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特集

雨宮処凛の“かりん”と直言

過労のシングルマザー

 この間、ある番組の収録で、30代のシングルマザーの人の話を聞いた。子どもは小学生が2人。生活のために働くものの月の収入は7万ほど。どうにも生活が立ちいかなくなり、現在は生活保護を受けているという方だ。その女性は本当にギリギリのところまで頑張り、相当の「覚悟」を決めて生活保護を受けたという。彼女は税金で暮らしていることに「申し訳なさ」があると語り、「働きたい」と訴えた。

 話を聞きながら、切なくなった。日本のシングルマザーの就業率は、世界でも突出して高い。その理由は、「働かないと生きていけない」から、子育てを支援するようなシステムがあまりにも貧弱だからだ。しかし、なかなか正社員としても雇ってもらえない。「子どもが熱を出したら休む」などという理由で敬遠されるからだ。そうするとパートなどで働くことになる。その結果、どうしても不安定さと貧困に常につきまとわれる。最低賃金程度でいくら働いても、自分と子どもを養うのは難しい。だからこそ、ダブルワーク、トリプルワークに陥っていく。1日に2つも3つも仕事を掛け持ちして、朝から深夜まで働く。あるシングルマザーの女性に会ったとき、彼女の友人のシングルマザーの話をしてくれた。彼女によると、友人の女性は、夜、仕事に出かける前、子どもに睡眠薬を飲ませてから出かけるそうだ。その理由は、子どもが夜中に目を覚まし、「お母さんがいない」とパニックになってしまうのを避けるため。彼女は言った。

 「世の中の人は、なんてひどい母親だ、と思うかもしれませんが、それを聞いて私は、なんてひどい社会なんだ、と思いました」

 シングルマザーが朝も昼も夜も、子どもに睡眠薬を飲ませてまで働かなければいけない社会。少子化などが話題になるたびに「子どもを産め」という大合唱が始まるものの、いざ産むと、「あとは自己責任」とばかりに突き放される。何の手助けもない。

 日本ほど「子どもを産みづらく、育てづらい国」はないのではないだろうか。

 そもそも、2つも3つも仕事を掛け持ちした上1人で子育てもこなすか、そうできなければ生活保護、という二者択一しかないことがおかしい。なぜ、「子育て支援」のような形で誰でも簡単に、後ろめたさなど感じずに利用できる制度がないのだろうか。シングルマザーに限らず、そういうものがあれば、ワーキングプアな夫婦だって安心だ。普通に子育てができる環境があれば、どれほど子どもへの虐待だって減るだろう。モラルなどの問題ではなく、子どもへの虐待の原因ナンバーワンは、常に経済的な問題だ。

(2008年2月27日 社会新報 「文化人コラム」より)

プロフィール

雨宮処凛(あまみや・かりん)

雨宮処凛1975年、北海道生まれ。ゴスロリ作家。元パンク歌手&元政治活動家。アトピーが原因で受けたイジメを発端に、不登校、家出、リストカット、自殺未遂などを繰り返す。その壮絶な半生を描いた『生き地獄天国(太田出版)は大きな反響を呼ぶ。最近は、若者の雇用問題などにも積極的に取り組んでいる。
【雨宮処凛公式ホームページ】http://www3.tokai.or.jp/amamiya/


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