議員

「琉球共和国憲法」草案と「沖縄自治憲章」案

「琉球共和国憲法」草案と「沖縄自治憲章」案

 第16代アメリカ合衆国大統領、エブラハム・リンカーンの「人民の 人民による 人民のための政治」という言葉は、余りにも有名だ。1863年、南北戦争最大の激戦地ゲティスバーグの戦いで北軍が勝利し、戦没者墓地奉献式での名演説(時間にしてわずか3分間)の一節だ。

 私が、このリンカーンの有名な演説の文句を初めて耳にしたのは、具志川中学校在学中のことだった、と記憶している。当時の沖縄は、アメリカの軍政下にあり、軍事優先の政治の下、日本国憲法も適用されず、基本的人権も保障されていなかったので、アメリカ大統領の「人民の 人民による 人民のための政治」は、新鮮な驚きですらあった。

 実は、リンカーンの有名な言葉には、後半部分がある事をつい最近まで知らなかった。不勉強の謗りに、恥じ入るばかりである。リンカーンの言葉は、「人民の 人民による 人民のための政治は、この地上からけっして消え去ることはないだろう」となっており、後半部分を加えると、一層輝きを増し、深い感銘と感動を与える言葉になってくる。

 さて、翻って現下の安倍総理の政治を考えるに、「金持ちの 金持ちによる 金持ちのための政治」、いや間違えた「自民党の 自民党による 金持ちのための政治」になっていると批判せざるを得ない。大多数の庶民(低所得者)を苦しめる消費税増税をやり、大企業の法人税率は引き下げる。福島第一原発事故は、未だ収束せず、日々、海に空に大地に放射能を撒き散らし、汚染水はたれ流されているのに、「状況はコントロールされている」とパフォーマンス政治をやっている。まさに、「人民」ではなく、「官僚の 官僚による 官僚のための政治」に屈服しているのだ。

 安倍総理による憲法解釈変更による集団的自衛権行使容認や憲法96条、9条を含む“壊憲”策動も、リンカーンの言葉とは、真逆である。

 さてと本題に戻ろう。沖縄本土「復帰」10年後の1981年6月の『新沖縄文学』(沖縄タイムス刊)第48号に、「琉球共和社会憲法私(試)案」と「琉球共和国憲法私(試)案」が掲載され、話題騒然となった。当時、驚愕しながらも、興味津津に読んだ記憶がある。琉球「共和国」「共和社会」憲法草案(二案)を解説するのは、私の手に余る。ただ、言えるのは、二案を貫いている精神には、「無憲法」下から「反憲法」下に変っただけの沖縄に失望しつつも、不戦・非戦の平和を渇望し、共生国家を志向しているもの、と受け止めた。

 そして、1985年には沖縄国際大学教授(当時)の玉野井芳郎氏が、「生存と平和を根幹とする『沖縄自治憲章』(案)」を発表する。玉野井芳郎氏(1918年−1985年)は、東大教養学部名誉教授で経済学博士、東大退官後に沖国大教授になられた。イヴァン・イリイチを日本に紹介した偉大な学者である。

 2013年6月、『沖縄自治州――特例型沖縄単独州を求めて――』(「琉球書房」発行)が出版された。同書に、前記玉野井芳郎氏の「沖縄自治憲章」(案)が、全文資料として掲載されている。

 「沖縄自治憲章」(案)は、その前文において「(中略)沖縄の戦後の歴史、とりわけ復帰運動および平和運動の歴史を踏まえて、日本国憲法および本憲章が定める権利を拡大、充実し、これを永く子孫に伝えることは、われわれ沖縄住民の責務である。ここにわれわれは、生命と自然の尊重の立場を宣明し、生存と平和を根幹とする「沖縄自治憲章」を制定して、本来の自治・自立の理想と目的の達成を心に誓う。」と高らかに謳っている。

 「沖縄自治憲章」第13条は、「沖縄住民は、永久絶対の平和を希求し、自衛戦争を含むあらゆる戦争を否定し、沖縄地域において、戦争を目的とする一切の物的、人的組織を認めない。

 沖縄地域において、核兵器を製造し、貯蔵し、または持ち込むことを認めない。また核兵器の搭載可能な種類の艦船、航空機の寄港および海域・空域の通過を認めない。」と平和主義の精神・理念を定めている。

 更に、「沖縄自治憲章」(案)第15条は、平和的生存権を確保するための諸権利について、次のように規定する。

「沖縄住民は、平和的生存権を具体的に確保するために、次に掲げる諸権利を有する。
1 軍事目的のための表現自由の制約を拒否する権利
2 軍事目的のための財産の強制使用、収用を拒否する権利
3 軍事目的のための労役提供を拒否する権利」

 本土「復帰」41年目の沖縄は、琉球「共和国」「共和社会」憲法草案や「沖縄自治憲章」(案)の平和的生存権を日本国憲法に求め続け、安倍総理と自民党は「壊憲」で、平和的生存権を捨てようとしている。

 

(2013年9月20日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


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