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特集

雨宮処凛の“かりん”と直言

貧困と愛国

 佐高信さんとの対談集、「貧困と愛国」が近々発売される。

 タイトルどおり、「貧困」と、そしてこの国に広がるいびつな「愛国」について語り合った本だ。

 「31歳フリーター、希望は、戦争」という論文から始まった「貧者は戦争を望むか」という問題から、私自身が右翼団体に所属していたフリーター時代、そして「戦場」だった学校、バブル崩壊後のこの国の変容、それから10年以上たって始まった「生きさせろ!」という生存運動などなどについて、佐高さんと語り合った。

 対談を終えて、さまざまなことに気づかされた。そんな私の「気づき」を後書きから引用しよう。

 「対談を通して、自分自身が『貧困』で『愛国』だった頃のことを次から次へと思い出した。(中略)当時の私は、たかが『経済の停滞』とか『不況』とかですべての価値観が覆ってしまったことがどうしても許せなかったのだと思う。そんな時、経済状況なんかではひっくり返らないものがどうしても欲しかった。日経平均がいくらであろうとも、銀行がいくら破綻(はたん)しようとも、絶対的に『変わらない』何か。それが当時の私にとっては『天皇』だったのではないかと、今、この対談を読み直して、改めて気づかされた」

 小・中・高校と、「頑張れば報われる」「努力すればした分だけ幸せになれる」という価値観のもと、不毛な受験戦争を戦わされてきたわけだが、自分が社会に出ると同時にバブル崩壊。今まで教えられてきたことのすべてが一瞬にして「大嘘(うそ)」になったと感じた私がその後右翼団体に入ったことは、決して偶然ではないと思うのだ。それまで生きてきた20年くらいにわたって教えられてきた「常識」が目の前で崩壊した大リストラ前夜。バイトの時給もどんどん下がり、本気で生きられない時代に突入したことを、私は肌身にしみて感じていた。そこに現れた「絶対に変わらないもの」。バブル崩壊後の焼け野原の中、そして私は「愛国」にすがった。

 あれから10年。そうして「崩壊」したさまざまなものは、いまだに崩れたままで、私たちの世代にとっては「生き方」そのもののモデルも失われたままだ。どうすれば幸せに、あるいは安心して、あるいは最低限食いっぱぐれずに生きていけるのか。そんなことまで分からなくなった地平で、多くの若者が「愛国」を経由する。しかし、そのことは決して、無駄にはならないと思うのだ。

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『貧困と愛国』(佐高信・雨宮処凛、毎日新聞)

プロフィール

雨宮処凛(あまみや・かりん)

雨宮処凛1975年、北海道生まれ。ゴスロリ作家。元パンク歌手&元政治活動家。アトピーが原因で受けたイジメを発端に、不登校、家出、リストカット、自殺未遂などを繰り返す。その壮絶な半生を描いた『生き地獄天国(太田出版)は大きな反響を呼ぶ。最近は、若者の雇用問題などにも積極的に取り組んでいる。
【雨宮処凛公式ホームページ】http://www3.tokai.or.jp/amamiya/


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