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特集

雨宮処凛の“かりん”と直言

反撃は続く

 昨年から続けてきたこの連載も、今回で最終回だ。

 連載が始まったころは、まだ安倍政権だった。「ワーキングプアの逆襲」とでも言うべき若者たちの反撃が始まったころで、日雇い派遣大手のグッドウィルに対して、1度働くごとに天引きされていた「データ装備費」の返還をめぐって集団訴訟が起こされたころでもある。

 それ以降、「日雇い派遣」や「派遣法」をめぐる状況は大きく変わってきた。不安定で低賃金な働き方、また違法派遣や労災隠しなどが社会的なバッシングを受け、グッドウィルは事業停止を食らい、そして5月、日本人材派遣協会は製造業などの日雇い派遣を原則自粛する自主ルールを発表した。6月にはグッドウィルの元支店長が職業安定法違反で逮捕されるという事件も起きた。

 不安定で明日の見通しさえ立たない働き方に対して、多くの人が何とかしようと運動を繰り広げ、厚生労働省などに働きかけてきた。なかなか事態が好転しない中、今月、舛添厚生労働相は日雇い派遣を原則禁止する方針を示した。秋葉原の事件を受けて、流れが一気に変わったのだ。

 合法的で地道な運動の積み重ねよりも、無差別殺人が日雇い派遣禁止に力を持ったのだとしたら、何という皮肉だろう。あの事件によって派遣法が見直されるということは、秋葉原の犯人が、現在苦しい立場にいる人々に「英雄」視されることにもなりかねない。合法的な労働/生存運動と、7人の命を奪った残虐な事件という落差の前で、私はしばし、徒労感にも似た思いに包まれる。

 連載を通して、リアルタイムな運動を伝えてきた。そして最終回の今回がこのような形になるのはどこか後味の悪い思いもする。しかし、あの事件の背景にしっかりと目を向け、二度と悲しい「暴発」が起こらないように努めることが課題だろう。奇しくも「派遣」という働き方が大きな関心を集めている。また事件を受けて、犯人と「同じ気持ち」だという若者たちがネットに殺人予告を書き込んでもいる。2人目の加害者を、そしてこれ以上の犠牲者を出さないためにも、私たちは、「普通に生きられる」社会をつくらなければいけないと、切実に感じている。

 そんな中、希望もたくさんある。「若者の労働運動」と言われる動きが、若者や非正規雇用の人々だけでなく、障害者や野宿者、母子家庭の人々や高齢者など、さまざまな「社会的排除」を受ける人々の運動とつながりだしていること。名ばかり管理職など、正社員層とも問題意識を共にしていること。

 7月のG8洞爺湖サミットで、世界中のさまざまな活動をしている人たちと出会うことも楽しみだ。グローバリゼーションの元に進められる不安定化の流れの中で、私は世界中の人々とつながって、反撃していきたい。いつか、そんな反撃の中で出会えることを楽しみにしつつ。

(社民党広報委員会より)
この文章は洞爺湖サミットの前に書いていただいたものです。
今回で最終回の雨宮さんのコラム。雨宮さん、これまで連載していただき、ありがとうございました。
社民党も「ワーキングプアの逆襲」のために、がんばってまいります。

近日、新たな連載が始まります。読者の皆さま、ぜひ楽しみにしていてください。

プロフィール

雨宮処凛(あまみや・かりん)

雨宮処凛1975年、北海道生まれ。ゴスロリ作家。元パンク歌手&元政治活動家。アトピーが原因で受けたイジメを発端に、不登校、家出、リストカット、自殺未遂などを繰り返す。その壮絶な半生を描いた『生き地獄天国(太田出版)は大きな反響を呼ぶ。最近は、若者の雇用問題などにも積極的に取り組んでいる。
【雨宮処凛公式ホームページ】http://www3.tokai.or.jp/amamiya/


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