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特集

雨宮処凛の“かりん”と直言

素朴な疑問

 中国のギョーザの問題がマスコミを騒がせている。一部報道では、「労使トラブル」なども話題となっている。突然の解雇や、12時間の長時間労働。低い賃金。

 これは中国の工場だけの問題ではなく、今、この国で誰もが直面していることではないだろうか。多くの人が劣悪な環境で低賃金で働き、そしてそのことによって多くの「激安」が成立している。みんなが1円でも安いものを求めることそのものが、誰かを追い詰めている。しかし、1円単位の安さを追い求めてしまうのもまた、低賃金で働く人々だ。

 これを私は「貧乏スパイラル」と勝手に呼んでいる。結局、金持ちにとっては痛くもかゆくもないのだ。

 食の安全がうたわれても、例えば国産の無農薬野菜は高い。ロハスはお金がかかる。栄養バランスなどと言われても、貧困層はファストフードや牛丼屋でしか食事できない。そして安くて便利な外食産業では、正社員層の店長は時間外労働に忙殺されて過労死におびえ、現場を回しているバイトは低賃金で使い捨てられている。カロリーオフを強調する商品もあふれているが、同じ値段だったら「カロリーが高い方がいい」と、必死でカロリーが高いものを選ぶ貧困層は私の周りに多い。100円ショップの安さは中国などでものすごい低賃金で働く人々によって成立しているが、それを手にとって「安い」と無邪気に喜んでしまうのも貧困層だ。

 安い賃金で働く人の作ったものを、同じく安い賃金で働く人が消費する。そしてお互いを追い詰め合っていく。金持ちは最初からその中にいない。ただ、上前をハネるだけだ。そしてその上前をハネたお金で、安全で安心な食べ物を食べ、健康的な生活を送れるのも金持ちだけという悪循環。

 よく、労働についての劣悪な状況についてを話すと、聞かれることがある。例えば家電量販店などの労働状況はひどいが、そこで1円単位の値引きをしてしまう自分がいけないのだろうか、という疑問だ。しかし、値引きしてしまうのには、自分だってお金がないという理由がある。誰もが誰かの加害者で、そして被害者という図式。得をしているのは一部の特権的な立場にいる人だけで、何となく日々、みんなが擦り切れていく。どこに解決方法があるのか分からない。

 考えすぎると、「資本主義」という、あまりにも巨大で暴走を続けるシステムに、押しつぶされそうになる。頭のいい人はたくさんいるはずなのに、なぜ、こんな理不尽がまかり通っているのだろうか。素朴な疑問だ。

(2008年2月13日 社会新報 「文化人コラム」より)

プロフィール

雨宮処凛(あまみや・かりん)

雨宮処凛1975年、北海道生まれ。ゴスロリ作家。元パンク歌手&元政治活動家。アトピーが原因で受けたイジメを発端に、不登校、家出、リストカット、自殺未遂などを繰り返す。その壮絶な半生を描いた『生き地獄天国(太田出版)は大きな反響を呼ぶ。最近は、若者の雇用問題などにも積極的に取り組んでいる。
【雨宮処凛公式ホームページ】http://www3.tokai.or.jp/amamiya/


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