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特集

雨宮処凛の“かりん”と直言

ニート・ひきこもりは革命家か

 現代の若者の状況について講演などで話すと、必ず聞かれることがある。それは「正社員でも過労死寸前、フリーターなど非正規だとホームレスが近いということは分かったが、では、どうすればいいのか」ということだ。

 この質問を受けるたびに、いつも考え込んでしまう。私自身、それについて明確な答えを持っていないからだ。例えば正社員が長時間労働に忙殺されていても、それを訴えてやめさせるには多大な時間と労力がかかる。非正規雇用の場合、不安定な生活から抜け出すことがそもそも難しい。「頑張れば報われる」時代が終わったことは多くの人が知っている。現在、非正規雇用で低賃金で「頑張って」働いている人は、頑張れば頑張るほど時給が下がり、労働条件が劣悪になる、という負のスパイラルの中にいる。中国の人件費などとの競争に常にさらされるグローバリゼーションの中では、頑張るほどに状況はひどくなる。

 闘え、と口でいうのは簡単だが、じゃあその間どうやって食べていくのか。「働かない」というストライキをするにしても、餓死が迫ってくるような状況だ。

 しかし、すでにそんな「闘い」を始めている人たちがいる。それも、かなり前から。それが「ニート」であり、「ひきこもり」ではないかと思うのだ。彼らは「こんな状況ではとてもじゃないけど働けない」という身体的な反発から、「労働を拒否」している気さえしてくる。

 ひきこもりは100万人、ニートは85万人と言われている。これだけの若者が、現代の「非人間的な労働」を拒否していることは、実は非常に「正しい」ことではないのか。90年代前半にバブルが崩壊し、就職氷河期が始まり、若者が貧困化・不安定化してから10年以上たつが、当時、「貧しく不安定な若者を何とかしよう」という声はどこからも上がらなかった。不況の中、みんな自分のことに精いっぱいで、リストラされる中高年には同情的でも、若者の苦境は「好きでフリーターやってんだろ」と「なかったこと」にされてきた。それがやっと注目されだしたのは、彼らが自宅にこもり、「ひきこもり」「ニート」という名を与えられてからのことだ。支援団体が結成され、彼らは「救済」の対象になった。しかし、いまだにニートやひきこもりの問題は「心の問題」とされ、「労働の問題」の側面からとらえられることは少ない。

 もしかしたら、ひきこもりは「労働を拒否」した「立てこもり」であり、ニートは大々的な「ストライキ」をしているのかもしれない。そんな若者たちが、この国に185万人もいるということは、意外と「まっとう」なことだとも思うのだ。

(2008年1月23日 社会新報 「文化人コラム」より)

プロフィール

雨宮処凛(あまみや・かりん)

雨宮処凛1975年、北海道生まれ。ゴスロリ作家。元パンク歌手&元政治活動家。アトピーが原因で受けたイジメを発端に、不登校、家出、リストカット、自殺未遂などを繰り返す。その壮絶な半生を描いた『生き地獄天国(太田出版)は大きな反響を呼ぶ。最近は、若者の雇用問題などにも積極的に取り組んでいる。
【雨宮処凛公式ホームページ】http://www3.tokai.or.jp/amamiya/


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