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特集

雨宮処凛の“かりん”と直言

いじめ被害者、その後

 先日、「いじめは深刻な問題」というイベントに出演してきた。主催者は、小学校から高校まで、壮絶ないじめの犠牲となってきた経験を持つ20代後半の男性。ゲストに10数年前にいじめ自殺した大河内清輝君のお父さん、いじめ自殺裁判を受け持つ高見沢弁護士、そして内藤朝雄さんと、私。

 昨年、いじめ自殺が相次ぎ、マスコミ報道は一斉に過熱した。しかし、今はどうか。すでにそれは「過去」のものとなってしまった感がある。しかし、こうして元当事者たちが取り組みを続けているのだ。

 前半、主催者男性より、12年間にわたって続けられたあまりにも悲惨ないじめの実態が語られた。耳をふさぎたくなるほどのそのいじめは、「いじめ」などというひらがな3文字ではとても済まされないものだ。強姦(ごうかん)、強盗、執拗(しつよう)な暴力と、性的な暴力。そうして彼を今でも苦しめる後遺症の数々。しかし、主催者男性をいじめた加害者側は今、結婚して子どもをもうけて幸せに暮らしているという事実。

 いじめについて語られるときに、「どうやっていじめを予防するか」ということが必ず話題となる。しかし、彼は言った。「いじめでズタズタにされた自分のような人間はどうやって生きていけばいいのか」。そのとおり、彼はいじめから解放された今も「人間に対する猛烈な憎しみ」の中にいる。夢は「人間すべてを殺しまくってその後にゆっくり自殺をすること」

 イベント後半、話題は「復讐(ふくしゅう)」へと波及した。私自身もいじめを受けていたから、「復讐」の念に嫌になるほどとらわれていた時期がある。復讐しないと自分が一歩も前へ進めないという強烈な思い。そして、いじめ被害者の中には、長期的な復讐を計画している者がいることも知っている。私の年代になると、すでに加害者側は結婚して子どもを持っていることも多い。復讐の標的は、子どもだ。

 イベントには、加害経験のある者も参加して発言した。「社会のあらゆる場所でいじめが平然と行なわれている。会社の中でも、家族間でも。自分は母親に八つ当たりされていたからいじめをした。それは仕方ないと思っている」。そう言った男性に、主催者男性は言った。「ということは、あなたの家族や大切な人が、今後どういう目に遭ってもいいということですね?」

 あなたは誰かをいじめた経験があるだろうか。あるとしたら、そのいじめから何十年もたったある日、突然「大切な何か」を失うかもしれない。衝撃的なことを書いてしまったが、いじめは時に、人の人生そのものを狂わせ、そして失わせる。

(2007年10月24日 社会新報 「文化人コラム」より)

プロフィール

雨宮処凛(あまみや・かりん)

雨宮処凛1975年、北海道生まれ。ゴスロリ作家。元パンク歌手&元政治活動家。アトピーが原因で受けたイジメを発端に、不登校、家出、リストカット、自殺未遂などを繰り返す。その壮絶な半生を描いた『生き地獄天国(太田出版)は大きな反響を呼ぶ。最近は、若者の雇用問題などにも積極的に取り組んでいる。
【雨宮処凛公式ホームページ】http://www3.tokai.or.jp/amamiya/


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