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特集

雨宮処凛の“かりん”と直言

死ななくてよかった

 5月18日、1ヵ月近くにわたって行なわれたインディーズ系メーデー「ゴールデン・メーデー・ウイーク」のファイナルが、大阪・長居公園で行なわれ、私も駆けつけた。そこで私たちは「P8」(貧困者末端会議)を名乗り、G8に対抗して「P8宣言」(大輪祭り版)を読み上げた。「金がない」「それでも私たちは繋(つな)がり始めた」「私たちこそが世界の中心なのだ」、その3つを、G8に対抗して貧乏人側から訴えたのだ。宣言の最後はこう締めくくられる。

 「もう少し生きるぞ! 何とかするぞ! 何とかならなくても、とりあえず生きるぞ!」

 宣言文には、これまでの私たちプレカリアートのつらかった日々のこともつづられた。怒鳴られ、誤解され、何も言い返すことができずに黙り込んできた日々。だけど今年、私たちはインディーズ系メーデーでつながり始めたのだ。そして何とかしていこうと一緒に解決していく仲間たちに出会えたのだ。

 競争社会の中、特に若年層は、小さなころから人をけ落とすことばかり教え込まれ、周りみんなが敵、ライバルと擦り込まれてきた。そんな中、学校でも、社会に出てからもそこで出会う誰かと「最悪の出会い方」ばかりしてきた。個人個人に分断され、競争させられる中ではそれは当たり前の作法・身の守り方で、「連帯」だとか誰かとつながるだとか、あるいは「自分の弱みを誰かに見せる」「困ったときに相談する」「悩みを話す」なんてことは致命的なことだと思い込んできた。

 でも、声を上げたら自分たちのような人はたくさんいた。札幌、福岡、岐阜、東京、そして大阪のメーデーを勝手に1人で全国ツアーして、本当にそのことをひしひしと感じた。みんな悩んでいて、だけど誰にも言えなくて、競争の中で疲れ果てていて、時には身近な人を過労死や自殺という形で亡くしていて、「何かおかしい」と思っても自分が悪いんだと自分を責め、だけどやっと、同志を見つけたのだ。

 だから今、私はすごくうれしい。こんなに手応えをつかんだことは初めてだからだ。自殺を考えていた若い女の子たちがメーデーに参加し、「今までで一番楽しかった」と笑顔を見せた。「自殺しなくてよかった」という声をたくさん聞いた。考えれば私自身も10年前は立派なフリーターで、毎日死ぬことばかり考えていた。今、本当にあの時、死ななくてよかった、と思う。

 そして同時に思うのは、その間に亡くしてきた、周りの友人たちのことだ。自分を責めて死ぬことなんか、全然なかったのに、と。

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『雨宮処凛の闘争ダイアリー』(雨宮処凛、集英社)
フリーター全般労組
自由と生存のメーデー

社民党・労働者派遣法改正案骨子
社民党の労働政策:人間らしい労働

プロフィール

雨宮処凛(あまみや・かりん)

雨宮処凛1975年、北海道生まれ。ゴスロリ作家。元パンク歌手&元政治活動家。アトピーが原因で受けたイジメを発端に、不登校、家出、リストカット、自殺未遂などを繰り返す。その壮絶な半生を描いた『生き地獄天国(太田出版)は大きな反響を呼ぶ。最近は、若者の雇用問題などにも積極的に取り組んでいる。
【雨宮処凛公式ホームページ】http://www3.tokai.or.jp/amamiya/


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