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特集

雨宮処凛の“かりん”と直言

空気をあえて読まないぞ

 新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。

 と一応型通りのあいさつをしたところで、今年の目標などを語りたい。今年は何といっても、昨年怒とうの反撃を繰り広げてきた「ワーキングプアの逆襲」が実を結ぶのではないかと期待している。動きとしてはまだまだ小さいのかもしれない。だけど去年、私たちは「自分たちが声を上げれば変えることができる」ことを、実感として知った。そして去年の年末、日雇い派遣最大手のグッドウィルの事業停止も報道された。

 去年はさまざまなジャンルの人たちが大同団結した1年だった。労働、福祉、多重債務問題のエキスパートたちがそろった「反貧困ネットワーク」が結成され、若者たちの助け合いネットワークである「反貧困たすけあいネットワーク」も立ち上げられた(私は顧問)。フリーターなど非正規の若者でも入れるインディーズ系労組も連携し、それぞれの場で具体的な成果を勝ち取った。

 07年、突然のように始まった若者たちの「労働/生存運動」は、最悪の場合、嘲笑(ちょうしょう)された揚げ句バッシングされ、無視される可能性もあった。だけど、私たちの声は意外と届くところには届いた。若者を平気で見捨てるようなこんな国は最悪だと思っていたけれど、運動をする中で、この国に生きる人々に対して信頼を取り戻したのも事実だ。意外と味方はいるし、意外と話せば分かってくれる、という手応え。それを08年の運動にどうつなげていくかが大きな課題だ。最大のテーマはやはり派遣法だろう。

 最近、フランスのジャーナリストと話して、あらためて日本の労働環境の悪さにがくぜんとした。彼らはなぜ、日本で過労死が起こるのか、なぜ、サービス残業などという形でタダ働きさせられた上に怒らないのか、まったく理解できないと言うのだ。「どうして日本人はお金ももらえないのに夜遅くまで働くのか」。この素朴すぎる疑問に対して、明確な答えを持っている日本人はたぶん、いないだろう。

 「労働時間を短くしろと要求したり、給料を上げろと言ったり、みんなが残業しているのに1人だけ早く帰る人のことを、日本では何というのか?」と聞かれたので、しばし考えた後、答えた。「空気の読めない人、といわれる」。彼らはやはり理解できないと首を振った。

 ということで、今年、働く人々に期待したいのは、「空気を読まずにさっさと帰ろう」ということだ。これだったら、明日からにでもすぐにできる。

(2008年1月16日 社会新報 「文化人コラム」より)

プロフィール

雨宮処凛(あまみや・かりん)

雨宮処凛1975年、北海道生まれ。ゴスロリ作家。元パンク歌手&元政治活動家。アトピーが原因で受けたイジメを発端に、不登校、家出、リストカット、自殺未遂などを繰り返す。その壮絶な半生を描いた『生き地獄天国(太田出版)は大きな反響を呼ぶ。最近は、若者の雇用問題などにも積極的に取り組んでいる。
【雨宮処凛公式ホームページ】http://www3.tokai.or.jp/amamiya/


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