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憲法コラム

第109回(9月9日):照屋寛徳 議員

自民党「日本国憲法改正草案」前文を採点する

日本国憲法を口語訳してみたら

 憲法前文は「グリコのおまけ」のような存在ではない。憲法の三大原則(国民主権、平和主義、基本的人権尊重)と根本理念を条文と一体となって形成している全体の一部であり、前文と本文(各条文)は不可分な一体をなしている。

 自民党などの改(壊)憲派国会議員の多くは、口を揃えて、憲法前文を「全体が翻訳調でつづられており、日本語として違和感がある」、などと感覚的・非論理的批判を執拗に繰り返している。

 この夏に、塚田薫著、長峯信彦監修の『日本国憲法を口語訳してみたら』(幻冬舎)を読んだ。著者の塚田薫さんは、1989年生まれで、愛知大学法学部法律学科在籍中である。

 この本は、著者がインターネットの掲示板「2ちゃんねる」に「日本国憲法を口語訳してみた」というタイトルで書き込みを始め、マスコミで話題騒然となり、長峯信彦氏(愛知大学教授・憲法学)の監修を得て出版されたものである。

 先ずは、日本国憲法を広げて、その前文を確認したうえで、「日本国憲法を口語訳してみたら」の前文と対比して見よう。少し長いが、辛抱して読んで下さい。

 「俺たちはちゃんとみんなで選んだトップを通じて、俺たちと俺たちのガキと、そのまたガキのために、世界中の人たちと仲よくして、みんなが好きなことをできるようにするよ。
 また戦争みたいなひどいことを起こさないって決めて、国の主権は国民にあることを、声を大にしていうぜ。それがこの憲法だ。
 そもそも政治っていうのは、俺たちがよぉく考えて選んだ人を政治家として信頼して力を与えているもので、本質的に俺たちのものなんだ。あれだ、リンカーンのいった『人民の、人民による、人民の政治』ってやつ。
 この考え方は人類がみんな目標にするべき基本であって、この憲法はそれに従うよ。そんで、それに反するような法律とかは、いっさい認めないぜ。
 俺たちはやっぱり平和がいいと思うし、人間って本質的にはお互いにちゃんとうまくやっていけるようにできてると信じるから、同じように平和であってほしいと思う世界中の人たちを信頼するぜ。そのうえで俺たちはちゃんと生きていこうと決めたんだ。
 平和を守って、人を踏みにじって奴隷みたいな酷(ひど)い扱いをすることや、くだらない偏見や差別をなくそうとしている世界の中でちゃんと行動したいと思うのね。
 名誉ある地位っていうかさ、なんかそういうの、かっこいいじゃん。
 そのうえで声を大にしていうよ。
 『全世界の人は、みんな、なににも怯えることもなく、飢えることもなく、平和に生きる権利を持っている!』
 この理想は俺たちの国だけじゃなくて、ほかのどの国にも通用するもので、一人前の国でいたいと思うなら、これを守ることは各国の義務だよ。
 俺たちはここにかかげたことを、本気で目指すと誓う。誰に?
 俺たちの名誉と世界に!」

 次に、自民党「日本国憲法改正草案」の前文を引くことにする。

 「日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
 我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。
 日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権を尊重するとともに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する。
我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる。
 日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲法を制定する。」

 さて、読者諸氏よ、現行憲法前文と塚田薫口語訳を熟読吟味して、自民党「日本国憲法改正草案」前文の採点はいかがかな。一読しただけでお気づきでしょう。自民党「日本国憲法改正草案」からは、現行憲法の平和的生存権も消えた、憲法制定の目的が伝統や国家の継承になっており、「和を尊ぶ」「家族を助け合う」「天皇を戴く」などと、憲法に盛り込む必要のない、余計な御節介がテンコ盛りだ。そのうえ、過去の戦争への深い反省も不戦の誓いもない。権力制限規範としての立憲主義の匂いすら感じられない。「国民が主人公」の憲法から「国家が主人公」の憲法への変更である。私の採点では、現行憲法前文を全面的に書き替えた自民党「日本国憲法改正草案」前文は、0点だ。

 

(2013年9月9日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


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