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第102回(8月26日):照屋寛徳 議員

山本庸幸最高裁判事の異例発言の波紋

【写真】8月21日の各紙朝刊

8月21日の各紙朝刊

 2013年8月12日、安倍総理によて内閣法制局長官を退任させられた山本庸幸氏が、同年8月20日最高裁判所判事に任命され、就任した。

 安倍総理が、憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認に慎重で、かつ、懐疑的な山本氏を退任させ、後任に法制局勤務経験のない、外務省出身で前駐仏大使の小松一郎氏を法制局長官に任命したこと自体が極めて異例である。いや、憲法解釈の変更により、集団的自衛権行使容認を実現したい、済し崩し9条改憲を実現したい、との安倍総理の執念だ。

  ところで、内閣法制局は「法の番人」とか「政府の憲法解釈の番人」などと称されるが、最高裁判所は「憲法の番人」である。

  日本国憲法第81条は、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である」と謳っている。日本国憲法第81条は、「違憲立法審査権」を明定したものとして語られることが多い。「違憲立法審査権」とは、「裁判所が法律、政令、条例などが憲法に違反していないかを審査し、違反している場合はそれを無効とする権限のことである。この権限はすべての裁判所が持っているが、最終的な権限は最高裁判所が有している」との定めである、と解釈すべきだ。

  さて、山本庸幸氏が任命された最高裁判所判事は、15人いる。日本国憲法第79条は「最高裁判所は、その長たる裁判官及び法律の定める員数のその他の裁判官でこれを構成し、その長たる裁判官以外の裁判官は、内閣でこれを任命する」と謳っている。現在の最高裁判事の陣容は、職業裁判官出身6人、弁護士出身4人、検察官、行政官出身各2人、学者出身1人の計15人で構成されている。最高裁判所判事は、多様な意見反映の精神から、法曹有資格者に限らない、多様な人材を登用している。

  その、山本最高裁判所判事の就任記者会見での発言が波紋を呼び、物議を醸している。

  8月21日付の朝刊各紙の記事を総合すると、山本氏は記者会見で概ね次のように発言している。

  「集団的自衛権の行使は、従来の憲法解釈では容認は難しい。実現するには憲法改正が適切だろうが、それは国民と国会の判断だ」――と。

  私は、山本最高裁判所判事の記者会見詳細を、8月20日付の朝日新聞デジタル版で読んだ。

  その結果、山本氏は、集団的自衛権というのは、「我が国が攻撃されていないのに、同盟国が攻撃されてそれを一緒に戦おうということ。それが完全にOKとなるなら、地球の裏側まで行って共に同盟国と戦うということになる。」

  「私自身は完全な地球の裏側まで行くような集団的自衛権を実現するためには、憲法改正をした方が適切だろう、それしかないだろうと思っている」などと発言している事が判った。

  山本氏の記者会見発言に対し、「(最高裁判事が)判決以外で政治的課題の憲法解釈に言及するのは極めて異例だ」として批判的なマスコミ論調もある。

  だが、私はそうは思わない。山本氏は、憲法9条の明文改憲を勧めているわけではない。むしろ発言全体を子細に読み込むと、発言内容は、歴代政権の集団的自衛権についての憲法解釈とも合致する。

  山本氏の記者会見発言に関し、8月21日菅義偉官房長官は、「最高裁判事は合憲性の判断を行う人だ。公の場で憲法改正の必要性まで言及することは極めて違和感を感じる」と批判している。安倍内閣にとって、山本氏の発言は、政治権力を公然と批判したものと受け止めたのかも知れない。一方で、内閣のスポークスマンである官房長官が最高裁判事の発言を批判することも極めて「異例」であり、強い違和感を覚える。

  ことの発端と責任は、内閣法制局長官を集団的自衛権行使容認派の人物に強引に変更する「ナチスの手口」(麻生副総理発言)で憲法9条改憲を図った安倍総理にある、と考える。真の悪者は誰だ!

 

(2013年8月26日 社民党衆議院議員 照屋寛徳)


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